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書籍詳細

ひとりでも書ける症例報告 クリニカルピクチャー論文のすすめ

ひとりでも書ける症例報告 クリニカルピクチャー論文のすすめ

鹿野泰寛 著

A5判 240頁

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-10924-7

2024年06月発行

在庫あり

クリピクが書けると日常診療も楽しくなる! 



自身が経験した症例を100〜300語程度で臨床画像を添えてまとめるクリニカルピクチャーは,「隙間時間で書ける」「症例の振り返り学習になる」「コツがわかれば量産できる」「学業業績にもなる」と良いことづくめですが,Acceptに至るにはCase reportとは異なるノウハウが必要です.本書では,症例選び, 同意書の取得やfigure編集, 型にはめた書き方やChatGPT有効活用法, revision/reject時の対応,頻出英語表現の紹介や秘伝資料の公開など,JAMAやBMJなどに約50本の掲載経験を持つ著者が培ったノウハウをもとに徹底解説します.

まえがき
 
 “Always note and record the unusual... Publish it. Place it on permanent record as a short, concise note. Such communications are always of value.”
 「変わったことはないか常に注意を払い,あれば記録しなさい……そして出版するのです.短く簡潔な記録として,後世に残しなさい.そのような伝承は,常に価値のあるものです」
 – Sir William Osler
 
 たった100〜300語程度で書けてしまうクリニカルピクチャーは,英語論文デビューの取っかかりとしても,多忙な臨床医が隙間時間で論文を量産するツールとしても最適です.自身が経験した教訓的な症例をエビデンスを交えてコンパクトにまとめ,論文として形に残す.個人の経験を世界の知的財産に昇華できることはもちろん,他人にその意義が理解できるようにわかりやすく文章を書くことは,自分自身の症例に対する理解を十分に得られたことの確認にもなります.
 そんな素晴らしいクリニカルピクチャーですが,問題はその書き方を基本のキから教えてくれる指導医があまりいないことです.書店の医学書の学術コーナーを見ても,論文指南書はたくさんありますが,その多くは臨床研究を対象としたものです.一部に症例報告を扱った書籍もありますが,クリニカルピクチャーに関して十分な解説をしている書籍はこれまでありませんでした.
 本書はクリニカルピクチャーを書くことに特化した初の書籍です.論文を一度も書いたことがなく,英語が苦手で,周りに良い指導者がいないとしても,大丈夫です! 本書があれば,一人でクリニカルピクチャーを書き,海外誌に論文をAcceptさせることができるようになります.
 
 筆者は,総合病院で内科レジデントとして勤務しながら,教育的な症例をクリニカルピクチャーとして医学雑誌に投稿し,学習したことを形に残すことを繰り返してきました.ベッドサイドで患者さんから得た学びや感動を形に残しつつ,一人の臨床医の足跡として刻んでいくのに,クリニカルピクチャーは最適と感じたからです.症例を経験し,文献を読んで学びを深め,その学びをクリニカルピクチャーとして論文報告し学びの足跡として刻印するというサイクルは,今となっては自分にとってなくてはならない学習習慣となり,気付くとクリニカルピクチャーの掲載数は50本近くになっていました.その中には,JAMAやBMJといったトップジャーナルへの掲載も含まれます.出版を重ねていくうち,知り合いの先生からクリニカルピクチャーについて相談されたり,共著での指導を依頼されたりするようになりました.そうして共著してきた論文のほとんども海外誌にAcceptされた経験から,自分のクリニカルピクチャーの作成ノウハウは他の医師にも役立つものと確信し,本書を書くことにしました.
 
 本書は,クリニカルピクチャーはもちろん,論文自体を一度も書いたことがない初学者を念頭に置いて書きましたが,既に何度かクリニカルピクチャーの執筆経験がある指導医にとっても十分参考になる内容だと自負しています.読者の症例がAcceptされることが本書のゴールと考え,実践的な内容に絞って記載することを心がけました.先生方の臨床経験と患者さんの闘いの記録が,クリニカルピクチャーという形で昇華され,貴重な臨床記録として医学史に残っていくことに,本書が少しでもお役に立つことを願っています.
 
 最後になりますが,論文執筆のいろはを教えていただいた原田侑典先生,本田仁先生,英語の相談に度々乗ってくれた唐木田恵先生,本書の執筆を後押ししてくださった綿貫聡先生,そして中外医学社の岩松宏典様と中村文様に,この場を借りて御礼申し上げます.
 
 
2024年4月
鹿野泰寛

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目次

1 クリニカルピクチャーとは
 1. クリニカルピクチャーと一般的なケースレポートの違い
 2. Acceptされるクリニカルピクチャーの4つの条件
 3. クリニカルピクチャーのトピックは6つのカテゴリに分類できる
  COLUMN 1「稀少性」と「新規性」の違い,
      「稀少性」と「教育的」の関係
 4. クリニカルピクチャーにできる症例を見つけるためには
  COLUMN 2 クリニカルピクチャーにできる症例に遭遇する頻度

2 同意書の取得
 1. 同意書はいつ取るか
 2. 同意書を取る際に気を付けること
 3. 同意書の書式は何を使うか
 4. 主要ジャーナル別の注意点
  COLUMN 3「医学論文は医者くらいしか読みません」のウソ

3 下準備をしよう
 1. 共著者を決める
 2. 投稿先を選ぶ
  COLUMN 4 Rejectされて良かった……
  COLUMN 5 慣れてきたら専門ジャーナルも選択肢に
 3. 文献リサーチで「過去問研究」を行う
 4. 材料となるエビデンスを集める

4 原稿を書こう
 1. タイトルページを書く
 2. Case presentationを書く
  COLUMN 6 英語を書くのにChatGPTをフル活用しよう
 3. Discussionを書く
  COLUMN 7 長めのDiscussionを書く時はパラグラフライティングを意識しよう
 4. Referenceを書く
 5. Figure legendを書く
 6. 完成原稿の例

5 Figureを準備しよう
 1. Figureの元画像を準備する
 2. Figureの編集ですべきこと4つ
 3. 「300 dpi問題」の解決方法
 4. 適切なトリミング
 5. 画像同士を組み合わせる
 6. 画像データを保存する
 7. 文字や矢印などのマークで注釈を加える

6 Cover letterとCOIフォームを準備しよう
 1. Cover letterを準備する
 2. COIフォームを準備する

7 クリニカルピクチャー執筆に有用なウェブサイト,アプリ

8 クリニカルピクチャーで使う頻出英語表現集
 1. 主訴・現病歴(出だし)
 2. 現病歴の補足
 3. 既往歴/内服歴/家族歴/生活歴
 4. バイタルサイン・身体所見
 5. 検査結果
 6. 診断の記述
 7. 治療内容と経過
 8. 考察
 9. タイトル
 10. 特殊なReferencesの引用文献の書き方
 11. 本文以外の記載事項(Figure legends/Acknowledgement/Contribution statement/Patient consent)

9 論文を投稿しよう
 1. 英文校正に出す
 2. Submission pageに行く
 3. ジャーナルのアカウントを作る
 4. 論文をアップロードして投稿する
 5. 果報は書きながら待て

10 Rejectだったら
 1. 最も大事なことは,諦めずに出し続けること
 2. すぐに次のジャーナルへ投稿しよう

11 Revisionだったら
 1. Response letterを書く
  COLUMN 8 諦めなければきっと文献は見つかる
 2. 修正版の原稿を書く
 3. Revision用のCover letterを書く

12 Accept後の流れ
 1. Proofの確認
 2. プレリリース→本掲載
  COLUMN 9 スパムメールに関して

13 クリニカルピクチャーQ&A

14 クリニカルピクチャーの秘伝資料集
 1. GIM領域のクリニカルピクチャー掲載雑誌一覧表(再掲)
 2. 主要ジャーナル別の書式フォーマット
 3. Cover letterの雛形フォーマット
 4. ジャーナル別の傾向と対策&投稿規定のポイント解説
  COLUMN 10 トップジャーナルの方が初心者でも通ってしまう可能性がある?

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執筆者一覧

鹿野泰寛 東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科 著

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