気管支喘息診療マニュアル
永井厚志 他編著
A5判 190頁
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
ISBN978-4-498-03124-1
2000年01月発行
在庫なし
気管支喘息診療マニュアル
永井厚志 他編著
A5判 190頁
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
ISBN978-4-498-03124-1
2000年01月発行
在庫なし
喘息患者を前にして適切な診断,病態の把握を行い,今日とりうる最善の治療を施行するための診療の実際に焦点を絞りまとめたハンドブック.診断の手順,問診のコツ,身体所見のとり方,臨床検査,治療の基本的な考え方,急性発作の対策と治療,日常管理そして疫学と病態までを実践的に解説した.
序
気管支喘息は,小児成人を問わずその罹患率が上昇し続け,呼吸器領域では最重要疾患の一つに挙げられています.この疾患動向を背景にして,1990年代に入り各国で喘息診療のガイドラインが相次いで作成されました.これらのガイドラインでは,喘息診断に関して診断が的確になされていないことが指摘されています.また,治療面では,近年における病態の解明の進歩に相まって,気道の拡張とともに気道炎症をいかに制御するかに焦点が絞られ,ステロイド吸入療法の地位が確立されました.さらに,抗アレルギー薬に代表される新規薬剤の開発により治療成績が向上し,入院患者数は減少傾向を示しています.しかし,この喘息治療の著しい進歩のなかで,本邦における喘息死は年間5,000〜6,000人を数え,一向に減少する気配がみられません.ここに喘息管理の難しさと今後に残された大きな課題があります.
本書は,喘息患者を前にして適切な診断,病態の把握を行い今日とりうる最善の治療を施行するための実際に焦点を絞り作成されました.したがって従来のテキストとは異なり,冒頭から診断手順の解説がなされ,その後に治療選択,維持管理法が続き,疫学や病態は後の項目になっています.各項目を詳細に読まれた方は,それぞれで重複した内容に気づかれるかもしれません.この重複した内容こそが喘息診療の要であるため,あえて本書では割愛せずにそのまま掲載させていただきました.したがって,必要とされるいずれの項目のみを読まれても充分に診療の実をあげられる内容になっていることと思います.本書が,実用の一冊として今日の医療にいささかでも貢献できればと念じる次第です.
最後に,本書の編集に多大なるご尽力をいただいた中外医学社小川孝志氏に深く感謝いたします.
1999年11月
永井厚志
田村 弦
目 次
I.気管支喘息の診断
A.喘息診断の手順〈永井厚志〉
1.喘息診断へのステップ
2.喘息を疑うヒント
3.喘息の診断手順
4.症状からの診断手順
5.呼吸機能からの診断手順
6.初見での重篤度判別と注意点
7.喘息診断の要点
B.問診のコツ〈玉置 淳〉
1.主訴―症状の強さと頻度
a.喘鳴,発作性の呼吸困難,咳嗽,胸苦しさ,喀痰
b.鼻水,鼻閉,鼻茸など鼻症状,アトピー性皮膚炎の合併
2.症状発現の状況
a.発症年齢
b.気道感染(感冒など)をおこしていたか
c.季節性か通年性か
d.前駆症状(皮膚のかゆみやくしゃみ,鼻水など)の有無
e.気候の変化
f.吸入抗原への曝露
g.特定の場所で起きるか
h.薬 剤
i.食 物
j.職業,職歴
k.環境の変化(転居,旅行など)
l.運 動
m.感情の変化
n.身体疲労
o.内分泌的影響
p.アルコールの摂取
3.過去の症状
4.症状と生活状況
a.住宅環境
b.居住内環境
c.ペットの有無
d.喫 煙
e.大気汚染物質
5.アレルギー素因を中心とした家族歴
6.既往歴
C.身体所見のとり方〈安井修司〉
1.全身の観察(視診)
a.患者の体位
1)起坐位(起坐呼吸)
2)側臥位
b.胸郭の形態
c.呼吸状態
d.頸部の視診
e.バチ状指
f.チアノーゼ
g.浮 腫
h.皮膚所見
2.触 診
3.脈拍(ことに奇脈の有無)
4.打 診
a.打診音の種類
b.肺の境界
5.聴 診
a.気管音
b.気管支呼吸音
c.気管支肺胞音
d.肺胞呼吸音
6.副雑音
a.連続(性ラ)音
1)低音性連続音(いびき音)
2)高音性連続音(笛音)
3)スクウォーク
b.断続(性ラ)音
1)細かい断続音(捻髪音)
2)粗い断続音(水泡音)
c.肺外からの異常呼吸音―胸膜摩擦音
d.頸部聴診
e.強制呼出法
f.息を非常にゆっくりと呼出させる方法
D.臨床検査
1.喘息診断のための検査〈田窪敏夫〉
a.血液一般検査
b.アトピー素因
c.喀痰検査
1)Charcot-Leyden結晶体
2)Curschmann螺旋体
3)気管支上皮の塊状剥離であるCreola体
d.胸部X線(単純X線,CT)
e.呼吸機能検査
1)スパイロメトリー
2)フローボリューム曲線
3)肺気量分画
4)気道抵抗
5)肺拡散能
6)換気力学
7)クロージングボリューム
8)動脈血ガス分析
9)ピークフロー
f.気道過敏性試験
1)標準法
2)連続吸入法(アストグラフ法)
2.喘息発作の誘因のための検査〈近藤光子〉
a.IgEと特異抗体
1)総IgE
2)抗原特異的IgE抗体
b.皮膚テスト
1)プリック法とスクラッチ法
2)皮内テスト
3)アナフィラキシーショックに対する対応
c.抗原吸入誘発試験
1)実施方法
2)成績の評価
d.アスピリン喘息誘発試験
e.運動誘発試験
f.アルコール負荷試験
g.食餌性因子
h.環境因子
1)室内アレルゲン
2)ペット
3)居住環境
4)職 業
II.気管支喘息の治療
A.喘息治療の基本〈田村 弦〉
1.基本的な認識
2.抗喘息薬の位置づけ
3.薬剤投与経路
4.薬物療法の基本
5.治療の評価
6.治療の目標
7.患者への説明
B.急性発作の対策と治療法〈岩崎 正〉
1.医療機関受診までの対処と注意点
2.急性発作時の重症度別治療法
a.軽症発作
b.中等症発作
c.大発作
3.治療反応性による重症度の判別法
4.重積発作の対処
a.重積発作時の治療
b.気管内挿管の基準
c.気管内挿管・人工呼吸器管理に伴う合併症と注意点
5.入院治療のタイミング
6.入院中の治療
a.急性期の治療
b.短期大量療法とともに行う治療
c.改善の経過
d.全身性ステロイド投与による副作用
e.短期大量後の治療
f.短期大量療法後の注意点
g.短期大量後安定しない患者の管理
h.経口ステロイドの継続投与を余儀なくされる症例
7.退院のタイミング
C.喘息の日常管理
1.誘因とその対策〈佐野公仁夫〉
a.抗原物質
b.運 動
c.喫煙曝露
d.感 染
e.大気汚染
f.気 象
g.入 浴
h.飲 酒
i.生 理
j.薬 剤
k.鼻疾患
l.食 品
2.重症度による日常管理〈大河原雄一〉
a.喘息の日常管理の目標
b.喘息管理治療薬
1)ステロイド薬
2)徐放性theophylline薬
3)β2刺激薬
4)抗アレルギー薬
5)吸入抗コリン薬
c.重症度別による薬物管理法
1)軽症例の薬剤選択
2)中等症例(中等症持続型 ステップ3)の薬剤選択
3)重症例(重症持続型 ステップ4)の薬剤選択
3.薬剤ステップアップ・ステップダウン〈近藤光子〉
a.喘息コントロールと目標
b.喘息長期管理の4段階
1)軽症間欠型喘息 ステップ1
2)軽症持続型喘息 ステップ2
3)中等症持続型喘息 ステップ3
4)重症持続型喘息 ステップ4
c.ステップアップとステップダウン
4.ピークフロー測定による喘息の管理〈玉置 淳〉
a.ピークフローの測定方法
b.ピークフローの評価
c.ピークフロー値のゾーンを用いた喘息管理
d.重症度分類
5.ステロイド薬の使用法〈青柴和徹〉
a.気管支喘息治療におけるステロイド薬の位置づけ
b.ステロイド薬の作業機序
c.吸入ステロイドの臨床効果
d.ステロイド薬の使用法
1)吸入ステロイド
2)全身性ステロイドの使用法
6.β2刺激薬の使用法〈青柴和徹〉
a.気管支喘息治療薬としてのβ2刺激薬の位置づけ
b.β2刺激薬の使用法
1)長期管理薬としての使用法
2)発作治療薬としての使用法
3)使用上の注意
7.theophyllineの使用法〈青柴和徹〉
a.気管支喘息治療薬としてのtheophyllineの位置づけ
b.theophyllineの使用法
1)長期管理薬としての使用法
2)発作治療薬としての使用法
8.抗アレルギー薬の使用法〈青柴和徹〉
a.気管支喘息治療における抗アレルギー薬の位置づけ
b.抗アレルギー薬の使用法
1)化学伝達物質遊離抑制薬
2)ヒスタミンH1拮抗薬
3)トロンボキサンA2合成阻害・拮抗薬
4)ロイコトリエン拮抗薬
5)Th2サイトカイン阻害薬
9.喘息の教育入院〈安井修司〉
10.妊娠と喘息〈安井修司〉
a.母体の肺機能と胎児発育の客観的評価
b.身のまわりにある増悪因子を避けたりコントロールすること
c.薬理学的治療
1)軽症・間欠的喘息
2)中等症の喘息
3)重症喘息
4)妊娠喘息の急性・重症発生時の処置
d.患者教育
11.手術と喘息〈安井修司〉
a.術前評価
b.前投薬
1)不安感のコントロール
2)術中気管支攣縮の予防
c.麻酔の導入
d.神経筋遮断薬
e.麻酔の選択
f.術中の気管支攣縮
g.術後管理
D.気管支喘息の疫学〈山脇 功〉
1.気管支喘息の罹患率・有症率とその推移
a.成人喘息
b.小児喘息
c.職業喘息
d.アスピリン喘息
e.世界での喘息羅患率と推移
2.喘息受診患者数とその推移
3.喘息罹患率増加の原因
4.喘息患者の発症年齢
a.成人喘息の発症年齢
b.小児喘息の発症年齢
5.喘息死
a.全年齢層での喘息死亡率とその推移
b.5〜34歳での喘息死亡率とその推移
c.日本での成人喘息死亡率とその推移
d.日本での小児喘息死亡率とその推移
e.喘息死の病態・誘因・原因
f.薬剤による死亡率への関与
6.疫学調査の問題点
E.気管支喘息の病態とその対策〈田村 弦〉
1.発症機序
a.喘息罹患機序
b.発作発症機序
2.気道過敏性と対策
3.可逆性気道閉塞と対策
4.気道炎症と対策
5.気道リモデリング(慢性化)と対策
索 引
執筆者一覧
永井厚志 他編著
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