禁煙指導,吸入療法から高度専門的治療まで!
気道症状の診療をカバーする役立つ一冊を!
長引く咳・痰や息切れなど,気道系の症状はプライマリ・ケアの場で日常的に遭遇する最もありふれた問題です.その代表疾患である喘息とCOPD,さらにその両者の合併であるACOや,他の多くの気道疾患の鑑別や治療,特に難治例の対応にはすべての医家が悩まされる経験をおもちとおもわれます.本書は最新版ガイドライン等のエッセンス,またガイドラインには含まれないものの診療に必要な具体的なポイントなども含め,これら気道症状をみる機会のある先生がたの日常診療の向上に寄与する一冊として企画させていただきました.
気道系は,喫煙などの有害物質,病原微生物,各種のアレルゲン,そのほかの環境汚染物質に常に曝露され影響を受けています.COPDあるいは気管支拡張症などでは不可逆的な要素が大ですし,喘息は体質的基盤が基礎に存在するので一時的には軽快しても結局患者が生涯にわたって苦しむこととなりえます.気道系疾患の多くでは生涯にわたる適切な管理が求められるのです.
気道症状があるとき,しばしばひとりに複数の疾患が併存しえることも極めて重要です.よく知られるものは気管支喘息とCOPDの合併です.喘息の我が国における有病率は10%近いとも推計されていますが,その代表的な病因アレルゲンは室塵ダニです.ところがダニ感作例でアレルギー性鼻炎などは発症しているものの,臨床的に喘息を表現しないまま成人となるケースでは喫煙習慣が形成されることは日常的にみられますし,下気道にもアレルギー性の慢性炎症が形成されているため喫煙による病態の進展は高度となりやすいと推測されるのです.気道系疾患を診療する上で重要な基本的ポイントとしてまず長期的予後の確保,患者の生涯にわたる健康の質的保持を考察した管理の必要性がありますし,患者の生活習慣あるいは背景因子にも配慮しつつ,全人的包括的な管理を行う視点が重要と思われるのです.
本書は気道症状の診療シーンでしばしば遭遇する病態や問題を中心に,我が国のトップ・エキスパートの先生がたに御執筆をお願いし,最高の知識とノウハウをまとめさせていただいたものであります.本書が先生方の日々の診療にお役に立ち,そして苦しむ患者さんたちの救済のためにご活用いただけることを期待してやみません.
2023年2月1日
埼玉医科大学呼吸器内科教授・アレルギーセンター長
永田 真