改訂の序
この度,「血液内科グリーンノート」を4年ぶりに改訂しました.本書は,日常診療の現場で役に立つ実践的な手引き書として,2017年に初版が発刊されました.血液診療のポイントをわかりやすく記載することを原則とした本書は,「臨床の現場で全力で活躍する」全国の血液内科の先生方に活用していただき好評を得ました.以来,4年が経過し血液診療の進歩は加速度的に進んでいます.血液内科は,もともと進歩の早い領域ですが,分子レベルでの病態解明の進歩とともに新規治療薬もどんどん導入され,日本血液学会より出版されている「造血器腫瘍診療ガイドライン」も2020年4月には「2018年版補訂版」が出版され,多くの造血器腫瘍の治療アルゴリズムが新たになりました.
このような4年間の進歩に対応すべく,本書は埼玉医科大学に属する3病院(大学病院,総合医療センター,国際医療センター)の血液診療に従事する先生方を中心に,最新の血液診療のエッセンスを全国の施設で活用できるように工夫を凝らして執筆していただきました.血液診療の基本は,形態学的診断や画像診断を確実に行い,検査データを正確に判断することで疾患の診断を確定し,エビデンスのしっかりとした適切な治療を選択することです.そのため,今回の改訂では初版と同様に診断に必要な血球形態像や組織像,そして多くの画像所見をふんだんに取り入れ,診療に必要な検査の解釈も具体的に記載しました.特に,進歩が著しいゲノム解析研究の情報の活かし方についても言及いたしました.各疾患には,まず「まとめ」で全体像を把握し,図を多用することで診断や治療の全体が把握できるようにするとともに,代表的な治療法については「処方例」として具体的に記載しました.さらに,巻末には,最新の代表的造血器腫瘍の治療レジメンを記載するとともに,診療に役立つように体表面積換算表に加えて,血液診療に必要なアプリ集やCTCAE最新版の利用の仕方についても掲載しました.
本書は,実際の臨床現場で役に立つことを念頭に書かれた血液診療の実践マニュアルです.そのため,常時携帯できるようなコンパクトなサイズを目指しましたが,ここ数年の血液診療の進歩に伴う情報量は膨大であり,執筆された先生方の想いも大きく,予想以上に大部な書籍となりました.
血液診療に従事されている先生方は,本当に忙しい毎日を過ごされているかと思います.加えて,コロナ禍の現在にあっては,「自らが感染しない,患者に感染させない」ことを念頭に日々緊張の連続かと思います.しかし,いついかなる時でも私どもは患者にベストな医療を提供する責務があります.本書が,そのような全力で血液疾患に立ち向かっている先生方のお役に立ち,座右の書として活用されることを願ってやみません.
最後に,多忙な中に執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げます.
2021年6月
木崎 昌弘