監修の序
玉城先生と初めてお会いしたのが、開業医コミュニティM.A.Fというセミナーで、先生から話しかけていただいたことがきっかけでした。
笑顔が素敵で、お綺麗で、おまけにハキハキ、キビキビとされた方だな、というのが第一印象でした。
玉城先生は本当に勉強熱心です。開業医コミュニティM.A.Fでは大阪と東京でセミナーを開催していますが、どちらも同じコンテンツです。それでも大阪と東京の2回とも来られています。そこでいつも色々な先生方とコミュニケ―ションを取られているのが印象的です。
この本のタイトルのように、自分のクリニックを初めて開業するときに借金をしないで開業する、ということをしっかり考えて実行されています。それだけでも驚きなのですが、さらに3つのクリニック運営という、クリニックとしては稀なことをされている。さらにまたそのうえで、旦那様との時間や、好きなゴルフ、アートなどの趣味に使うプライベートの時間もしっかり取られています。
玉城先生を見ていると、肩ひじ張った経営ではなく、自分に合う経営の仕方をされているなと思います。
例えば書物を読んだり、セミナーに参加したりして、何かしら気付くことはあると思います。玉城先生は、その気付いたことをそのまま実行するのではなく「私だったらどうしよう」とか、「私はこういう形がやりたい」という取捨選択が早い方です。自分にとって必要なものはしっかりと取り入れつつ、少し違うなという部分は「自分自身としてはこうしたい」という形に変えて取り入れられているなと感じます。
そのうえでやるべきことは、きっちりとすぐにやる。SNSも、マーケティングも、必要だと思ったらすぐに取り組まれています。それも外部の力も取り入れながら、とてもスムーズに、スピーディーに実行に移されるのです。
自分を無理やり変えるというよりも、自分自身が自然体でいられるような経営方法を選び取っているので、しっかり趣味の時間をとることができるのだと思います。
玉城先生が常々言われているのが、「常に時間というものを大切にしている」ということです。
女性の場合、一般的に結婚・妊娠・出産という過程の中で男性ほど仕事に打ち込める環境になりにくいのが現状です。少なくとも現時点では男性医師の方が、仕事にウェイトをかけやすいのではないかと思います。
さらに、世の中の女性の多くは、育児の時間が欲しいとか、子どもとの時間が欲しいなど、仕事以外のプライベートの時間を確保したいという気持ちが男性よりも一層強いと感じます。
そんな女性医師にとって、働き方の指針となるお話が詰まった本になっています。
もちろん女性に限らず、男性にとっても、玉城先生の経営スタイル、考え方というのが今後、新しい働き方の一つとなるはずです。
是非先生の書物から自然体の経営や考え方など多くを学んでいただきたいと思います。
医療法人梅華会グループ理事長
開業医コミュニティM.A.F主宰
梅岡比俊
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はじめに
本を書こうと思い立ちパソコンに向かいながら、ふと「院長です」と初めて名乗った日のことを思い出しました。前日までは肩書なんてなかったのに今日から院長。ですが、いざ言葉にするとどこか恥ずかしかった……。とても小さな声で呟いたのは、スタッフ採用のための面接のときでした。当時34歳、医学部を卒業したとたんに『先生』と呼ばれていたものの、社会人としては常識知らずで、右も左も分からないまま、一丁前に歳だけは重ねた私でした。
当然、面接に来てくれた方の何を見て合否の判断をすればいいのかは、まったく分かりません。そこで、当時、担当してくれた社会保険労務士さんの意見を鵜吞みにしてのスタッフ採用でした。
早いものであれから9年という月日が経った今、「院長の玉城でございます」と堂々と名乗れる私がここにいます。そして、ありがたいことに、私のもとにはクリニック経営のノウハウを学びたいと、すでに開業されている先生方が訪ねて来てくださいます。
クリニックは私の子どものような存在です。特筆するような経営理念も信念もないけれど、さまざまな改善の積み重ねで出来上がった型破りな私のクリニックへ見学にいらっしゃる先生方にお話ししている内容を基に、この本を書き上げてみようと思います。
私はなぜ医者になったのか?
私には、内科医でクリニックを開業している父がいます。三姉妹の真ん中の私は、小学生1年生のころは無口で、学校で一言も発しなかったため『自閉症』ではないかと担任の先生が家庭訪問に来るほどで、母はとても心配したそうです。とにかく、昔から周囲に『変わった子』と言われ、小学生なのに友達はあまりいませんでした。ですが、母を心配させたくなくて、「友達と遊んでくる」と嘘をついては外でシロツメクサを編んだり、縄跳びをしたりして時間を潰していました。授業中にペアで作業をするときは、相手がいなかったけれど勉強はできたし、いじめられていたわけではないので、悲しいと思ったことはありませんでした。
小学校卒業後は、私立中学を受験して入学し、医師の子どもの多い環境のなかでひっそりと過ごしました。高校になると遊びを覚えて、クラブに行っては昼夜逆転の生活をしていました。進学校だったので周りが受験勉強に勤しむなか、ひとり遊び続けました。私には、大学受験のための勉強が性に合わず、面白くなかったので、ほとんど高校に行かず、昼夜逆転の遊び回る生活をし、警察のお世話になったことは一度や二度ではありません。
ちょうどコギャルが流行っていた時代で、「人生で一番楽しい17、18歳を遊ばずに過ごして、どうする!」と本気で思っていたのです。当然、大学受験は失敗し『高校生ブランド』も失いました。
ある日、父に「ちょっといいか」と応接室に呼ばれました。そこは、家のなかで唯一足を踏み入れたことのない、古い家の湿気臭さが漂う部屋です。父は、真面目な顔で「この先どうやって生きていきたいんだ」と問いました。私が警察に捕まろうが、夜中に呼び出されようが、決して怒ることも咎めることもしない父でした。今まで、私のことを傍観していた父が、初めて、私に正面から向き合った瞬間でした。とても冷静に「フリーターになって、自分で生きていってくれないか。あるいは、お金を惜しまず援助するから医師になるか。どちらか選んでくれ」と言ったのです。
私は、恵まれた環境のなかで、『自分がすべて』だと思って自由にわがままに生きてきました。しかし、フリーターの世界へ飛び込む勇気や自信などなく、ただ甘えていたのです。ですから、あっさり「1年間で医師になるので、寮のある塾に入れてください」とお願いしました。今考えると、進学塾は家から十分通える距離なのに、高いお金を出して寮に入れてくれた父には感謝しかありません。
現役時代、遊びすぎていて、センター試験は『記念受験』だったため、まったく受験の知識がない私は、『偏差値40が70になりました!』という予備校の広告を見て、「この人ができるなら私にもできるわ」と、変な自信を持ち約半年間の受験勉強の末、医学部に合格したのです。
以上が、私が医師になった経緯で、「父が医師だったから」というのは、面接などで使う常套句です。
医師になったからといって『変わっている』ことは同じで、初日から代診を雇って開業したり、可愛い白衣がないから自分で作ってみようと急に言い出して、周囲を驚かせたりしています。いつも新しいことを探し、何か夢を持っていないとつまらなく思えてしまうのです。
小さいころから「少し変わった子(いや、だいぶ変わった子?)」と言われ続けたそんな私でも、ときどき不安になって、改めて妹に「私って変わっているのかな?」と聞いたことがあります。しかし、妹は「いや、それはお姉ちゃんの個性だよ! それを活かして世に出ていきなよ〜」と認めてくれました。そのことで、子どものころから何十年も抱えていた心のつかえがとれたことを覚えています。自己分析すると、私の良さは、興味を持ちやりたいと思ったことは迷わずやることだと思っています。
そして、『ストレスなく生きる』というのが私のモットー。そこからブレず、これからも高みを目指していきます。
私のアンガーマネジメント
よく、人から「全然怒らないね」と言われますが、小さいころは癇癪を起こしていた記憶があります。でも今は、夫と喧嘩もしなければ、言い争ったことすら一度もありません。むしろ、『喜怒哀楽が乏しいのではないか』、『人間として感情が欠落しているんじゃないか』とさえ思います。
とはいえ私も、本当は、たまにイラっとすることがあります。誰か個人に対してというよりは『多忙な状況に』です。診察をしながら、後でスタッフさんにこれを言わないと……と考えるなど、常に頭の中にはいくつかのやることリストが並んでいます。やることだらけの人生を、客観的に見てイラっとするのです。そこは少々ストレスです(笑)。
ときどき、外来を終えてから、徒歩10分の自宅までもたどり着く気力がなく、クリニックで仮眠することがあります。その姿はさながら『あしたのジョー』です。そんな私の姿は誰も知らないし見せないようにしています。でも、この生活に後悔はありませんし、今後まだまだやりたいこともあります。
私の考え方は、
●まずワクワクが先。迷ったら常に楽しいと思うほうを選ぶ。
●常に目標を考え、プラス思考のみで生きる。
●年々、自分の想像を超える自分になっているので、自分の将来にワクワクしているから、年をとるのが楽しみ。
●たとえ、つらいことがあってもその出来事に感謝すると、その現象が幸せに変わる。
●時間を無駄にしない。
という5つが基本です。
過去に起きた悲しいことや失敗したことを考える時間は無駄です。人は、人生を何度繰り返しても、きっと同じ過ちをして、今と同じ道を歩むのではないでしょうか。いくら悩んでも、失敗したことを今からやり直すことはできません。悔やむ時間はなんの成長にもならないのです。だから、5つの基本を大切に物事を考えています。
二子玉川ファミリー皮ふ科
自由が丘ファミリー皮ふ科
溝の口駅前皮膚科 総院長
玉城有紀