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書籍詳細

外科医のための感染症のみかた,考えかた ver. 2 大切なのはソースコントロール!

外科医のための感染症のみかた,考えかた ver. 2 大切なのはソースコントロール!

岩田健太郎 著

A5判 240頁

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

ISBN978-4-498-05045-7

2026年04月発行

在庫あり


ソースコントロールこそ外科医の真骨頂!

オペに専念したい外科医を悩ませる感染症.その真の解決策は抗菌薬だけではなく,適切なソースコントロールにあります.好評を博した前著を最新のガイドラインに基づき大幅改訂.術後発熱のワークアップから,広域抗菌薬に頼りすぎない適正使用の勘所まで,感染症のプロが鋭く,かつ丁寧に解説します.巻末には窪田忠夫先生との10年ぶりの再対談も収録.外科医が現場で迷わないためのアップデート版,必携の書です.


ver. 2

 早いもので,『目からウロコ! 外科医のための感染症のみかた,考えかた』が出てから10年が経ちました.本書も仕立て直しの時期だと考え,ここにver. 2を出そうと思います.
 2004年.私は北京にある外国人向けクリニックで家庭医をやっていました.で,なんやかんやあって千葉県の亀田総合病院に異動します.で,さらになんやかんやあって2008年に神戸大学の教授に就任しました.36歳のときです.
当時,日本の臨床感染症業界は文字通り「型なし」の状態でした.これ言うと,いろんな方面の偉い人に怒られると思うんだけど,事実なんだから仕方がありません.
 「型なし」,型がないとはどういうことかというと,外科医でたとえるならば,メスの持ち方が刺身包丁の持ち方みたいだったり,滅菌手袋の着用法がめちゃくちゃだったり,縫合時の糸結びが蝶々結びだったり,みたいな感じでしょうか.
 そこにはテクノロジーや物資はあるのですが,その使い方は完全に「我流」で,プリンシプルもサイエンスもありません.病歴の取り方,診察の仕方,検査の使用法,診断の理路,そして治療薬の使い方もいい加減で出たとこまかせで,患者が治るかどうかも「いちかバチか」なところがありました.
 なにしろ,適切な培養検査すらしていなかったので,何と戦っているかすらわからない状態で戦っている.マシンガンを乱射して,偶然敵に当たってればラッキー,外れたらアンラッキー,なんなら味方に当たって自身に不利益な状況すら作っていました.まじで.
 だから,私が神戸大学病院で感染症内科を作り,診療科長になって医局員を集め,病院感染症診療の支援を始めたときの気分は全然「教授」ではありませんでした.むしろ小学校の先生,あるいは幼稚園の先生の気持ちでした.まずは「型」を獲得する.挨拶ができるようになったり,こぼさずに箸やスプーンでご飯を食べられるようにする.大学チックな高度医療や研究は先の先の話だったのです.
 前著『目からウロコ! 外科医のための感染症のみかた,考えかた』は当時のそうしたエートスが反映されています.
 書いてあることには,ひとつも「目からウロコ」な内容は入っていません.みんな,「いろは」といってよい基本的な内容ばかりです.が,日本の感染症界が「型なし」だったために,「血液培養2セットを抗菌薬投与前に取りましょう」みたいなことを大学の講演会などで口にすれば,「イワタセンセイは奇抜なご意見をお持ちですね」なんて間の抜けたコメントを高齢の座長(どっかの名誉教授とか)からいただいていたのです.落語の「一眼国」のようなものでして,とにかく私はずっとずっと「型」の話ばかりしてきました.
 2025年の現在はそうではありません.グローバル化や情報開示,ある種の医療の「民主化」が起きて,大学の医局による医療の「タコツボ化」は消えました.閉じたタコツボの中で,専門外の感染症診療がやっつけ仕事でなされることは減りました.大学病院での感染症診療の質は劇的に向上しました.多くの自治体には感染症のプロがいて,地域の診療を支援しています.かつて私は「感染症のプロになれば,今ならもれなく日本で五本の指に入れますよ」を必殺のジョークにしていました.実に隔世の感があります.
 餅は餅屋というわけで,化学療法は化学療法のプロが,手術は手術のプロが分担するようになりました.もしかしたら,海外のように「術後の管理は術後管理の専門家」が担当するようになり,執刀医は手術が終わればすぐに帰宅できるような社会が早晩やってくるかもしれません.「働き方改革」とはそういうものなのかもしれません.まあ,いろいろなご意見はあるとは思いますが.
 分業化には長所と欠点がありますが,明らかな長所は「専門性の担保」です.現在のように専門知識の進歩のスピードが劇的に向上している現在,すべての領域の知識や技術のアップデートを完全に遂行するのは難事です.私自身,若い頃に憧れた「なんでもできる医者」は幻想になりつつあります.
一方で,矛盾したことを申し上げるようですが,個々人による知識のアップデートは非常に容易になりました.UpToDateを使えば多くの診療における最新のエビデンスのまとめがなされています.昔は読むのに苦労したNEJMやランセットの論文は,Google Chromeで瞬時に日本語に翻訳し,生成AIに要約してもらえます.かつてのように,どこかの師匠について何年も修行をしたり,海外に武者修行に行ったり,あるいはあちこちの学会に参加して発表を聞きまくったりしなくても,世界で起きている最新の知識を得ることが可能です.少なくとも,ある種の知識のレイヤーにおいてはそうです.
そんなわけで,激変した日本の診療現場において,外科医のための感染症のテキストはどうあるべきか.これは結構悩みました.その悩みの結晶が本書だと思っていただければ幸いです.
 専門外である感染症領域のどこが必須項目で,どこから先が「専門家にお任せ」なのか.アウトソーシングの境界線を2025年に合わせた形で作ってみようと思いました.うまくいってるといいのですが.

2025年の猛暑のある日に
岩田健太郎

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目次  
  
I 感染症診療大原則 

1 術後感染症診断は意外に簡単 診断の大原則  
2 術後感染症予防の大原則 術中抗菌薬とSSI予防  
3 これだけは知っておこう 細菌検査,感受性試験の解釈法  
4 抗菌薬使用の大原則 基礎編 その1:βラクタム薬  
5 抗菌薬使用の大原則 基礎編 その2:その他の抗菌薬たち  
6 抗菌薬使用の大原則 臨床編  
7 創部感染 (深部SSI含む) の診断と治療  
8 カテ感染 (CRBSI) の診断と治療  
9 術後院内肺炎 (HAP/VAP) の診断と治療  
10 術後院内尿路感染の診断と治療  
11 術後下痢症の診断と治療  
12 予防接種も忘れずに  
Column 1 己の没落のために
Column 2 日本医療のサステナビリティと,ローバリュー医療
  
II 各論編 

A.整形外科医のための感染症診療  
1 化膿性関節炎・滑液包炎,腱滑膜炎  
2 急性・慢性骨髄炎,椎間板炎,硬膜外膿瘍,糖尿病足感染  
3 壊死性筋膜炎とガス壊疽  
4 人工関節関節炎  
Column 3 「エビデンスないんでしょ」「いや,エビデンスは常にある」
  
B.泌尿器科医のための感染症診療  
1 前立腺炎とその周辺  
2 ‌ フルニエ壊疽,黄色肉芽腫性腎盂腎炎,気腫性腎盂腎炎, 気腫性膀胱炎  
3 腎移植と感染症  
4 男性性感染症  
Column 4 サーベイランスはなぜ必要か〔とICN (CNIC), ICDの話〕
  
C.心臓血管外科医のための感染症診療  
1 感染性心内膜炎  
2 胸骨骨髄炎  
3 血管の感染症  
4 ICD, ペースメーカー感染  
Column 5 CRPはどこまで役に立つか
  
D.耳鼻科医のための感染症診療  
1 耳鼻科術後の感染症診療  
2 中耳炎,副鼻腔炎の抗菌薬使用  
3 意外に難しい咳と鼻水  
4 耳鼻科緊急事態  
Column 6 感染症専門医について
  
E.歯科・口腔外科医のための感染症診療  
1 予防的抗菌薬は誰に,何のために? 何を?  
Column 7 経口3世代セフェムはなぜいけないのか
  
F.産婦人科医のための感染症診療  
1 産婦人科,術後感染症大原則  
2 妊婦と抗菌薬,そして感染症  
  
G.肝胆膵外科医のための感染症診療  
1 急性胆管炎と胆囊炎  
2 肝移植後の感染症  
Column 8 終末期医療と感染症について
  
H.呼吸器外科医のための感染症診療  
1 呼吸器外科関連のピットフォール  
Column 9 画像品評会にしてはならない,結核審査協議会
  
I.脳神経外科医のための感染症診療  
1 術後髄膜炎診断治療の大原則  
2 脳膿瘍,脳占拠性病変の診断・治療の大原則  
Column 10 できる,できないの狭間で
  
J.皮膚科医のための感染症診療  
1 皮膚軟部組織感染症診療の基本  
Column 11 AWaReを活用しよう 
Column 12 感染症屋は皮膚科医が頼り 
  
K.救急医のための感染症診療  
1 熱傷,外傷患者の感染症予防と治療  
Column 13 日本型救急と北米型ER その感染症診療への影響 
Column 14 災害医療と感染症 
  
L.眼科医のための感染症診療  
1 結膜炎,角膜炎診療の原則  
2 予防的抗菌薬は役に立つか  
Column 15 白内障手術前の梅毒やHIV検査はやめてほしい 
Column 16 できているという自信,できていないという自覚 
  
対談 外科と感染症科のはざ まで ver.2(窪田忠夫×岩田健太郎)  

索引

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執筆者一覧

岩田健太郎 神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授 著

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