推薦の言葉
「AIが将棋・囲碁のプロに勝利」「AIで高速道路を自動運転」などの報道に驚いている間に,ルンバに代表される家電製品,スポーツ判定,ドローン映像など生活のあらゆる分野にAIが活用される時代になりました.本来,画像認識分野を中心に進化したAIは当然の如く医療にも広く応用されるようになっています.AIについてもっと知りたいと考えていても,「ディープラーニング」といった専門用語についていけず,AIの現状をわかりやすく解説した本を求めている医師は多いと思います.そんな医師にお勧めしたいのが,井川房夫先生・藤田広志先生の編著による本書「これだけでわかる!医療AI」です.
本書はAIの基礎知識,医療全般への応用の概説の後,各臓器別の医療画像にAIがどのように貢献しているかの最新情報を多くの具体的な図表や画像を示して詳しく解説されています.今まさに世界を席巻している新型コロナウイルスのAI診断や,今後重要度を増すであろう介護・看護・遺伝子分野への応用,AI利活用ガイドライン等にも紙幅が割かれており,包括的にAIを理解するための最適の書となっています.本書によって医学とAIについて頭の中を整理し,新たなアイデアを創出する一助となるでしょう.
政府はAIに関する研究開発に多くの投資を行おうとしており,それに伴い大学等の研究組織や企業はAI関連の部局・部署を新設・拡充していくものと思われます.本書は医療画像を主軸とした内容ですが,AIはVR,5G等の技術の発展を基礎にして,今後は医療ロボットや遠隔医療が広く定着していくことでしょう.読者の皆さんが本書を精読され,医学の発展のためのAI活用についてさまざまな方向性を見いだすことを祈念します.
2021年4月
岡山大学学術研究院 医歯薬学域長・脳神経外科学教授
伊達 勲
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序文
Artificial Intelligence(AI)という言葉が世の中に目につくようになり,久しくなります.我々は,その可能性に期待を持つと共に,取り残されるのではないかという不安を抱きました.そういった不安を少しでも共有し,取り除きたいと思い誕生したのが本書であります.できるだけ平易な言葉を用い,図を多く採用し,英語は日本語に変換して,どなたにもわかりやすい本を作成いたしました.共同編集の藤田広志先生には,AIの広い知見から本書を俯瞰していただき厚く御礼申し上げます.
現在,日本は人類が未だかつて経験したことのない速度で高齢化しており,医療費は2018年の経済協力開発機構(OECD)によるとGDP比世界第6位の高医療費国家となりました.したがって,今後の労働力を補うためにも,IT,AIの重要性は高まるばかりです.「シンギュラリティ(技術特異点)」という言葉がありますが,AIの進化は指数関数的で我々の予想をはるかに超え,少なくとも2045年にはAIは人類が予測できない域に達するといわれています.AIがAIを生み出すことを可能とし,人類は,AIと共に生きる共生へと進んでいくことが予想されています.その頃の働き方は想像もつきませんが,皆様には,変化をチャンスに変えていただきたいと願っています.本書がその一助になれば幸いです.
執筆をお願いした先生方は,第一線でご活躍されている方々ばかりです.ご多忙にもかかわらず,充実した内容に仕上げてくださり,この場を借りて厚く御礼申し上げます.必ずや医療AIをめざす医療関係者の方々のお役に立てると確信しており,ひいては多くの患者さん,医療社会に貢献できたら幸いです.最後になりましたが,本書にご協力いただいたすべての方々に心より感謝申し上げます.
2021年 新型コロナウイルス感染症ワクチン接種開始中より
島根県立中央病院 脳神経外科部長
井川房夫