はじめに
近年の医学・医療の急速な進歩を受けて,臨床検査の領域でも目ざましい発展が続いている.医療保険に収載されていない臨床検査項目までを含めると,検体検査だけでも1,700を超える項目があり,しかも毎年10項目以上にのぼる臨床検査が付け加えられている.生理機能検査も同様に夥しい数の検査項目があり,新しい検査項目が付け加えられている.
臨床検査は,病態を解析し,疾患の正確かつ精密な診断に結びつく重要な情報を提供する.さらに,治療中や治療後の患者で,治療効果を判定したり,副作用のモニターとしても大切な役割を担っている.現代の医療は,臨床検査なくしては成立しないとさえいえる.こうした背景から,臨床検査の項目が増え続けているのは自然の帰結かもしれない.実際,臨床検査の有用性が認識され,保険収載される項目も増加の一途をたどっている.
さて,臨床検査を活用するにあたっては,それぞれの内容を充分に理解し,適切に選択し,その上で医療に応用することが要求されよう.しかし,これだけ膨大な数の臨床検査項目をあまねく理解しておくことは至難である.机上もしくは診療室や検査室の現場で常に活用できる事典が望まれる.こうした要請を受けて,「臨床検査小事典」を編纂することにした.
本事典では,現在の医療で頻用される臨床検査項目を中心に,概念,意義,検査方法,基準値,異常値の解釈などを解説した.特に重要な検査項目は色文字で明記し,解説も充実させた.臨床医学の現場で必要な臨床検査項目は網羅していると確信する.
臨床医学に携わる医師,臨床検査技師はもちろんであるが,看護師,薬剤師,栄養士など多くのコメディカルの方々にも利用を勧めたい.EBM(根拠に基づく医療)を実践する上で臨床検査は不可欠である.それぞれの臨床の現場で本事典をぜひ活用していただきたいと思う.また,臨床検査技師を目指して学習に励む学生諸君にも活用していただきたいと願う.臨床実地実習の際にはきっと役立つであろう.
本事典の企画・編集には中外医学社編集部の多大なご協力をいただいた.膨大な数の臨床検査項目を精選し,かつわかりやすく解説するにあたってのご助言をいただいた.ここに深謝する.
2002年 初秋
奈良信雄