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書籍詳細

腹膜透析ハンドブック〜安全・安心に行うために〜

腹膜透析ハンドブック〜安全・安心に行うために〜

横尾 隆 監修 / 丸山之雄 編著 / 松尾七重 編著

A5判 236頁

定価4,620円(本体4,200円 + 税)

ISBN978-4-498-32400-8

2025年06月発行

在庫あり


腹膜透析の導入から管理までこの1冊で!透析チームの共通マニュアルとして使える!
腹膜透析治療の基本的な知識から実際の管理方法,合併症への対応まで,経験豊富なエキスパートが具体的に解説!日本の腹膜透析黎明期から患者に寄り添い,常により安全な診療への向上に取り組んできた慈恵医大で実際に使われているメソッドをわかりやすく伝授.医師だけでなく看護師,薬剤師,栄養士,在宅すべてのスタッフに役立つ必携書です.

巻頭言
〜なぜ腹膜透析が必要なのか〜

 本書をご覧いただき,誠にありがとうございます.本書は,腎代替療法として重要な治療法の一つである腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)の理解を深め,その普及を目指して企画されたものです.腹膜透析は,患者の生活の質(QOL)を維持し,より自立した生活を送ることを可能にする画期的な治療法です.しかし,現在の日本において,その利用はまだ限定的であり,多くの患者にとって十分に選ばれていないのが現状です.本巻頭言では,腹膜透析の重要性と普及が進まない理由を改めて考察し,本書を通じて目指すべき未来像を共有します.

1.腹膜透析の意義
 末期腎不全の患者において,腎代替療法は生命を維持するために不可欠な治療です.その中でも腹膜透析は,患者が自宅で治療を行うことができるという独自の利点を持っています.患者自身が腹腔内に透析液を注入し,体内の老廃物や余分な水分を除去するこの治療法は,特に高齢化が進む日本において重要な選択肢となり得ます.
 腹膜透析の最大の特徴は,患者自身が自分のペースで治療を進められる点です.これにより,通院が困難な患者や,遠隔地に居住する患者でも継続的に治療を行うことが可能になります.また,心血管系への負担が少ないという利点もあり,心疾患や他の合併症・併存疾患を持つ患者にとって安全性の高い治療法と言えるでしょう.さらに,災害時やパンデミックのような緊急事態においても,自宅で治療を続けられる腹膜透析は,患者にとって安心感をもたらす治療法です.
こうした多くの利点を持つ腹膜透析ですが,日本におけるその利用率は極めて低く,腎代替療法全体のわずか3%程度に留まっています.これは,他国の10〜20%と比較しても著しく低い数字です.このような状況を改善し,患者に適切な治療選択肢を提供するためには,医療現場における腹膜透析の理解と普及をさらに推進する必要があります.

2.普及の妨げとなる要因
 腹膜透析が日本で広く利用されていない理由は,複合的な要因によるものです.最も大きな理由の一つは,医療従事者の間で腹膜透析に関する知識や経験が十分に共有されていないことです.特に若手医師にとって,腹膜透析の導入や管理は敷居が高いと感じられることが少なくありません.その結果,血液透析(hemodialysis:HD)がより身近な選択肢として推奨される場合が多いのが現状です.
 また,腹膜透析は患者やその家族の協力が不可欠な治療法です.さらに,医療従事者間のチーム医療が重要であり,看護師,薬剤師,栄養士,ソーシャルワーカーといったコメディカルスタッフの密な連携が求められます.しかし,このような体制が整備されていない医療施設も多く,結果として腹膜透析の導入や維持が困難になっています.患者のQOLを向上させる可能性を持つこの治療法が,こうした環境要因によって制限されているのは非常に残念な現状です.

3.本書の目的と意義
 本書「腹膜透析ハンドブック〜安全・安心に行うために〜」は,このような現状を打破するための一助となることを目的に企画されました.本書では,腹膜透析治療の基本的な知識から,実際の管理方法,合併症・併存疾患への対応まで,経験豊富なエキスパートたちが執筆しています.これらの情報を通じて,医療現場における腹膜透析の理解が深まり,多くの患者に対して適切な治療が提供される環境の整備を目指しています.
 また,医師だけでなく,看護師,薬剤師,栄養士,ソーシャルワーカーといった多職種のコメディカルスタッフにも役立つ内容を盛り込んでいます.本書を通じて,チーム医療の重要性を再確認し,患者一人ひとりに合った治療を実現するための連携を強化していきたいと考えています.

4.腹膜透析の未来と本書への期待
 腹膜透析は,現在もなお進化を続けている治療法です.新しい透析液やカテーテルの開発,管理技術の向上など,医療技術の進歩がこの治療法をさらに安全で効果的なものにしています.本書が提供する情報は,こうした最新の知見も含めて網羅されており,腹膜透析に携わるすべての医療従事者にとって有益な内容となっています.
 最後に,本書を通じて,腹膜透析の普及がさらに進み,多くの患者がその恩恵を受けられる未来を共に目指していきたいと考えています.腹膜透析は患者のQOLを向上させるとともに,医療現場に新たな可能性をもたらす治療法です.本書が,医療従事者の皆さまの学びと実践を支える手助けとなり,腹膜透析を選択した患者とその家族により良い医療を提供する一助となれば幸いです.
 患者に寄り添い,適切な治療を提供するために,皆さまと共に力を合わせて歩んでいけることを心より願っています.

2025年4月
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 主任教授
横尾 隆

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目 次
巻頭言〜なぜ腹膜透析が必要なのか〜 〈横尾 隆〉

1章 総論
A. 腎代替療法の種類と特徴 〈丹野有道〉
 1 はじめに
 2 血液透析(HD)
 3 腹膜透析(PD)
 4 PDとHDの比較
 5 腎移植
B. 腹膜透析とは─ PDの原理と処方の実際 〈丹野有道〉
 1 はじめに
 2 PDの基本原理
 3 PD処方による体液の「質の管理」
 4 PDにおける体液の「量の管理」
 5 残存腎機能の評価と保持
 6 治療の種類(APDとCAPD)
 7 おわりに
C. PDの適応と禁忌 〈丹野有道〉
 1 PDの絶対的禁忌
 2 PDの相対的禁忌
D. 至適透析と体液管理 〈丸山之雄〉
 1 はじめに
 2 適切に溶質除去が行われているか
 3 適切に水分除去が行われているか

2章 導入と実践
A. PD導入入院 〈小林賛光〉
 1 はじめに 周術期管理からコンディショニングおよび導入初期のPD処方
 2 周術期管理:術前管理
 3 周術期管理:術後管理
 4 コンディショニング:導入初期のPD処方
B. PDのための手術 〈小林賛光〉
 1 はじめに ペリトネアルアクセスの選択からPDカテーテル挿入まで
 2 PDカテーテルの種類とその特徴
 3 本邦におけるカテーテル選択の現況
 4 カテーテル出口部位
 5 カテーテル留置法(SMAP)
 6 PDカテーテル挿入術の流れ(標準的外科的留置術)
 7 手術手技習得のために
C. PD液の種類と処方の実際 〈小林賛光〉
 1 PD液の種類と特徴
 2 PDの処方と実践

3章 管理と合併症
A. カテーテル出口部・トンネル管理 〈松尾七重 青木和美〉
 1 出口部完成前のケア
 2 出口部完成後(維持期)のケア
 3 出口部・皮下トンネル部観察のポイント
 4 感染時のケア
B. 出口部・トンネル感染 〈増田直仁〉
 1 定義と分類
 2 診断
 3 予防
 4 治療
 5 出口部変更術
C. 排液異常 〈嵯峨崎 誠〉
 1 はじめに
 2 排液異常時の初期対応
 3 排液混濁
 4 血性排液
 5 乳糜排液
 6 排液中のフィブリン析出
D. PD関連腹膜炎 〈土谷千子〉
 1 診断
 2 種類
 3 治療
 4 カテーテル抜去・再挿入
 5 予防
 6 腹膜炎を減らすには
E. 抗酸菌性感染:腹膜炎,出口部 〈古谷麻衣子〉
 1 はじめに
 2 結核菌
 3 非結核性抗酸菌
F. 注排液不良,カテーテルトラブル 〈星野太郎〉
 1 はじめに
 2 臨床像,注排液不良の原因
 3 原因検索
 4 注排液不良の治療
G. 透析液リーク 〈倉重眞大〉
H. 横隔膜交通症 〈椎名裕城〉
I. 腰痛 〈川井麗奈〉
J. 便秘 〈本多 佑〉
K. ヘルニア 〈嶋田啓基〉
L. 腹膜透析におけるCKD-MBD 〈加藤一彦〉
M. 貧血 〈新倉崇仁〉

4章 PD長期継続のために 〈丸山之雄〉
 1 はじめに
 2 体液管理,残存腎機能維持
 3 PD患者の栄養管理
 4 被囊性腹膜硬化症(EPS)
 5 腹膜透析・血液透析併用療法
 6 おわりに PD長期継続のためにできること

5章 患者教育,自己管理
A. 腹膜透析患者の食事・飲水 〈水谷真希子〉
B. 治療薬について 〈四方公亮〉
 1 PD患者における代表的な薬剤について
 2 患者教育について
C. PDノートの書き方 〈松尾七重〉
D. シャワー浴,入浴 〈後関素子〉
E. 在宅での注意点 〈青木和美〉
F. 運動療法 〈松尾七重〉
G. その他生活上の注意 〈青木和美〉
H. フットケア 〈後関素子〉
I. 公費負担医療制度 〈松尾七重〉
J. 緊急時の対応 〈青木和美〉
排液が濁っている,腹痛がある,発熱がある
注排液ができない,時間がかかる
接続チューブ先端の汚染
接続チューブをうっかり切ってしまった
出口部が赤い,腫れている,熱感がある,ジクジクしている,膿が出る
安静にしていても息苦しいと感じる,苦しくて仰臥位になれないとき

6章 災害時の腹膜透析 〈松尾七重 青木和美 四方公亮 干川三稀〉
 1 災害時の備えと腹膜透析中に災害が起こってしまったときの対策
 2 避難時に持っていく物品
 3 災害時のPD方法
 4 薬剤,PD液のストック
 5 医療機関・メーカーへの連絡
 6 避難時の食事

7章 腹膜透析管理におけるCQI活動 〈松尾七重〉

おわりに〜PDの歴史を振り返り,未来へエールを送る〜    〈池田雅人〉

索引

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執筆者一覧

横尾 隆 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 主任教授 監修
丸山之雄 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 編著
松尾七重 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 編著
丹野有道  東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 腎臓・高血圧内科 
小林賛光  東京慈恵会医科大学附属第三病院 腎臓・高血圧内科 
青木和美  東京慈恵会医科大学附属病院 看護部 
増田直仁  厚木市立病院 腎臓・高血圧内科 
嵯峨崎 誠  川口市立医療センター 腎臓内科 
土谷千子  東京慈恵会医科大学附属柏病院 腎臓・高血圧内科 
古谷麻衣子  東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 腎臓・高血圧内科 
星野太郎  さいたま赤十字病院 腎臓内科 
倉重眞大  東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 
椎名裕城  東京慈恵会医科大学附属第三病院 腎臓・高血圧内科 
川井麗奈  東急病院 腎臓・透析内科 
本多 佑  川口市立医療センター 腎臓内科 
嶋田啓基  東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 
加藤一彦  東京慈恵会医科大学附属柏病院 腎臓・高血圧内科 
新倉崇仁  さいたま赤十字病院 腎臓内科 
水谷真希子  東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部 
四方公亮  東京慈恵会医科大学附属病院 薬剤部 
後関素子  東京慈恵会医科大学附属病院 看護部 
干川三稀  東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部 
池田雅人  東京慈恵会医科大学附属柏病院 腎臓・高血圧内科 教授 

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