I PTSDと医療
1.「外傷後ストレス障害」概念の変遷 〈佐藤光彦 飯森眞喜雄〉
A.はじめに−PTSD概念の変遷を知っておく意義
B.PTSDの基本概念とその問題点
C.PTSD成立に至るまでの歴史的背景と経緯
1.器質因説と心因説
2.ヒステリーとの関連
D.米国におけるPTSD成立の契機と過程
E.その後のPTSD研究による概念の変化
F.おわりに−PTSD普及後の問題点
2.診断基準とストレス 〈大家尚文〉
A.両基準の特徴
B.ストレスとストレッサーとは
1.力学でのストレスと変形
2.生理学でのストレスとホメオスターシス
3.PTSDでのストレス
C.トラウマとは
D.PTSD発症の仮説
E.両基準での外傷体験の定義
1.暴露時の感情体験について
2.ストレッサーについて
F.ストレッサーの捉え方
3.外傷体験の把握 〈黒木宣夫〉
A.直接体験と外傷
B.訴訟事例提示−目に見えない体験が外傷体験とされた事例
事例1 強姦被害を受けたと主張し,PTSDと診断された事例
事例2 幻覚,妄想があるにもかかわらずPTSDと主張された事例
事例3 セクハラの事実そのものが曖昧な事案
事例4 わいせつ行為を受けたとして9カ月経過した後に提訴した事例
C.目に見えない外傷体験の把握
D.出来事との因果関係
1.PTSDの発症要因と個体差
2.PTSD発症と個体差との関係
3.PTSD発症と本人の脆弱性
4.精神科医によって診断に差異が生じる理由
トピック 米国退役軍人における外傷後ストレス障害の
法的側面および補償について 〈荒井 稔〉
4.心理テストの信頼性と妥当性 〈種市康太郎〉
A.心理テストとは
1.性格検査の種類
2.性格検査の種類と長所・短所
B.精神症状評価尺度とは
C.心理検査および精神症状評価尺度の信頼性と妥当性
1.信頼性とは
2.心理検査と臨床評価尺度の信頼性
3.妥当性とは
4.心理検査と臨床評価尺度の妥当性
D.PTSDを対象に使用される精神症状評価尺度
1.出来事インパクト尺度日本版
2.CAPS構造化診断面接尺度日本語版
E.PTSD診断の補助として使われる心理テストの特徴
F.PTSD診断における心理検査・臨床評価尺度の結果を判断する際の問題点
5.PTSDの鑑別診断 〈黒木宣夫〉
A.死別反応との鑑別
事例 目前で長男の死を目撃した事例
B.うつ病との鑑別
事例 バイクで走行中に大型車に巻き込まれる交通事故から
約8カ月後に自殺した事例
C.災害神経症,賠償神経症,人格障害との鑑別
事例1 偏った人格傾向や賠償神経症的傾向を有した統合失調症例
事例2 寝込んでいた時に交通事故に遭遇
−皮膚電気反射(GSR)を根拠にPTSDと診断された事例
D.交通外傷後の身体的愁訴の背景にある精神疾患との鑑別
1.F44 解離性(転換性)障害
2.F45 身体表現性障害
3.F68.0 心理的理由による身体症状の発展(従来の賠償神経症)
4.F68.1 虚偽性障害とZ76.5 詐病
事例1 傷害事件から5年経過した後にPTSD鑑定を希望して受診した事例 事例2 身体愁訴が強く自らPTSDではないかと来院した事例の見立てと鑑別
E.自らPTSDと訴えて受診した患者に関して
コラム 精神科病態からみたPTSD
−神経症水準の障害と精神病水準の障害 〈黒木宣夫〉