監修のことば
我が国の医学部はつねに変化しています.私は約30年前に医学部を卒業しましたが(トシがばれてしまいますが……),たとえばその頃には私が専門である「微生物学」の講義は4年生時に行われていました.しかしいまの大阪医科薬科大学医学部では,微生物学に相当する授業科目(「病原体・生体防御2」)は2年生に教授しています.このように医学部カリキュラムはどんどん変化? 進化? していっています.
そのような医学部カリキュラムを初学者である医学部低学年の方々や,あるいは医学部を志望する高校生の方々に理解していただくためには,現在医学部で教育の最前線に立っている先生方,あるいは医学部教育を受けて医学・医療の最前線で活躍している先生方に語っていただく必要があると考えました.本書は若手のリーダーとして医学教育分野で活躍されている駒澤伸泰先生が編者となり,医学教育にかかわる先生方が統一されたコンセプトのもとで執筆されている点が,まさに本書が類書にない特徴といえます.
医学部とはいったいどんなところで,何を学び,そして卒業した医師がどのように社会に貢献しているのか,これらの疑問に本書は応えられるものと確信しております.是非ページを開いてみてください.
2023年7月
中野隆史
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序 〜かつての学修者から現在の学修者,そして未来の教育者へ〜
医学部で学修する内容は,年々増大するだけでなく,高度複雑化しています.いわゆる「教養科目」,「基礎医学」,「社会医学」などの数十年前から医学部の根底を支えてきた基幹科目だけでなく,「データサイエンス・AI」科目,「多職種連携」科目などの新たな科目群も導入されています.また,病院での「臨床実習」も卒後臨床研修との一貫性を意識して「診療参加型臨床実習」と呼ばれるようになりました.
医学部志願者や入学者は,医学部6年間および卒後における医師の進路に関してイメージが難しいと思います.世間には医学部受験本や医療問題に関する情報が溢れています.しかし,医学部で教鞭をとり,臨床活動を行っている医療者が自ら,医学部の現カリキュラム・卒後進路・各診療科の概要を述べた書籍はいまだ存在しません.多くの医学教育にかかわる先生方の支援をいただき,大きな視点から「医学部とは何か,医師とは何か」を紹介する,当事者による本物の「ガイダンス」を提供したいと思います.
本書は4部構成となっており,1章が4年生中盤までの臨床実習前まで,2章が臨床実習から卒業まで,3章では医学部を目指す方や入学者の方に修得しておいてほしい学修姿勢やピットフォールをまとめています.そして4章では卒業後の様々な進路とやりがいをまとめました.
著者たちはかつて学修者として医学生生活を送り,色々と失敗を経験し乗り越えてきました.「皆さんの医学部生活が最高に良いものになれば」と本著を編集しました.そして「皆さんが未来の教育者となった時に少しでも役立てば」とも祈っています.
2023年7月
駒澤伸泰