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書籍詳細

整形×内科=大腿骨近位部骨折-ジェネラリストにならざるをえない整形外科医のための内科読本-

整形×内科=大腿骨近位部骨折-ジェネラリストにならざるをえない整形外科医のための内科読本-

井上三四郎 著

A5判 348頁

定価5,940円(本体5,400円 + 税)

ISBN978-4-498-05494-3

2025年07月発行

在庫あり


ジェネラリストにならざるをえない整形外科医のために
大腿骨近位部骨折は,日常診療でよく見かけるありふれた疾患でありながら,整形外科と老年内科のあいだに位置する“汽水域”のような存在です.本書では,整形外科と総合診療の両方を経験した著者が,その中間領域を両側の視点から丁寧に解説します.整形外科専門医,総合診療科専門医,整形外科専攻医,総合診療科専攻医,臨床研修医,そして学び直しを志す他科の先生方まで,それぞれの立場から頁をめくることで,大腿骨近位部骨折の診療における新たな気づきが得られるはずです.

まえがき
 本書を手に取ってくだった皆様,ありがとうございます.
 私は井上三四郎と申します.私は1999年に医者になり,以来ずっと整形外科医です.私のキャリアで異色なのは,ここ数年は総合診療科に在籍していることです.この件については話すと長くなります.このまえがきの後に私が飯塚病院総合診療科に移る直前に書いたエッセイ「野菜も売る魚屋」を記載しておきます.気になる方はお読みください.
 さて本題です.本書を手に取られた皆さんは,多少なりとも大腿骨近位部骨折に興味があると思います.この骨折は日常診療でありふれています.ガイドラインによりますと1),新規患者数は2030年に29万人,2040年に32万人に達するとされています.とんでもない患者数です.皆さんが興味を持たれるのも当然です.
 私はこの骨折は,整形外科という海水と老年内科という淡水の汽水域と捉えています.整形外科医=海水魚,内科医=淡水魚,手術室=海,病棟管理=川と思ってください.整形外科医=海水魚からみると,汽水域の塩分は薄すぎます.だから海水魚は汽水域では暮らせません.一方内科系医師から見ると,汽水域は塩辛すぎます.とても住むことはできません.私のキャリアを踏まえ整形外科と内科の両方の視点から,この汽水域に関して説明したのが本書です.
 本書のコンセプトは「とりあえずこれ読んどけば,汽水域(=大腿骨近位部骨折)の概要がざっとわかる」です.整形外科医からみれば内科のことを,内科医からみれば整形外科のことを俯瞰的に記しました.初めに,ありがちなシチュエーションを設定しています.次にそこから導き出される話題について,2人の医師のダイアログが続きます.それを補足するように,私が注釈を入れております.まずは,シチュエーションと雑談を読んでください.そして気になれば注釈に目を通してください.さらに詳しく知りたい方のために文献を並べておきます.これが本当の勉強です.是非文献をお読みください.
 この話の登場人物について,お話ししたいと思います.すべては架空の人物です.トイプードルのらん先生は「この人って良くも悪くも整形外科医だね」と私が感じた整形外科医をモデルにしています.そしてそれは若い頃の私でもあります.秋田犬のさん先生は今の私です.その他にも多くの人物が適時登場します.それらも私が実際に接した人をモデルにしています.
 本書は,整形外科専門医,総合診療科専門医,整形外科専攻医,総合診療科専攻医,臨床研修医,そして学び直しを志している他科医師を主な対象としています.
 整形外科専門医の皆様.整形外科医は持てる労力のほとんど全てを手術に費やしています.その反面,それ以外の問題点には手が回らなくなりがちです.病棟管理について,興味あるところから摘まんで読んでもらえれば幸いです.
 専門医を持っていない,整形外科専攻医の皆様.皆様は,大腿骨近位部骨折のまさに術者であり,病棟を管理している当事者です.この本の全てが必要になるでしょう.本書をざっと読んでいただければ,なんとなくわかった気になると思います.本書のコンセプト「とりあえずこれだけ読んだら,大腿骨近位部骨折の概要がざっとわかる」は,若手の整形外科医にとって有用と思います.あとは,実践あるのみです.
 内科系医師の皆様.大腿骨近位部骨折に対するコマネジメントは,おそらくこれからますます盛んになります.それは内科系医師の新しい職種形態です.本書のコンセプト「とりあえずこれだけ読んだら,大腿骨近位部骨折の概要がざっとわかる」は,あなた方内科系医師にもまた有用と思います.皆様にとっては未知の領域です.本書がその理解の助けになれば幸いです.
 臨床研修医の皆様.とりあえず,第一章を読んでください.そのあとは,ざっくり通して読んでみてください.ピンと来ないところは,どんどん飛ばしてもらって結構です.全部わかる必要などありません.本書を読んでこの領域に興味が出れば,是非,整形外科か総合診療科の門を叩いてください.
 最後になりますが,学び直しを志している他科の医師の先生方も本書の読者として想定しています.一般外科や臓器別内科を長年行ってきたものの,年を重ねるにつれて整形外科領域に関わらざるを得なくなった先生方も多いと思います.そのような先生方は年次が上であるがゆえに,学び直しをしようにも改めて専攻医プログラムに入ることも困難です.しかし先生方は経験値という下地があります.一読すれば先生方の血となり肉となるはずです.
 堅苦しい本ではありません.気軽にお読みください.寝転がってピーナツでも食べながら気軽に目を通して下さい.

1)大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版),南江堂,2021.

2025年5月吉日
井上三四郎  

大腿骨近位部骨折は整形外科という海水と老年内科という淡水の汽水域

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目 次

Chapter1 どうやって診断しますか?
1 心構え これって,主治医の仕事なの?
2 診断(1) えっ,これって折れてるの?
3 診断(2) 昔はこんな呼び方なん?
4 診断(3) 似た病名あり過ぎじゃない?
5 Difficult patient encounters マジで勘弁してください……
6 保存治療 手術しないことあるん?
7 高齢者総合機能評価 整形外科医がそんなことする?

Chapter2 手術室に入る前に何をしますか?
1 術前検査 今まさにその検査オーダーしたところです!
2 手術同意書 あたし絶対失敗しませんから,って言えないよ絶対……
3 術前日の準備 時間がない!
4 輸血 えっ,それって何の略ですか?
5 手術当日 そんなことは,気にしてなかったです……

Chapter3 整形外科的に,どんな周術期合併症に注意しますか?
1 出血と感染 私の患者さんにかぎって…
2 インプラント周囲骨折 ペリプロって突然言われても……
3 DVT(深部静脈血栓症) 手術したんだから,足ぐらいそりゃ腫れるって!
4 血管損傷 そんなの滅多に起きないって!

Chapter4 内科的に,どんな術後合併症に注意しますか?
1 発熱 熱=抗菌薬でしょ!
2 ポリファーマシー 内科の薬? 知らん!すべて続行!
3 骨粗鬆症 骨がスカスカなんです……
4 医科歯科連携 なんで歯科受診? 患者さん,歯痛くないってよ.
5 セレンディピティ 偶然見つかった!? 仕事増やさないでくれますか?
6 ACP(アドバンスケアプランニング) そんなの整形外科医の仕事じゃない!

Chapter5 良いシステムってないですか?
1 コンサルテーション 依頼したんだから,全部そっちでやってくれて当然でしょ!
2 コマネジメント えっ,マジ! そんなことしてくれるの!
3 M & M カンファレンス 責められるから,出たくないです!
4 転院調整(1) カリフォルニア娘には気をつけろ!
5 転院調整(2) 良いことばかりはありゃしない
6 在院日数 長いのは誰のせい?
7 死亡診断書 主治医としての最期の仕事

エピローグ
あとがき
索引

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執筆者一覧

井上三四郎 飯塚病院総合診療科 著

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