薬物で治らない手ごわいめまいは、リハビリで治す!
こんにちは。本書を手に取ってくださり、ありがとうございます。本書は、薬物のみでは治らず、みなさんを苦しめているめまい症状とめまいに付随するいろいろな症状にはめまいリハビリ(学会では前庭リハビリ、平衡訓練とよびます)が有効であることをお知らせし、実践していただくための本です。
めまいの主な原因である片側の内耳障害の回復には、小脳というバランスの親分が重要な役割を果します。内耳のバランスの左右差を改善させる代償機転というものがこの小脳にあるのです。でも、それは寝ていては発動しません。そう、めまいリハビリで促進されるのです。ですから、めまいリハビリでは、小脳の優秀な3つの子分である視覚(目)、内耳(耳)、足の裏からの情報(体性感覚)を有効に刺激する必要があります。めまいリハビリの基本的な考え方は、(a)めまい症状を起こしやすい動作を繰り返すことで症状を軽減するリハビリ、(b)内耳を刺激するリハビリ、(c)視覚と体性感覚を用いたリハビリです。意外ですね! 症状を起こしやすい動作を繰り返すなんて、信じられませんよね!! でも本当です。上記は、めまいリハビリの先進国であるアメリカでの基本的な考え方を書いたもので、アメリカでは標準治療なんですよ! bの「内耳を刺激するリハビリ」も、当初はくらくらしてめまいが悪化したように感じます。でも、それを乗り越えると効くんです! cは、内耳が調子悪いのなら、視覚と体性感覚という2つの優秀な子分に磨きをかけようというリハビリです。
めまい疾患にはいくつかの種類があります。
(1)めまいの発症にストレス関与が高くない
(A)左右差が残る状態のめまい
(B)加齢性めまいと高齢者平衡障害
(C)良性発作性頭位めまい症
(2)めまいの発症にストレス関与が高い
(D)メニエール病
(E)前庭性片頭痛(片頭痛性めまい)
(F)持続性知覚性姿勢誘発めまい
(2)ではめまいリハビリに加えて、心も元気にし、ストレスを減らす工夫も当然必要ですね。めまいが長引くと不安やうつ状態を引き起こし、本来の「治したい」という考えから後ろ向きな考え(認知)になってしまいますから。その場合にめまいリハビリと合わせて行う「認知療法」という治療も解説しています。
私は、これら各めまい疾患の特性を踏まえて、患者さんに最適なリハビリを選択して治療します。もちろん、高齢めまい患者の皆さんには、加齢で生じた全身の問題点を明確にし、加齢により落ちた平衡機能と残存している平衡機能とを考えてリハビリを選択することが必要ですが、それも考慮してありますからご安心を。めまい患者さんを元気づけ、リハビリが継続できるように指導していきますので、本書をめまい克服バイブルとしてご活用ください。
横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科
新井基洋