第4版の序
早いもので初版を世に出してから8年,第3版から4年が経過した.お陰様で多くの読者の方々に心臓ペーシングに関する教科書として可愛がっていただいている.第3版も早々に売り切れになってしまい,本来ならば1年前に改訂4版として出版されるはずであったが,著者が体調を崩し改訂作業が1年も延期になってしまったことをここでお詫びしたい.今はもとどおり元気になり,すべての章にわたり全面的に改訂を行なうことができた.最近注目されているシングルリードVDDや,読者からの要望が高かったリード抜去術についても新たに章を設け解説した.この4年間に各メーカーからリリースされたペースメーカーの数は数えきれないほどであり,またすでに植え込まれていた旧いペースメーカーも新しい機種への交換が進んでいるため,巻末のペースメーカー一覧についてもupdateなものに書き改めた.付加機能についても大体出揃ってきたようであり,大切な機能については特殊付加機能の章で整理して解説した.電極リードについても新たな進歩がみられたので書き直した.この本は図が命であるので,新たに多くの図も付け加えた.
先日行なわれた日本心臓ペーシング電気生理学会の理事会で,機関誌の名称が「心臓ペーシング」から「不整脈」へ変更する旨の決議があったが,古くからペーシングに携わっているものにとっては,時代の流れとはいえ何か淋しい思いがするのも事実である.それだけ心臓ペーシングという技術が確立してしまい,不整脈治療の一環を担うだけの当たり前の存在になってしまったということでもある.かつては理事,評議員も外科系の先生方が多数を占めておられたが,最近は内科系の先生方が多くなり,その興味もペーシング技術そのものよりも不整脈という広い分野に広がっているためと思われる.ただ,心臓ペーシングという技術は厳然と存続しているわけであり,その存在意義は大きく,専門医を目指す人達には欠くべからざる修得技術の一つである.
初版の序で述べた通り,初めてこの分野に足を踏み入れられる若い人達にとっては入門書として,そしてすでに専門領域に達しておられるベテランの人達にとっては知識の整理のためのマニュアルとして今後も座右においていただければ幸いである.
今回の改訂作業,出版にあたっては,中外医学社の上村裕也氏,荻野邦義氏に多大のご尽力をいただいた.心から感謝する次第である.
1997年6月 梅雨の晴れ間に
山本 豊