推薦文
作者の清水健太郎先生(シミケン)は、僕の大学時代からの親友です。彼は医学生の時は、医者より小説家を目指していました。味のある漫画も書いて、医学以上に芸術の才能を持った人でした。精神神経科を目指していたので、整形外科医になったときには、びっくりしたのを覚えています。
その後、地方の基幹病院で脊椎を専門とする整形外科としての活躍を聞き、漫画の才能からくる手先の器用さが整形外科手術にも役立っているのだと合点がいきました。彼には、慶應医学部の新聞にも四コマ漫画を書いてもらっています。
2013年に上梓された『整形外科ガール』は、手書きのイラスト満載の看護師向けの教科書で、彼の才能が生かされた名著だと思います。『整形外科ガール』の若手医師向けの教科書を書いてみては? とすすめ、8年の年月を経て、できあがった本書のゲラを読んでたまげました。若い整形外科医への愛情のこもった、整形外科プライマリケアのすばらしい教科書ではないですか。豊富な写真により、見てわかる教科書であり、彼の上手なキャッチコピーにより、骨折が理解しやすくなっています。
シミケンの豊富な臨床経験から編み出される至極のpearlに満ちあふれた本です。あえて、縦書きとしたのは、文芸賞の受賞者らしい、純文学へのオマージュなんだと思います。
慶應義塾大学医学部 副医学部長
医学教育統轄センター教授
門川 俊明
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はじめに
整形外科は、たいていの病院にあるポピュラーな科、そして大変イソガシイ科です。救急、手術、外来、病棟、検査、書類(よその科は、どれかがヒマだったりする)……どれもテンコ盛り。ドクターは、早朝から夜深けまで病院を駈け回っているにチガイナイ。かくいう筆者も、若僧・弱輩・新米の時代、いきなり三次の外傷病院に派遣され、毎晩押し寄せる救急車を前に心底から途方に暮れたものでした。
新人は勉強する余裕がない。上司も教える時間がない……
この本はそんな現状を鑑み企画されました。とくに、整形外科以外の医者や、救急の最前線にひとりで立つ研修医くんのために中味を盛りました。
厖大で(大学によっても、病院によっても、医者によっても方法がちがう!)、変り身が早い、そんな整形外科の大海を泳ぐにあたり、よき羅針盤となりますように。