みんなの心療内科
大武陽一 著
A5判 200頁
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
ISBN978-4-498-22968-6
2025年06月発行
在庫あり
みんなの心療内科
大武陽一 著
A5判 200頁
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
ISBN978-4-498-22968-6
2025年06月発行
在庫あり
心療内科は内科です
「精神科としばしば混同されていますが,心療内科は内科の一分野です」(本文より)と著者が言うように,心療内科は片頭痛・糖尿病・肥満症・気管支喘息などの心理社会的背景が関わる心身症を扱う診療科である.本書は,そのような心療内科の意義や目的,具体的なスキルなどを著者の豊富な経験をもとに初学者にもわかりやすく解説.生活習慣病をはじめとする幅広い疾患への対応能力やコミュニケーションスキルの向上など,日々の診療現場で必ず役に立つ知識が満載の書.
出版社からのコメント
お寄せいただいた書評をご紹介
本書は、心療内科の診療の核心を、専門外の医療従事者にも分かりやすく解説した一冊です。精神科との違いを明確にし、長年の経験から培われた著者の知見が凝縮されています。
本書の最も重要な概念は、「病態仮説」です。これは、患者の身体的・心理的・社会的な側面が複雑に絡み合って病態を形成するという、心療内科の基本である生物心理社会モデル(BPSモデル)に基づいています。過敏性腸症候群や片頭痛など、さまざまな心身症のケースがこの「病態仮説」として提示され、その背景にあるストレスや心理社会的要因が詳細に分析されています。治療の成功には、患者と医療者がこの仮説を共有し、共に理解を深めることが不可欠だと本書は強調します。また、この仮説はエビデンスに縛られず、治療の過程で柔軟に変化しうる点も特徴です。
心療内科の治療は多角的かつ包括的です。本書では、薬物療法や漢方薬に加え、さまざまな心理療法が紹介されています。動機づけ面接(MI)、認知行動療法(CBT)、自律訓練法、マインドフルネス、そして基本的な支持的精神療法など、患者の状態や生活背景に合わせて柔軟に組み合わせることで、最大の効果を引き出すことを目指しています。
さらに本書では、心療内科の診療における多職種連携の重要性を繰り返し述べています。患者のQOL向上を究極の目標とし、身体と心の両面から患者を支えることの重要性が本書全体を貫いています。また、未来の可能性として、予防医療や診断支援におけるAI活用についても言及されており、個別化された医療提供への期待が示唆されています。
心療内科の治療の最終目標は、単に症状を取り除くことではありません。本書が印象的に語るのは、患者が「心療内科を卒業」し、自らの健康を管理してより質の高い人生を送るための支援です。このプロセスは、患者が自己コントロール能力を獲得し、心身の健康を維持できるようになることを目指す、段階的なアプローチとして説明されています。
本書は、心療内科の複雑な概念を平易な言葉で解き明かし、患者中心の全人的医療を提唱する画期的な書です。心身のつながりを理解し、より良い治療選択を行うための指針を求める全ての人にとって、必読の一冊と言えるでしょう。
国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センター
副院長/心療内科 河合啓介