序
今回,執筆いただいた先生方は,臨床研修病院に在籍し,呼吸器内科医として診療と研究,そして研修医教育に積極的に携わっている方ばかりです.私たちは院内の医師だけではなく,学会や研究会で院外の先生方と症例報告や研究成果をもとに討論し,その領域の診療レベルを高めることにより,患者さんにより良い医療を提供しています.しかしながら,COVID-19の影響を受け,2020年4月からは多くの学会が中止あるいはWEB開催となっています.顧みると私が最後に東京へ行ったのは2019年7月の呼吸器内視鏡学会,大阪へ行ったのは2019年12月の肺癌学会総会でした.
中外医学社の上岡里織様から本書のお話があったのは,第1波と第2波の間の2020年6月でした.私たちがCOVID-19の可能性を考えながら通常と同様に呼吸器疾患の診療を行うことには,様々な制限があります.呼吸器診療では当然ながら身体所見は大切ですが,落ち着いて直接患者さんと接することが難しくなり,改めて胸部画像診断の重要性を認識した頃でした.ただ,画像診断能力は一朝一夕に身につくものではありません.初期研修医,内科専攻医,そして呼吸器疾患を専門にしていない先生にも,この機会に画像診断と疾患の基本的な知識を確認してもらいたいと考えました.そこで,COVID-19診療に第一線で活躍する教育施設の先生方に,具体的な症例を提示して,病態,診断,治療をわかりやすく解説していただくようお願いしました.この未曾有の状況において,個人的に無理をお願いできる先生ばかりになってしまいました.改めてお詫びを申し上げますとともに,素晴らしい内容にしていただき感謝しております.通常の書籍ですと内容に統一感がありますが,本書はそれぞれ執筆者の書きやすい方法(おそらくは各施設でのカンファレンスの進め方)が良いと思い,お任せしました.できるだけ制約をしなかったことで,先生方が実際に目の前でお話をしてくださるような形になったと思います.
2020年11月には岡山で肺癌学会総会(木浦勝行会長)があり,COVID-19の第2波と第3波の間ということで,全国から多くの医師が参加してくださいました.久しぶりの現地開催となった全国学会ということで,多くの先生方が直接討論できる喜びにあふれていたのを思い出します.この時の感激を『見る診るわかる! 胸部画像診断』でも感じていただければ幸いです.
2021年6月
瀧川奈義夫