CPX・運動療法ハンドブック 改訂5版
心臓リハビリテーションのリアルワールド
安達 仁 編著
B5判 398頁
定価6,820円(本体6,200円 + 税)
ISBN978-4-498-06746-2
2023年09月発行
在庫あり
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CPX・運動療法ハンドブック 改訂5版
心臓リハビリテーションのリアルワールド
安達 仁 編著
B5判 398頁
定価6,820円(本体6,200円 + 税)
ISBN978-4-498-06746-2
2023年09月発行
在庫あり
CPXを利用しつくして心臓リハビリテーションを極める
運動生理学・心機能・薬剤の関与の正しい理解と,機器の較正から実施・解釈まで様々な注意を要するCPXについて,この1冊でデータをうまく読み解き心疾患の適切な治療方針を自信をもって決められるようになる!
改訂5版の序
CPX・運動療法ハンドブック初版が2009年に出版され,すでに14年が経過しました.その間,学会や論文でCPX関連の報告を多数行い,CPX関連の講習会も何回も開催し,CPXの発展と普及に努めてまいりました.その結果,最近では,少なくともCPXという検査名を知らない医療者は減少し,だいぶ普及してきたと思っております.
心臓リハビリテーション学会のガイドラインでも,運動療法実施前にCPXを実施することが推奨されています.実際に,CPXを用いて運動処方を作成したり,高強度運動を実施する際や重症心不全に運動療法を実施する際に運動の安全性を確認したりする施設が増えております.また,CPXの結果を生活指導に活かしているという施設も増加しています.最近では,CPXは心臓リハビリテーションに欠かせないツールになったと思います.
しかし,CPXはパラメータが多く,また,データを理解するためには運動生理学や循環動態を理解している必要があります.そのため,CPXを勉強しようとすると,これらの理解を要求され,その時点で辟易してしまい頓挫してしまうこともあるようです.心機能そのものが複雑である上に,運動という要素がからみ,それにさらに薬剤が関与してくるため,運動に対する生体の応答性は人によりさまざまになり,CPXの解釈が一筋縄ではいかなくなってしまいます.しかし,それを理解すると,途端に目の前が開けた感じで,CPXがただ運動処方を作成するためのものではなくなり,患者の病態を理解して治療方針を決定するために変わります.是非,CPXを心疾患治療に活かせるよう,理解を深めて頂きたいと思っています.
CPXは機器の校正から実施・解釈まで,様々な注意を要する検査です.しかし,CPXのデータをうまく読み解くと,すべてではありませんがかなりの数の心疾患の適切な治療方針を自信をもって決められるようになります.本書が,CPX理解の助けになればと祈っております.
最後に,CPXの祖とも言えるカールマン・ワッサーマン先生が2020年6月22日に93歳で亡くなられました.心からご冥福をお祈りします.みんなでCPXを盛り上げましょう.
2023年8月
群馬県立心臓血管センター
安達 仁
目 次
第1章 CPXの特徴と目的〈安達 仁〉
1 CPXでわかること
A CPXの3つの特徴
B 対象患者
C CPX有効活用のために必要な他の検査
2 他の負荷試験との相違点
3 CPXの測定項目
第2章 CPXの準備1〈小林康之〉
1 呼気ガス分析装置
A ガス分析計の校正(キャリブレーション)
B 流量計(フローセンサー)の校正(キャリブレーション)
C 日常管理(精度管理)
D 呼気ガス分析器の検定
2 負荷装置
A サイクルエルゴメータ(エルゴメータ)
B トレッドミルエルゴメータ(トレッドミル)
3 フェイスマスクとマウスピース
A フェイスマスク
B マウスピース
C 使用後の洗浄・感染対策
4 室内環境
5 負荷試験時に用意するもの
A 緊急事態への準備
6 呼気ガス分析装置のモニター画面の設定
第3章 CPXの準備2〈上田正徳〉
1 電極の貼りかた
A 事前準備
B 電極とコード
C 誘導法
2 検査開始前の説明・確認
3 運動負荷試験の禁忌
4 運動負荷試験中止基準
5 心電図異常陽性基準
A ST-T変化
B 不整脈
6 負荷試験中の注意点─呼吸法,漏らさないコツ─
A 呼吸法
B 顔の向き(センサの向き)
7 ウォームアップ,クールダウンの意味
8 患者の異常と考える前に─おしゃべり,呼気ガス分析装置の異常─
9 運動中の心拍出量および血管拡張能の測定
10 運動負荷中の呼吸パターン
第4章 運動中の生体応答〈安達 仁〉
1 自律神経,セントラルコマンド
A 安静時
B 運動中
C 心疾患時の変化と心臓リハビリテーションの影響
2 心拍数
A 安静時
B 運動中
C 心疾患時の変化と心臓リハビリテーションの影響
3 血圧
A 安静時
B 運動中
4 血管径
A 安静時
B 運動中
C 心疾患時の変化と心臓リハビリテーションの影響
5 心拍出量
A 安静時
B 運動中
C 心疾患と心臓リハビリテーションの影響
6 換気応答
A 安静時
B 運動中
C 心疾患および心臓リハビリテーションの影響
7 心内圧
A 肺動脈楔入圧(PAWP),左室拡張末期圧(LVEDP),拡張期肺動脈圧(dPAP)
B 収縮期肺動脈圧(sPAP)
第5章 CPXの主要なパラメータ
1 VO2 〈安達 仁〉
A 生体の酸素利用・酸素摂取量
B VO2に影響を与える因子
C AT(anaerobic threshold;嫌気性代謝閾値)
D RCP(respiratory compensation point:呼吸性代償開始点)
E peak VO2
F AT,peak VO2の標準値
G 「(・)ドット」について
2 Oscillatory ventilation(EOV)
3 酸素脈〔VO2/HR, oxygen pulse(O2P)〕
4 PetCO2,ETCO2
5 TV-RR関係
6 RR threshold
7 Ti/Ttot
8 呼吸予備能
9 OUES
10 ΔHR/ΔVO2
11 VE/VCO2,VE vs. VCO2 slopeについて 〈村田 誠〉
12 TV/RRグラフとTV/RR ratio
第6章 ランプ負荷試験の実際〈安達 仁〉
1 ランプ負荷強度設定法
2 安静時に見るべきポイント
A 心電図,血圧
B 心拍数
C 酸素摂取量(VO2)
D 二酸化炭素排出量(VCO2),ガス交換比(R)
E VE/VCO2
3 ウォームアップ
A 持続時間と強度決定法
B 酸素摂取量(phase I,phase II,τon)
C VE/VO2,VE/VCO2の変化
D 心拍応答
4 ランプ負荷中に得られる指標
A 酸素摂取量
B 諸パラメータの典型的変化パターン
C VO2,VCO2,VEの関係
5 回復期
A VO2/HRのjump up phenomenon(ジャンプアップ現象)
B VO2(τoff,タウオフ)
第7章 9パネルの読み方とパラメータの意義〈安達 仁〉
パネル1 VE(minute ventilation,分時換気量)
パネル2 VO2/HRとHR
パネル3 VO2,VCO2
パネル4 VE vs. VCO2 slope
パネル5 V-slope
パネル6 VE/VCO2,VE/VO2のトレンドグラフ
パネル7 TV/VE関係
パネル8 ガス交換比(R)
パネル9 ETCO2,ETO2のトレンドグラフ
第8章 パラメータを組み合わせた評価法〈安達 仁〉
1 %ATと%peak VO2の関係
2 %peak VO2 vs. %peak WR
3 % VO2 vs. % VO2/HR
4 % peak WR vs. % VO2/HR
5 ETCO2
6 %peak VO2と%VE/VCO2(VE vs. VCO2 slope)の関係 (cardio-muscle panel)
7 VE/VCO2とVE vs. VCO2 slope
第9章 CPXの臨床応用〈安達 仁〉
1 運動耐容能評価
2 運動処方作成・日常活動指導
3 虚血重症度の判定・労作性狭心症治療方針決定
4 慢性心不全の病態解明・重症度把握,治療法決定
5 ペースメーカ至適モードの設定
6 MitraClipあるいはMVPの選択と手術の効果予測
7 AS重症度判定
8 息切れの鑑別
9 労作時息切れの原因としての卵円孔開存(PFO)の検出
第10章 運動処方〈安達 仁〉
1 AT処方
A AT決定法と運動処方
B ATが決定不能な場合の運動処方
C 自転車エルゴメータとトレッドミルの対比
2 心拍処方(Karvonenの式)
3 自覚的運動強度による処方
4 トークテストによる処方(坂道が多い地域での運動処方)
5 RR thresholdを用いた運動処方
6 重症心不全への処方
7 不整脈患者への処方
8 ICD,CRT-D患者への処方
9 ポジティブリモデリングと運動処方
10 HR<110の勧め
11 運動処方レベルの確認法
12 HIIT(high intensity interval training)
13 エキセントリックトレーニング
第11章 CPXの実例〈村田 誠 安達 仁〉
CASE 1▶低体重健常者:20歳代女性 150cm,45kg
CASE 2▶中年健常者:40歳代前半男性 170cm,69kg
CASE 3▶高齢健常者:80歳代前半女性 149cm,51kg
CASE 4▶肥満症例:50歳代男性 161cm,155kg
CASE 5▶大動脈弁狭窄症による大動脈弁置換術後:60歳代女性
CASE 6▶大動脈弁狭窄症によるTAVR術後:70歳代後半男性
CASE 7▶拡張型心筋症による機能性僧帽弁閉鎖不全に対してMitraClip術後:80歳代前半男性
CASE 8▶僧帽弁置換術後:70歳代後半女性
CASE 9と10▶長期強心剤点滴後の拡張型心筋症に対して3週間の心リハ前後の比較:50歳代前半男性
CASE 11▶HFpEF:60歳代男性
CASE 12▶安定狭心症(冠動脈3枝病変):60歳代男性
CASE 13▶軽度の動脈硬化症:70歳代前半女性
CASE 14▶急性心筋梗塞:60歳代女性
CASE 15▶肥大型心筋症拡張相:70歳代後半男性
CASE 16▶心臓移植後:40歳代後半男性
CASE 17▶心房粗動:70歳代前半男性
CASE 18と19▶心房細動アブレーション前後のCPX:70歳代前半男性
CASE 20と21▶大動脈弁狭窄症にて大動脈弁置換術後,三束ブロックにてペースメーカ植え込み後の胸部圧迫感精査目的のCPX:70歳代後半男性
CASE 22と23▶虚血性心疾患によるHFrEF.一次予防目的のICD植え込み後:50歳代男性
CASE 24▶ファロー四徴症術後.心室中隔欠損残存,右-左シャント:40歳代女性
CASE 25▶HFrEF+軽症COPD:70歳代後半男性
CASE 26▶HFrEFとCOPD:60歳代男性
CASE 27▶巨大ブラ+COPD:40歳代男性
CASE 28▶HFpEF+心房細動,薬剤性間質性肺炎:60歳代男性
CASE 29と30▶イバブラジン内服症例:50歳代男性 178cm,110kg
CASE 31▶慢性血栓閉塞性肺高血圧症:60歳代後半女性 156cm,48.6kg
CASE 32と33▶拡張型心筋症+心房細動症例へカルベジロール投与:50歳代後半男性
第12章 CPXのレポート〈安達 仁〉
1 報告書に記載したい内容
2 CPXの依頼目的
3 運動負荷終了理由/虚血・不整脈の有無
4 運動耐容能
5 運動中の心機能
6 骨格筋機能
7 血管内皮細胞機能
8 自律神経応答
9 呼吸器疾患関連
10 結論
第13章 運動療法実施法リアルワールド
1 心筋梗塞 〈猪熊正美〉
A 急性期〜維持期までの運動療法の流れ
B リスク管理,メディカルチェック
C ウォーミングアップ,クーリングダウン
D 運動強度
E 有酸素運動
F レジスタンストレーニング
G インターバルトレーニング
2 狭心症 〈安達 仁〉
A ガイドラインにおける安定狭心症への心臓リハビリテーション
B 安定狭心症に対する心臓リハビリテーションの危険性
C 安定狭心症に対するPCIの危険性
D ACSにさせないための心臓リハビリテーション
E CCSの症状を緩和させるための心臓リハビリテーション
F 運動負荷試験
G 運動療法
3 開心術後 〈中野晴恵〉
A 開心術後の心臓リハビリテーション
B 【Phase I:急性期】術後〜1週間:個別プログラム
C 【Phase II:回復期】術後2週間〜退院まで:個別・集団運動療法
D 【Phase III:維持期】外来プログラム
E 開心術後のレジスタンストレーニングについて
4 当院ICUでの早期・急性期心臓リハビリテーション 〈中野晴恵〉
A ICUでの早期・急性期心臓リハビリテーション
B 当院での実施対象患者
C 介入前の情報収集
D 介入前の事前調整
E 状況別の当院でのリハビリテーションの目的と内容
F 病態ごとの当院での対応
5 術後せん妄への心臓リハビリテーション 〈山下遊平〉
A せん妄について
B 術後せん妄の危険因子
C 術後せん妄の評価
D 術後せん妄に対する薬物治療
E 術後せん妄に対する心臓リハビリテーション
6 ステージC・D:心不全・LVAD植え込み患者 〈風間寛子〉
A 心不全患者に対する心臓リハビリテーション
B フェーズに応じた心臓リハビリテーションのポイント
C LVAD植え込み患者に対する心臓リハビリテーション
7 ステージA・B:心不全予防 〈風間寛子〉
8 ICD/CRT-D植え込み患者の心臓リハビリテーション 〈生須義久〉
A ICDの適応
B CRT/CRT-Dの適応
C ICD,CRT-Dの設定
D ICD/CRT-D手術後のリハビリテーション
E ICD/CRT-D手術後の合併症
F 生活指導
G 遠隔モニタリング
9 成人先天性心疾患 〈猪熊正美〉
A リスク管理
B 運動耐容能・運動療法
10 慢性腎臓病 〈猪熊正美〉
A CKD患者の運動処方
B 心腎貧血症候群
C リスク管理,メディカルチェック
11 高齢者 〈中野晴恵〉
A 高齢者の心臓リハビリテーションの効果
B 高齢者の心臓リハビリテーションの実際
C 当院での高齢者に対する心臓リハビリテーション
略語集
CPX実施時チェックシート
執筆者一覧
安達 仁 群馬県立心臓血管センター 心臓リハビリテーション部長/副院長 編著
小林康之 群馬県立心臓血管センター 生体検査課 課長
上田正徳 群馬県立心臓血管センター 生体検査課
村田 誠 国立循環器病研究センター 循環器病リハビリテーション部 心血管リハビリテーション科
猪熊正美 群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課
中野晴恵 群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課
山下遊平 群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課
風間寛子 群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課
生須義久 群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課 課長
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