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書籍詳細

改めて症例から考える高齢者の自動車運転 ―基礎・臨床・リハビリテーション―

改めて症例から考える高齢者の自動車運転 ―基礎・臨床・リハビリテーション―

堀川悦夫 編著 / 朝田 隆 編著

A5判 198頁

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

ISBN978-4-498-22956-3

2024年08月発行

在庫あり

『高齢者の運転可否判断』 考えるための第一歩

高齢者の自動車運転による交通事故は大きな社会問題となっている高齢者が運転を継続するのか断念するのか,その臨床的判断は容易ではない.脳画像検査・神経心理検査・運転シミュレータ検査・実車運転評価などのエビデンスは限られているため,エキスパートたちが実際の症例にどのように対峙しているのか知ることは非常に有用である.本書では運転可否判断における基礎的知見から,臨床判断の進め方・考え方,さらには将来的な運転支援の在り方を示しており,本テーマにかかわる医療者にとっての必須の一冊となっている.



 もの忘れ外来などにおいて対象者の方の移動方法をうかがうと,自動車運転を継続している,あるいは,最近,免許を返納したという方がかなりを占めている.道路交通法において認知症などをはじめとする運転免許の欠格事由が規定され,該当する疾患の診断に至れば,患者の運転断念が必要となる.一方,治療可能な疾患による認知機能低下や脳卒中後遺症の回復期,そして軽度認知機能低下(MCI)が疑われる患者などに対して,半年後を単位とする経過観察後に運転可否判断が再実施される場合も多い.経過観察のケースにおいては,運転可否判断に悩む例も少なくない.
 このように臨床実践において運転可否判断は一つのキーポイントであるが,通常の診療時に行われる検査,脳画像検査等に加えて自動車運転と密接に関わると考えられる神経心理検査,そして可能な施設であれば運転シミュレータ検査や実車運転評価等を総合的に行っても,運転可否判断は容易ではない.医療現場で実施可能な検査と交通事故の予測性に関するエビデンスがかなり限られ,運転可否判断の定番と言える手法も未整備と言わざるを得ない.
医療現場における運転可否判断,その結果としての運転期間延伸や運転断念後の継続的な移動支援によるライフロングモビリティの実現が必要であり,モビリティ支援が患者諸氏の健康行動維持,そしてQOLの維持向上に密接に関連している.
 本書の構成は,まず,運転可否判断で依拠すべき基礎的知見を概括していただいた領域であり,加齢とワーキングメモリー,交通事故データベース,服薬の影響,警察庁交通局の見解などについてまとめていただいた.第2の領域は,臨床の先生方に,診断・治療そして運転可否を容易に判断できなかった例をご紹介いただき,同様の症例に遭遇された場合のご参考にしていただきたいと考えた領域である.さらに第3の領域として,運転期間延伸のための車両改造や,運転断念後の移施支援などについて専門の先生方にご見解を示していただいた.Maasやライドシェアの実現も必要であるが,臨床においては目前の患者や家族のモビリティ支援の実施が急務である.

 本書の編纂の過程で,中外医学社編集部,特に最もご担当いただいた桂様にはお力をいただき感謝申し上げます.また,分担執筆を頂いた先生方には刊行まで日数を要する中で,度重なる推敲や情報のアップデートに最後までご腐心いただきましたこと,深く御礼申し上げます.

 本書が何らかの形で高齢者の運転可否判断,モビリティ支援,そして健康行動の維持向上につながれば幸いである.

2024年7月
堀川悦夫
朝田 隆

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目次
1 加齢とワーキングメモリ 〈苧阪 直行〉
 1. ワーキングメモリとは?
 2. 空間と言語のワーキングメモリ
 3. 高齢者のワーキングメモリ
 4. 前頭葉とワーキングメモリ

2 高齢運転者対策の現状と課題(令和2年道路交通法改正を踏まえて) 〈岡本 努〉
 1. 高齢運転者による交通事故の発生状況
 2. 高齢運転者対策の現状
 3. 高齢運転者対策の課題

3 交通事故統計データからみた高齢運転者の交通事故の実態と解釈 〈小菅 英恵〉
 1. 分析方法
 2. 事故内容別事故当事者率の年齢層間比較
 3. 当事者別運転者死亡重傷率の年齢層間比較
 4. 考察:高齢運転者の交通事故の危険性とは

4 自動車運転にかかわる高齢者の身体機能 〈光武 翼,柊 幸伸〉
 1. 高齢者の身体機能
 2. 自動車運転にかかわる運動学的要因
 3. 自動車運転にかかわる身体機能

5 認知症,軽度認知機能低下と運転 〈朝田 隆〉
 1. 運転をやめるべきタイミング
 2. 認知症者の運転事故の疫学
 3. 運転に関与する脳領域
 4. 運転技能と脳機能の関係
 5. 認知症者の危険運転の予測因子
 6. 運転を止めてもらう
 7. 医師による運転を止めるためのアドバイス

6 自動車運転と高齢者の視機能(1)〔検査編〕 〈潮井川 修一,吉冨 健志〉
 1. 高齢者の交通事故
 2. ヒトの視覚情報処理—ものが見える仕組み—
 3. 運転に関連する視機能とその評価

7 自動車運転と高齢者の視機能(2)〔疾患編〕 〈國松 志保〉
 1. 視覚障害と運転免許
 2. 加齢と視野障害
 3. 視野障害と自動車事故
 4. ドライビングシュミレータを用いた検討
 5. 高齢ドライバーの自動車運転を考えるにあたって注意すべき点

8 薬効と運転 〈岡村 信行,中村 正帆〉
 1. 自動車運転に影響する可能性のある薬物
 2. 薬物相互作用の問題

9 医療現場における運転断念勧告とその後の経緯 〈井手 芳彦〉
 1. はじめに
 2. 認知症診断直後に患者や家族に伝えるべきこと
 3. どの程度の割合で免許を自主的に返納するのか
 4. 免許返納で患者本人・家族が困ること,運転に際して注意していること
 5. 免許返納率は年齢と関係するのか
 6. 自主返納率は認知症の程度と関連するのか
 7. 実際の事例を紹介する
 8. 免許を返納した人への支援

10 脳卒中後遺症患者の運転再開における神経心理学的検査の活用 〈安藤 志穂里〉
 1. 標準失語症検査(SLTA),WAB失語症検査日本語版
 2. BIT行動性無視検査日本版(BIT)
 3. Wechsler成人用知能検査(WAIS)
 4. 脳卒中ドライバーのスクリーニング評価日本版(J-SDSA)
 5. Trail Making Test(TMT),Trail Making Test日本版(TMT-J)
 6. Rey-Osterriethの複雑図形検査(ROCFT)
 7. コース立方体組み合わせテスト(Kohs Block Design Test)
 8. レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)
 9. 標準注意検査法(CAT)
 10. Wechsler Memory Scale-Revised(WMS-R)
 11. 日本版RBMTリバーミード行動記憶検査(RBMT)
 12. Frontal Assessment Battery(FAB)
 13. 日本版BADS遂行機能障害症候群の行動評価(BADS)
 14. Mini-Mental State Examination(MMSE)
 15. 改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)
 16. Montreal Cognitive Assessment(MoCA),Japanese version of Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)

11 運転期間延伸の諸方策の検討—運転リハビリテーションを中心に— 〈堀川 悦夫〉
 1. 組織
 2. 対象となる疾患
 3. 主な手法や範囲
 4. 支援の具体例
 5. 広範な組織との連携
 6. 高齢者や医療的ケアを必要とする方のための運転リハビリテーション
 7. 車両改造
 8. 活動の支援体制と研修制度の充実
 9. 倫理綱要の策定
 10. 結語

12 脳血管障害からの運転再開の判断基準 〈渡邉 修〉
 1. 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の運転能力を阻害するメカニズム
 2. 運転を阻害する高齢者特有の問題
 3. 当院における自動車運転能力評価

13 職業運転者の運転可否判断と復職支援 〈一杉 正仁〉
 1. 疾病がある人の復職
 2. 職業運転者の職場環境
 3. 疾病患者と復職
 4. 自動車運転再開に影響する要因
 5. 職業運転への復帰を考えるうえで必要なこと
 6. 職業運転者の復職を判断する際に行うべきこと
 7. 事業所が躊躇する点

14 指定自動車教習所が高次脳機能障害者に対して実施可能な指導と評価の分析法 〈岩城 直幸〉
 1. 高次脳機能障害者の運転再開を検討する上で留意すべき点
 2. 高次脳機能障害者の運転再開に向けた評価の方法
 3. 実車指導の方法
 4. 高次脳機能障害者の運転再開に向けた評価の分析法

15 運転再開に有効な車両改造の例 〈井手 將文,川島 正輝,堀川 悦夫〉
 1. 運転補助装置
 2. 運転者の乗降支援装置および姿勢保持具
 3. 車いすの搬入出装置
 4. 安全運転サポート車をはじめとする運転支援システムとの併用

16 自動車運転にかかわる社会制度 〈中根 裕〉
 1. 自家用自動車を活用した運送形態の仕組み
 2. 公共交通機関と地域の移動ニーズとの乖離と自助・互助の運送形態の推進

17 脳卒中,認知症など運転可否判断が要求される疾患に関する規制と国際比較 〈岩井 智子,堀川 悦夫〉
 1. 認知症および/または認知機能に影響を及ぼす何らかの器質性症候群
 2. てんかん・発作
 3. 神経発達障害(注意欠如多動症,自閉スペクトラム症)
 4. 脳卒中,一過性脳虚血発作(TIA),および中心静脈血栓症(網膜動脈閉塞症を含む)
 5. 最低視力基準,視野,白内障,単眼視,視野障害,複視,夜盲症,色覚異常,眼瞼痙攣,眼振

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執筆者一覧

堀川悦夫 福岡国際医療福祉大学医療学部視能訓練学科教授 編著
朝田 隆 メモリークリニックお茶の水理事長・院長 編著
苧阪直行  京都大学名誉教授/日本学士院会員 
岡本 努  元警察庁交通局 運転免許課高齢運転者等支援室長 
小菅英恵  交通事故総合分析センター 研究部研究第一課 主任研究員 
光武 翼  佐賀大学医学部附属病院 臨床研究センター 特任准教授 
柊 幸伸  国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科 教授 
潮井川修一  福岡国際医療福祉大学医療学部 視能訓練学科 助教 
吉冨健志  福岡国際医療福祉大学医療学部 視能訓練学科 教授 
國松志保  西葛西・井上眼科病院 副院長 
岡村信行  東北医科薬科大学医学部 薬理学教室 教授 
中村正帆  岩手医科大学薬理学講座 病態制御学分野 教授 
井手芳彦  佐世保中央病院 認知症疾患医療センター 顧問 
安藤志穂里  札樽病院 リハビリテーション科 部長 
渡邉 修  東京慈恵会医科大学附属第三病院 リハビリテーション科 教授 
一杉正仁  滋賀医科大学社会医学講座 法医学部門 教授 
岩城直幸  水原自動車学校 副校長 
井手將文  熊本高等専門学校 地域協働プロジェクトセンター 特命教授 
川島正輝  カワシマオートウイング 代表 
中根 裕  特定非営利活動法人全国移動サービスネットワーク 理事長 
岩井智子  福岡国際医療福祉大学医療学部 技術補佐員(医療通訳サポーター) 

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