2版の序
本書の初版が出版されたのは,CRT が認可される前のことであった.CRT,CRTD のみならず,その後のデバイスの進歩は著しいものがあった.心室ペーシングの不利益より,心室ペーシング最少化アルゴリズムが開発された.心房中隔,右室流出路/心室中隔など,通常の右心耳,右室心尖部以外のペーシング部位もさかんに試みられるようになった.しかしながら,これらの方法には依然として解決していない問題がある.進歩の速さと未解決の問題より,改訂作業には困難を伴った.しかし,これ以上改訂を遅らせるわけにもいかず,現時点における状況を示すためにも今回の改訂を行った.改訂にあたり初版時に不足していた項目を追加した.
不整脈専門医認定制度,ペースメーカー関連専門臨床工学技士認定制度,IBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiners)試験,CDR(cardiac device representative)などの認定制度が始まり,デバイス治療には,それなりの知識と能力を要求される時代になったといえる.
本改訂版が,デバイス治療の役に立てば幸いである.
2012年7月
石川利之
序
ペースメーカー治療の大きな成功のためか,ペースメーカーはすでに完成したものになっており,もはや進歩・研究の余地はないという声さえ聞かれた.しかし,まだペースメーカーが完成したものとは思えない.設定の自動化,ペースメーカーのホルター機能などの診断機能の進歩,ペースメーカーによる心不全治療,ペースメーカーによる心房細動などの頻拍性不整脈の抑制など,最近のペースメーカー治療の進歩はめざましい.
一方,ペースメーカーや ICD の植込み手術やフォローは,医師であれば誰にでも容易にできるようになったので,逆に,ペースメーカー治療の修得をおろそかなものにしている危惧がある.
ペースメーカー植込み適応自体が evidence-based medicine がいわれる以前のものであるので,実は充分な evidence はなく,倫理的な理由から evidence を求めること自体が不可能な状況である.そのため,これまで積み重ねられてきた経験も重要である.
実際に使用するペースメーカー独自の特殊機能についてはそのマニュアルに習熟すべきである.本書には,ペースメーカー治療の基本的考え方と方法を記したいと思い,必要とされるペースメーカー治療の基礎から最新治療まで実用性を重視して解説したつもりである.本書が,少しでもペースメーカー治療の役にたてばと願っている.
2004年1月
石川利之