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書籍詳細

うつ病――診断・治療から病態の理解まで

うつ病――診断・治療から病態の理解まで

加藤忠史 著

A5判 150頁

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

ISBN978-4-498-22966-2

2025年06月発行

在庫あり


うつ病診療の必須知識と実践的経験則を網羅できる唯一無二の1冊
DSMなど概念の変遷から,多岐にわたる症状,診断や検査,治療までのすべてを包括的にわかりやすく解説.精神科医はもちろん,研修医,かかりつけ医などうつ病患者をみることのあるすべての医療者に役立つ必携書.ガイドライン等の必須知識をしっかりおさえつつ,それだけではうまくいかない実臨床の多彩な患者へ対応するための,エキスパートの経験値と実際にどうするかを伝授!

まえがき

 うつ病は,労働世代の長期休職の主要な要因であり,命を奪うがん,高齢化とともに増加し介護負担がかかる認知症と並んで,大きな社会問題になっている疾患である.
 海外のデータでは,うつ病の生涯有病率は15%前後とされ,日本では7%程度とされている.傷病手当金の支給対象のトップが精神疾患であるが,その多くはうつ病・うつ状態であり,うつ病は病気による長期休職の最大の要因になっていると考えられる.欠勤(アブセンティーイズム)に加え,出勤していても能率が上がらないプレゼンティーイズムによる社会的損失も大きい.また,自殺者の約半数がうつ病・うつ状態によるものとされており,生命予後という点でも甚大な影響がある.
 WHO(世界保健機関)は,2035年には,世界最大の健康問題はうつ病になると予測している.現在ではまだ,途上国では栄養問題,感染症などのほうが重要であるが,これらは解決可能な要素が大きい.途上国が発展を遂げた頃には,先進国でも未だ解決できていないうつ病問題が,世界中で大問題になるということであろう.
 うつ病は,現代の精神科診療において,神経発達症,不安症,統合失調症などと並んで,中心的な対象疾患の1つであるが,WHOは,精神科医療をプライマリケアに統合することが,精神健康に対する最も実行可能で重要な戦略としている.
 すなわち,精神科に限らず,一般の内科診療においても,重要な疾患の一つに位置づけられている.実際,うつ病患者の多くは,精神科以外の診療科で治療されていると思われる.医師の初期研修2年間の中でも,最低1カ月間の精神科研修が義務づけられているが,その中で必ず経験すべき疾患・状態の一つに,抑うつが位置づけられている.すなわち,うつ病診療は,精神科に限らず,全ての医師がマスターすべきものとされているのである.
 このようにうつ病は,医学における最大の課題の一つであり,精神科にとどまらず,全ての医師がその診断・治療について知っておくべきとされている.にもかかわらず,うつ病の診断・治療から病態までを解説した,まとまった医学書がほとんどないのは,一体どうしたことであろうか.
 患者さん向けの本はあり,うつ病の認知行動療法の本,といった本も多く出版されている.筆者も,「うつ病の脳科学」という本であれば,書いたことはある.しかし,うつ病の基礎から臨床までを網羅した医学書,特に単著の本は,筆者が知る限り,存在しないのである.
 おそらくは,うつ病があまりに多様であり,その背景や治療法があまりに多岐にわたり,分子病態から精神療法まで一人でカバーすることは難しいからかも知れない.
 筆者は,2020年に順天堂大学で気分障害センターを立ち上げ,うつ病・双極症の診療に当たってきたが,最近当科で作成した専攻医向けの推薦書リストにも,うつ病の本は抜け落ちていた.
 精神科のみならず,一般臨床においても,最重要疾患の一つであるうつ病の教科書がなくてもよいはずはない.こういう状況を前にし,何とかしなければ,という思いから,通読できるボリュームで,うつ病の病態から診断・治療までの必要十分な知識を得られる本に挑戦したのが本書である.
 精神科専攻医や生涯学習を志す精神科医だけでなく,医学生,今まさに研修中の臨床研修医,うつ病を診療する臨床各科の医師,メディカルスタッフなど,多くの方々のお役に立てればと思い,精神科医としてはついつい「歴史」や「概念」の議論に多くの枚数を割きたくなるところを敢えて控え(この第1章はとばしていただいてもさしつかえない),症状,診断,治療を中心に据え,簡潔を心がけることとした.
 本書が多くの方のお役に立てることを願っている.

2025年春
加 藤 忠 史 

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目次

CHAPTER1 概念の変遷

歴史
DSM—5
DSM—5—TR

CHAPTER2 症状

必須項目
身体症状
中核症状以外の精神症状
認知機能障害

CHAPTER3 診断

DSM—5—TRによる診断基準
■ A項目:症状
■ B項目:臨床的に意味のある苦痛と社会的,職業的な機能障害
■ C項目:身体疾患と薬剤性の除外
■ D項目:その他の精神疾患との鑑別
■ E項目:双極症(双極性障害)との鑑別
うつ病の診断基準を満たさない場合

CHAPTER4 うつ病の特徴づけ

うつ病の特徴づけとは
DSM分類にない注意すべきうつ病
うつ病分類の現状
併存症

CHAPTER5 治療

うつ病の診療ガイドライン
うつ病診療総論
軽症うつ病
閾値下抑うつ状態
中等症・重症うつ病
維持療法
後続治療(next—step treatment)
難治性うつ病
児童思春期
高齢者のうつ病
妊娠・授乳期
うつ病と睡眠
特定用語
ニューロモデュレーション
STAR*Dとの比較

CHAPTER6 治療に用いる方法

治療薬・ニューロモデュレーションなど
精神療法(心理療法)
危機介入
自殺予防
リハビリテーション
共同ケア
ケースフォーミュレーション

CHAPTER7 症例

■ 症例1:特に誘因なく発症し,休学に至った大学生
■ 症例2:母国が戦争に巻き込まれ日本に避難してきた女性
■ 症例3:家庭内の慢性的なストレスが要因となっている男性
■ 症例4:上司の叱責で休職した症例
■ 症例5:糖尿病が併存した男性

CHAPTER8 検査法

一般臨床検査
脳画像検査
脳波検査
脳脊髄液検査
心理検査
その他の補助的なあるいは研究的な脳画像検査
ゲノム

CHAPTER9 原因

うつ病の危険因子
ゲノム解析
ストレス反応
炎症
抗うつ薬の作用機序とうつ病におけるモノアミンの役割
うつ病の分子細胞病態
今後の展望

文献
あとがき
おことわり/利害関係の開示

索引

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執筆者一覧

加藤忠史 順天堂大学医学部精神医学講座教授 著

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