推薦文
医学部学生と研修医の皆さんへ.
来週からの実習,研修は膠原病…だけどわからない事が多すぎる,成書を前に頑張って予習しようと意気込んでいるけど通読は無理,と諦めかけているあなた.医学的基礎知識を詰め込む事は大変大切な事ですが,臨床の現場で医師が何を考え,どの様に判断しているかの予習ができれば,あなたの実習,研修の意義は飛躍的に向上するでしょう.しかし,疾患別の縦割り各論に終始する本が多く,独特な判断や理解を言葉に表して多くの初学者の方々に理解,納得出来る様に説明することは決して簡単な事ではありません.その様なニーズを満たそうとする,痒いところに手が届きそうなのが本書です.Dr.前島流膠原病持論ですが,我々が学生さんや若いDr.になかなか伝えづらい考え方や判断方法が分かりやすく解説してあります.著者は立ち読みでもChapter 2まで読んで頂きたいようですが,私は後半の各論部分を読んだ上で前半の総論部分を読む方がDr.前島から見えている風景を理解しやすいのではないかと思います.何事も俯瞰してみる能力は重要ですが,各論が理解できてこそ可能となることです.
丸暗記ではない膠原病の理解を目指した本書で各論と総論を行ったり来たりしながら読むことで,明日病棟で周囲が驚くような質問ができるのではないかと思います.
免疫学は日本が世界をリードしてきた分野です.それも,基礎研究の成果を治療応用する事に成功しており,古くは関節リウマチに対するIL-6阻害薬,新しいところではチェックポイント阻害薬はその最たるものです.免疫調整を目的とした薬剤は,様々な科で様々な疾患を対象に投与されているため,免疫は膠原病内科医だけでなく診療科横断的に重要な知識となっています.免疫を専門とする現場の臨床医がどのように考えているのかを本書で感じ取っていただき,少しでも興味を持ってもらえるとDr.前島共々嬉しく思います.
2021年12月
北里大学医学部膠原病・感染内科学主任教授
山岡邦宏
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序文
なによりもまず,「Dr.前島って一体誰だ?」と疑問に感じておられることでしょう.
ごもっともです.私は長くアカデミア(学究的環境)に身を置いていたものの,現在は地域医療に従事する一臨床医に過ぎません.なんの肩書きもない私の名を冠した奇妙なネーミングの本書をお手にとってくださり,誠にありがとうございます.私は「『膠原病学を面白いと思う気持ち』と『その面白さを広く若者(医学生や研修医)に伝えてこの業界をさらに盛り上げていきたいという気持ち』が人一倍強い膠原病内科医」です.つまり本書「Dr.前島の膠原病論」は,「膠原病学をこよなく愛する一専門医の頭の中」を書籍としてエクスポートしたものといえます.膠原病を学ぼうとするすべての若者に,その魅力を伝えたい一心で本書を執筆しました.
これまで大学で多くの若者に指導をしてきましたが,幾度となく「もったいない…」とため息を漏らしてきました.せっかく「膠原病学に親和性が高い(膠原病を専攻することで最大限の能力を発揮できる)」と思われる若者であるにもかかわらず,他科を専攻した先生方が数多くおられたのです.これらの先生方はそれぞれの専門領域で活躍されているのですが,膠原病を専攻していたらもっともっと活躍できていただろうに,と思ってしまうわけです(負け惜しみによる私の勝手な思い込みなのでしょうが…).
大学の講義や臨床実習/研修の限られた時間では基本事項を教えることで手一杯であるため,「噛めば噛むほど味が出る医学領域」の代表格である膠原病学の本質的な面白さを若者に伝えるのは至難の業です.しかもコロナ禍になり,今まで以上にその魅力をアピールすることが難しくなっています.そもそも,私自身が大学から離れ,直接指導をする機会もなくなってしまいました.
そこで,これまで長年にわたり講義や指導に試行錯誤してきた経験を活かして,膠原病学の指導にあたる全国の先生方の強力な武器になるような一冊を作ることを決意しました.結果,内容の濃いものに仕上がったと自負しています.が,一方で「手の内を明かし過ぎた」と後悔もしています(笑).本書はもしかしたら医師の卵であるあなたの人生を変える力を有しているかもしれませんので,(立ち読みでも良いので)少なくとも第2章までは是非とも読んでみていただきたいと思っています.
本書により,指導医が「もったいない…」「魅力を伝えきれなかった…」などと残念な思いをすることがなくなり,ひいては膠原病領域がますます発展するようになればと心から願っております.
2021年9月
医療法人慈恵会 西田病院リウマチ・膠原病内科部長
前島圭佑
著者からのコメント
医学生、研修医、内科系医師、そして膠原病専門医の皆様へ
多くの医学領域において臨床免疫学の重要度は高まる一方ですが、その土台とも言える膠原病学は残念ながら多くの先生方から「難しい」と嫌われているのが実状です。その理由は様々あり本書でも触れていますが、「(学び手が求める内容の)総論が存在しない」ことも大きな要因だと考えています。本書はいわば「活きた総論」を目指して執筆した書籍です。全15章(約160頁)ですが、各論はそのうちの5章(約80頁)という構成です。また各論パートでも、「膠原病疾患は一連のものである(第3章より)」という視点で他疾患との類似点や相違点も交えることで、総論の考え方を補強できるように意識しています。本書の考え方をインプットしていただければ、これまで膠原病学に抱いていた負のイメージが一変することと信じています。
本書は医学生をメインターゲットにしていますが、研修医や専門医の先生方に向けた内容も盛り込んでいます(欲が出てしまいました)。でもご安心ください。医学生向きではない内容には注釈をつけていますので、難しい内容は飛ばしながら読み進められるようになっています。また理解を促すための図表や、学習効率向上のための参照ページ注釈も多用しています。是非とも一度手に取っていただき、本書の雰囲気に触れていただければ幸いです。
2022年1月
前島圭佑