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書籍詳細

急変・蘇生チェックリスト ―エキスパートが実践している秘密のレシピ―

急変・蘇生チェックリスト ―エキスパートが実践している秘密のレシピ―

乗井達守 編著

A5判 352頁

定価6,600円(本体6,000円 + 税)

ISBN978-4-498-16654-7

2025年05月発行

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すべてのResuscitationist(蘇生家)に捧げます
心停止,脳梗塞,重症外傷などからの蘇生において,最初の数分から数時間の治療が患者の予後を大きく左右します.そのため一刻一秒を争う蘇生の現場では,明確に「やるべきことのリスト」とその「優先順位」を瞬時に把握する必要があります.本書では,まず “目標”と“公式”が提示され,それぞれの病態における蘇生の概観が理解できます.その次のページは見開きのチェックリストとなっています.このチェックリストは,危機的状況で医療者がすべきことが一目で確認でき,さらに付属のインデックスシールを用いることで,現場での使用感も抜群です.アートな側面もある蘇生医療において,エキスパートが実践する新感覚のマニュアルをぜひご覧ください.

すべてのResuscitationistのために

 本書を手にお取りくださりありがとうございます.これは,すべてのResuscitationist(蘇生家)に捧げる書籍です.“Resuscitationist”は,蘇生(Resuscitation)のプロフェッショナルを表す新しい言葉です.私が作ったものではなく,21世紀に入ってから少しずつ使われ始めた用語です.
 Resuscitationは,Re(再び),Suscitare(目覚める)というラテン語が語源になっています.“—ist”はご存じのとおり,それを行う人を指します.ここでいう蘇生とは,心停止はもちろんのこと,ショックや重篤な代謝異常など,死に瀕した状態から再び立ち上がることを意味します.英語圏でもまだ新しい言葉であり,日本ではほとんど耳にしないため,ここでは“蘇生家”と訳しています.“蘇生医”としなかった理由は,医師以外の方にもこれを目指してほしいという個人的な願いがあるためです.
 超急性期の治療と予後の関係がこれほど注目される時代はかつてありませんでした.“何をしても結果は同じ”だった場面が,アートと科学の両面で実力が問われる舞台に変わりつつあります.心停止,脳梗塞,重症外傷といった病態においては,最初の数分から数時間の治療が患者の予後を大きく左右します.医療者の一瞬の決断が,患者のその後の数十年を左右する可能性がある.そのような場面でベストでクールな医療を提供できるのが理想です.
 しかし,それは簡単なことではありません.実は私自身,最近は病院内のデータやIT関連の業務に携わる機会が多く,臨床の時間が激減しました.ほぼ毎日,朝から病院や大学のITスタッフや経営陣との話し合い,AmazonやMicrosoftといったIT企業との会議に追われ,週末の夜だけERで働く日々です.といっても基本的なことは忘れませんし,多くのことは調べれば解決できます.特に米国では電子カルテにCDS(Clinical Decision Support)が導入され,臨床現場でAIを活用できるようになりつつあります.それらの導入に関与していることもあり,純粋な知識という面では調べられないことがほぼなくなりました.当院にベータ版で導入しているソフトでは,ChatGPTのような形式で症例の情報を入力すると,その症例に応じた最新のエビデンスをもとにオンラインの論文や教科書とともに回答が得られます.わからないことがあっても,それで解決できることが増えました.
 しかし,一刻一秒を争う蘇生の現場では,まだ役に立たないことも多い.明確に「やるべきことのリスト」とその「優先順位」が瞬時にわからなければ困ります.
 このような状況は,航空機のパイロットが非常事態に直面するのと似ています.彼らには非常時に対応するための特別なマニュアルがコックピットに用意されていますが,私たち医療者にはそのようなものがありません.そこで考案したのがこの書籍です.目の前の患者が危機に瀕し,一瞬での判断が求められる場面で使える本を目指し,著者の皆様にはそのような状況を想定して執筆を依頼しました.
 そのため,本書にはいくつかの工夫を施しています.具体的には,各項の最初のページで[目標]と[公式]として,それぞれの病態における蘇生の概観を示しました.続いて見開き2ページの[チェックリスト]を掲載し,危機的状況で医療者がすべきことを一目で確認できるようにしました.付属のインデックスシールを[チェックリスト]のページ右端に貼れば,救急・蘇生の現場で即座に該当ページを開くことができます.そして[解説]ではピットフォールやエキスパートが実践している診療の極意,一歩進んだ治療やエビデンスなどを記載していただきました.
 本書の末尾には,蘇生医療をさらに向上させるための章を設けています.第42項では電子カルテによるClinical Decision Support(臨床意思決定支援システム),第43項では電子カルテを活用したデータ収集や質チェックの方法,第44項では蘇生医療におけるチーム医療とコミュニケーションを取り上げました.現場に満足せず,未来に向けて蘇生医療の質を高めるための内容です.日本の医療,特に蘇生医療の分野では軽視されがちな領域ですが,ITを活用してデータを収集・解析し,チームで医療に取り組まなければ,最高の医療を提供することはできません.
 内容には自信があります.日米の蘇生医療の臨床と教育でご活躍されている皆様に執筆をお願いしました.お忙しい中,快く執筆を引き受け,私の要望にも辛抱強く応えていただき心からの感謝の意を表します.
 最後に,企画段階から二人三脚でサポートしてくださり,多くの編集アイデアを提案してくださった中外医学社の桂様には,感謝の念に堪えません.また,途中から編集支援に加わり,最後の仕上げに尽力してくださった上村様にも深く感謝申し上げます.

2025年3月
乗 井 達 守

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Chapter 1 循環器  
 1 心停止   〈本間洋輔〉
 2 ショック(原因不明)   〈石丸忠賢・本間洋輔〉
 2a 出血性ショック   〈石丸忠賢・本間洋輔〉
 2b 敗血症性ショック   〈石丸忠賢・本間洋輔〉
 2c アナフィラキシーショック   〈本間洋輔〉
 3a 高血圧緊急症(全般)   〈木村信彦〉
 3b 高血圧緊急症(大動脈解離)   〈木村信彦〉
 4a 頻脈性不整脈   〈國谷有里・本間洋輔〉
 4b 徐脈性不整脈   〈國谷有里・本間洋輔〉
 5 心筋梗塞   〈國谷有里・本間洋輔〉

Chapter 2 呼吸器/気道  
 6 呼吸停止   〈深野賢太朗〉
 7a 気道異物による気道閉塞   〈高瀬啓至〉
 7b 急性喉頭蓋炎/上気道感染症   〈福田 有・深野賢太朗〉
 8 喘息重積発作   〈乗井達守〉
 9 COPD増悪   〈高瀬啓至〉
 10 喀血   〈福田 有・深野賢太朗〉

Chapter 3 代謝性/内分泌  
 11 高カリウム血症   〈奥永 綾・山中菜々美〉
 12 低ナトリウム血症   〈奥永 綾・山中菜々美〉
 13 甲状腺クリーゼ   〈大楠崇浩〉
 14 急性副腎不全(副腎クリーゼ)   〈大楠崇浩〉

Chapter 4 神経  
 15 意識障害   〈五十嵐 豊〉
 16 くも膜下出血   〈五十嵐 豊〉
 17 脳出血   〈五十嵐 豊〉
 18 脳梗塞   〈五十嵐 豊〉
 19 痙攣発作   〈五十嵐 豊〉

Chapter 5 中毒  
 20 急性アルコール中毒   〈山内素直〉
 21 過活動性せん妄(重度の興奮を伴う過活動性せん妄)   〈山内素直〉
 22 有機リン中毒   〈山内素直〉

Chapter 6 環境  
 23 熱中症   〈服部智弘・三宅 亮〉
 24 偶発性低体温症   〈服部智弘・三宅 亮〉

Chapter 7 産婦人科緊急  
 25 救急外来における経膣分娩   〈Trevor E Quiner・Yuika Norii〉
 26 産後出血   〈Trevor E Quiner・Yuika Norii〉

Chapter 8 新生児  
 27 新生児の心停止   〈阿部圭祐〉
 28 新生児の発熱   〈岩野仁香〉

Chapter 9 小児  
 29 小児の心停止   〈有野 聡・土屋宏人〉
 30 小児のショック   〈土屋宏人・有野 聡〉
 31 小児の発熱   〈土屋宏人・有野 聡〉
 32 小児の外傷   〈有野 聡・土屋宏人〉
 33 小児の呼吸不全   〈深野賢太朗〉

Chapter 10 蘇生手技  
 34 Rapid Sequence Intubation(RSI)   〈金 成浩〉
 35 Difficult airway   〈山田貴大・金 成浩〉
 36 気管挿管失敗時   〈山田貴大・金 成浩〉
 37 CV(中心静脈ルート)   〈下里アキヒカリ〉
 38 新生児のvascular access   〈阿部圭祐〉

Chapter 11 患者の意思と価値を尊重する蘇生の実践  
 39 宗教的無輸血を希望する患者への対応   〈石上雄一郎〉
 40 救急外来での蘇生中止の伝え方   〈石上雄一郎〉
 41 救急外来でのケアのゴールの話し方   〈石上雄一郎〉

Chapter 12 システム  
 42 電子カルテによるClinical Decision Support 〈藤森 遼・園生智弘・後藤匡啓〉 
 43 電子カルテによるデータ収集/質チェックの方法 〈藤森 遼・園生智弘・後藤匡啓〉 
 44 蘇生医療におけるチーム医療とコミュニケーション 〈小出智一・本間洋輔〉 

さくいん   

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執筆者一覧

乗井達守 ニューメキシコ大学救急部准教授(Associate Professor)/大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター招へい教員 編著
本間洋輔    千葉市立海浜病院救急科統括部長 
石丸忠賢    千葉市立海浜病院救急科医長 
木村信彦    マウントサイナイ医科大学集中治療科 
國谷有里    千葉市立海浜病院救急科医長 
深野賢太朗   自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科・集中治療部病院助教 
高瀬啓至    仙台市立病院救急科医長 
福田 有    自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科・集中治療部臨床助教 
奥永 綾    いしいケア・クリニック 
山中菜々美   いしいケア・クリニック 
大楠崇浩    大阪グランドクリニックHEPNAVIO 
五十嵐 豊   日本医科大学付属病院高度救命救急センター/日本医科大学救急医学教室講師 
山内素直    友愛医療センター救急科部長 
服部智弘    健和会大手町病院救急科部長 
三宅 亮    健和会大手町病院外科・副院長 
Trevor EQuiner Division of Maternal—Fetal Medicine,Department of Obstetrics and Gynecology,The University of New Mexico 
Yuika Norii     
阿部圭祐    ウェスリーメディカルセンター小児救急医 
岩野仁香    バリーワイズヘルス・メディカルセンター小児救急科副部長 
有野 聡    公立昭和病院救命救急センター 
土屋宏人    公立昭和病院救命救急センター 
金 成浩    大阪国際メディカル&サイエンスセンター大阪けいさつ病院ER・救命救急科医長 
山田貴大    刈谷豊田総合病院救急・集中治療部/麻酔科 
下里アキヒカリ 健和会大手町病院 副院長 麻酔・集中治療科 
石上雄一郎   飯塚病院連携医療・緩和ケア科医長 
藤森 遼    TXPMedical株式会社 
園生智弘    TXPMedical株式会社代表取締役 
後藤匡啓    TXPMedical株式会社 
小出智一    東京ベイ・浦安市川医療センター救急外来部門主任 

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