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書籍詳細

患者の“現在地”を見失わない!  ICUチーム医療のためのフェーズ思考

患者の“現在地”を見失わない!  ICUチーム医療のためのフェーズ思考

余川順一郎 著

A5判 136頁

定価3,520円(本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-498-16690-5

2026年03月発行

在庫あり


ICUで起こる日々の困りごとに正解はない.フェーズがある.
治療の一つ一つは「善か悪か」ではなく,その価値は患者の現在地=フェーズによって決まる.「フェーズ思考」をチームの共通言語として,ICUに関わる全てのスタッフが同じゴールに向かって行動するための実践的ガイドブック.読めばフェーズ思考のフレームワーク,各フェーズの見分け方,フェーズ別での具体的な動き方など患者の全体像・時間軸を見渡すための思考法が身につき,チームの中で自信をもって動けるようになる一冊です.

はじめに:この本を手に取ったあなたへ

 もしあなたが,日々めまぐるしく状態が変化する重症患者さんを前に,「本当にこれでよいのだろうか」と自問したことがあるなら,そしてもし,チーム一丸となって最善を尽くしているはずなのに,なぜか治療方針が噛み合わない,そんなもどかしさを感じたことがあるなら,この本はきっとあなたの力になれるはずです.
 例えば,現場ではこんな「困りごと」が起きていませんか.
集中治療医から他科・主科への重篤感・よくなっている感がなかなか
伝わらない問題
 状態がよくなっていないから侵襲的な介入が必要なのになかなかしてくれない.もう離床していかないとICU—AW(ICU Acquired Weakness)が懸念されるのになかなかECMO(ExtraCorporeal Membrane Oxygenation)を抜いてくれないなど.
若手医師のついつい前日の治療をdoしちゃう問題
 患者さんの状態がよくなってきているのであれば治療も進んでいるはずなのに,治療内容が変わっていないってどういうこと?
抜管すると集中治療が終わった感が出ちゃう問題
 抜管したのでどんどん離床を進めようとがんばりすぎたら,心房細動になってしまった.抜管したのでICUから退室させたら,病棟で急変してICUに逆戻りしてしまった.
メディカルスタッフの,今提案していいのだろうか問題
 経管栄養開始してって提案したいけど,「今そんな状態じゃないのに何言っているの?」って思われたらどうしよう.
根源にある治療フェーズの認識のズレ
 一見すると,これらは個別のスキルやコミュニケーションの問題に見えるかもしれません.しかし,実はこれら全てに共通する,根源的な原因があるのです.
 それは,個々のスタッフの知識や技術の不足ではなく,その大前提となる「患者さんの“現在地”=治療フェーズ」をチームで正しく認識できていないという,“認識のズレ”にあるのです[図1].「うちは多職種回診やカンファレンスをしっかりやっているから」と思われるかもしれませんが,ICUではたくさんのシーム,連携があり,全員に伝えきれなかったり,伝えたつもりでも正確に伝わらず認識のズレが起こりやすかったりする状況にあります[図2].
治療フェーズの認識がズレたままだとどうなるか?
 ナイチンゲールは「看護覚え書」の中で,看護とは患者の治癒力の発動を助けることだと述べました.ICUにいる患者さんへの体位交換を例に考えてみましょう.無気肺や褥瘡を防ぐ体位交換は,まさに「看護」であると言えます.しかし,まだ状態が不安定な患者さんに行い,血圧が低下すれば,それは「看護でないこと」になってしまいます.
 これは看護に限りません.私たちの行為は,あるフェーズでは救命的でありながら,次のフェーズでは有害な行為になりえるのです.輸液,栄養,リハビリテーション,鎮静…その全てが,患者さんの「現在地」に合っていなければ,善意の医療でさえ,回復の妨げになりかねません.
本書が提供する「羅針盤」
 その「ズレ」をなくすために,本書では職種,疾患ごとの縦割りの管理ではなく,看護,栄養,リハビリテーションといった患者さんの全身管理を横断的に捉え,「フェーズ」という共通言語を羅針盤とすることで,患者さんの“現在地”を見失わず,チームで共有するアプローチを提案します.本書で提案する「フェーズ」という考え方は,まだ多くのエビデンスが確立されているわけではありません.しかし,既存のガイドラインだけでは説明できない現場の「困りごと」を解決するための一つの「実践的な仮説」として,皆さんと共に考え,育てていきたいと思っています.
この本は,こんなあなたのために書きました
 本書の主な対象読者は,ICUで働く若手の集中治療医,そして看護師や理学療法士,臨床工学技士,管理栄養士をはじめとする,チーム医療を支える全てのメディカルスタッフの皆さんです.日々の臨床で患者さんの目まぐるしい変化に戸惑いながらも,「もっとよいケアを提供したい」「チームの一員として貢献したい」と願う,熱意ある皆さんを,私たちは一番に応援したいと思っています.
 そして,本書はそれだけではありません.
 すでに豊富な経験をお持ちの指導的立場にある専門医の先生方にも,ぜひ手に取っていただきたいのです.先生方がその卓越した臨床感覚で捉えている患者さんの「現在地」,その貴重な認識は,果たしてチームの隅々にまで,先生の意図通りに共有されているでしょうか.本書は,先生方のその貴重な「暗黙知」を「フェーズ」という共通言語で「形式知」へと変換し,チーム全体の力を引き出すための「翻訳機」であり「増幅器」となることを目指します.
 また,オープンICUで重症患者さんを管理されたり,専門科としてICU患者さんに関わったりする機会のある,集中治療を専門としない先生方にとっても,本書は複雑な病態を時系列で整理し,専門医との円滑なコミュニケーションを助ける「共通の地図」のような役割を果たすはずです.「専門医はなぜ今,この治療を選択しているのか,こういう提案をしてくるのか」―その背景にある「フェーズ」を理解することで,より質の高い協働が生まれると信じています.
 つまり本書は,ICUに関わる全ての人が,それぞれの立場から患者さんの「現在地」を正確に理解し,同じ未来を見つめるための本なのです.
フェーズ思考までのロードマップ
 まず第1章では,なぜ「フェーズ」で考えることが重要なのか,その歴史的・病態生理学的な背景を整理し,本書の土台となる思考のフレームワークを学びます.
 次に第2章では,患者さんがどのフェーズのどのあたりにいるか判断するためのいろいろなキーワードや,そのフェーズでの治療の目標などを整理していきます.
 それぞれのフェーズの患者像がイメージできるようになったところで第3章からは実践編です.今まで,それぞれの職種の縦割りのプロトコルはあったかもしれませんが,本書では,フェーズごとに職種横断的な全身管理を「やりすぎ/やらなさすぎ」のリスクとともに考えていこうと思います.
 第4章では治療の「現在地」を可視化する「軌跡シート」など,筆者の施設でのフェーズを意識した治療を実践するための様々な工夫について紹介することで,みなさんの施設でのフェーズ思考の導入の一助となればと思っています.
 第5章では上手く行かなかった症例を「軌跡シート」を用いて振り返り,どこでどんな職種間の連携,コミュニケーションの取り方をしていたらよかったかを考えていきましょう.
 この本を読み終える頃には,あなたは個々のケアを行うだけでなく,患者さんの全体像と時間軸を常に意識し,自信を持ってチームに「今,患者さんはこのフェーズですよね? それではこう動きますね!」と提案できるようになっているはずです.

2026年3月
余川順一郎


[図1]知識の問題の前にある認識の問題

[図2]ICUにおける様々なシーム,連携
(第50回日本集中治療医学会学術集会(2023年)における著者の発表資料より引用)

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目次

はじめに:この本を手に取ったあなたへ

第1章 総論:なぜ今,「治療フェーズ」で考えるのか
 1—1 集中治療の歴史とフェーズ概念の登場
 1—2 フェーズを支える病態生理:侵襲に対する生体反応
 1—3 本書で用いる4つのフェーズ
 学びの羅針盤
 コラム01 フェーズ思考の源流をたどる ― Ebb and Flowとは?

第2章 基礎編:各フェーズの全体像 現在地の見分け方とゴール設定
 2—1 超急性期:チームで嵐を乗り切り,船を沈ませない
 2—2 維持期:ドックでの調整と,次なる航海への試験航行
 2—3 回復期:チームで追い風を捉え,本格的な航海へ
 2—4 転棟期:次の港へ,安全にバトンをつなぐ
 「フェーズ思考」を実践するためのQ&A
 学びの羅針盤
 コラム02 フェーズを教えてくれるバイオマーカーたち

第3章 実践編(1):フェーズ別・全身管理プラクティス
 3—1 超急性期:何を優先し,何をやらないか
  循環管理
  【ミニコラム】循環を極める(1) 〜MCS導入の判断とSCAI分類〜
  呼吸管理
  【ミニコラム】呼吸を極める(1) 〜自発呼吸の“功罪”とフェーズ戦略〜
  鎮静・鎮痛管理
  【ミニコラム】鎮静・鎮痛を極める(1) 〜鎮静は“悪”なのか.フェーズで変わるその役割〜
  栄養管理
  【ミニコラム】栄養を極める(1) 〜超急性期の栄養,開始すべきか,待つべきか〜
  リハビリテーション管理
  看護ケア

 3—2 維持期:合併症を防ぎ,次への準備を進める
  循環管理
  【ミニコラム】循環を極める(2) 〜De—resuscitationの準備と評価〜
  呼吸管理
  鎮静・鎮痛管理
  栄養管理
  リハビリテーション管理
  【ミニコラム】リハビリテーションを極める(1) 〜プロトコルの“先”にあるフェーズ思考〜
  看護ケア
  【ミニコラム】看護を極める(1) 〜身体抑制を「当たり前」にしないためのフェーズ思考〜

3—3 回復期:「引く医療」への転換と離脱の促進
  循環管理
  【ミニコラム】循環を極める(3) 〜本格的な「引き算」のさじ加減〜
  呼吸管理
  鎮静・鎮痛管理
  【ミニコラム】鎮静・鎮痛を極める(2) 〜薬剤の使い分けとフェーズ戦略〜
  栄養管理
  【ミニコラム】栄養を極める(2) 〜「守りの栄養」から「攻めの栄養」への転換点〜
  リハビリテーション管理
  【ミニコラム】リハビリテーションを極める(2) 〜「食べる」「話す」という人間らしさを取り戻すために〜
  看護ケア

3—4 転棟期:ICUから次のステップへ,安全にバトンをつなぐ
  循環管理
  【ミニコラム】循環を極める(4) 〜二次予防薬はいつから始めるか?〜
  呼吸管理
  【ミニコラム】呼吸を極める(2) 〜抜管後のラストワンマイル〜
  鎮静・鎮痛管理
  栄養管理
  リハビリテーション管理
  看護ケア
  【ミニコラム】看護を極める(2) 〜家族という,もう一人の“患者”のフェーズに寄り添う〜
  学びの羅針盤:フェーズごとの各管理のまとめ
 コラム03 コミュニケーションにもフェーズがある?

第4章 実践編(2):フェーズ思考を「チームの力」に変える技術と実践
 4—1 患者の軌跡を可視化する「軌跡シート」の導入と使い方
 4—2 疾患ごとのケアの前に,フェーズでケアを標準化する
 4—3 チームの対話を進化させるフェーズ思考の実践コミュニケーション術 
 学びの羅針盤
 コラム04 「正解」を当てるのではなく,「共通認識」を創り出す
 コラム05 次世代の軌跡シートへ ― 多職種で育てるアプリ化への挑戦

第5章 ケーススタディで学ぶフェーズ思考
 5—1 症例(1):心臓術後,せっかく早期抜管を達成したのに…
 5—2 症例(2):心原性ショック―補助循環が入っている間は超急性期?
 5—3 症例(3):敗血症性ショック―なかなか維持期から抜け出せない原因は?
 コラム06 抜管は回復期まで待つべき?
 コラム07 航路の終着点を見定める―治療のゴールが「看取り」に変わる時

第6章 多職種座談会
 石原 敦司 岐阜県総合医療センター 理学療法士
 濱田 悠佑 聖マリアンナ医科大学病院 臨床工学技士
 山本絵里子 金沢大学附属病院 看護師
 余川順一郎 金沢大学附属病院集中治療部 医師
 コラム08 航跡は未来へ続く ―ICUケアが,患者さんの「失われた記憶」をつなぐ時

おわりに:患者さんの“航海”が,ひとつなぎとなる未来へ

参考文献

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執筆者一覧

余川順一郎 金沢大学附属病院集中治療部 著

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