改訂3版の序
無料統計ソフトEZRの公式マニュアルともいえる本書の第3版を発刊することになりました。EZRの開発の経緯については第1、2版の序文をご一読ください。開発当初は趣味の域をようやく超えるかどうかの程度の規模のソフトウェアでしたが、おかげさまで利用者が爆発的に増加しました。自治医科大学さいたま医療センターのホームページからのダウンロードは2019年4月時点で延べ約16万回(現在はカウントしていません)、このほかにCRAN(The Comprehensive R Archive Network)のホームページからのダウンロードも数多く行われていることと思います。無料ソフトなので大人数で同じソフトを共有できることから、大学や医療機関の講義で採用されることも多くなりました。そして、EZRの開発と使用方法について紹介した論文(2013年Bone Marrow Transplantation誌掲載)は、2020年9月時点で4000編以上の論文に引用されており(Web of Science 調査)、学術論文としては異例の引用回数となっています。引用している論文の内容をみてみると、様々な医学領域で幅広く活用されているようです。安価で簡単で高機能の統計ソフトに対するニーズがとても高かったということを反映しているのだと思います。
新たな解析機能を追加するためのバージョンアップも続けており、第2版発刊時はバージョン1.27でしたが、第3版発刊時はバージョン1.52となりました。この間には、使用頻度の高いところでは傾向スコア解析に関連したキャリパーマッチング機能、逆確率重み付け(IPTW)機能が加わり、そのほかにもRestricted mean survival time、Simon & Makuchプロット、線形混合モデル、多項ロジスティック回帰、比例オッズロジスティック回帰、時間依存性変数を含む累積発生率に対する多変量解析、ネットワークメタアナリシスなどの解析を可能にしました。第3版ではこれらの機能についても詳しく解説しています。
今後もバージョンアップなどの案内は自治医科大学附属さいたま医療センター血液科のホームページ(http://www.jichi.ac.jp/saitama-sct/)で行います。質問、要望などは中外医学社編集部のメールアドレス(ezr☆chugaiigaku.jp)にお寄せください。全てのメールに回答することはできませんが、可能な範囲でお答えいたします。問い合わせの頻度の高い質問についてはホームページにFAQとして掲載していますのでご覧ください。
EZR動作環境(32bit、64bitいずれのOSも可)
・Windows XP、Vista、7、8、8.1、10
・Mac OS X 10.5(Leopard) 〜 10.15 (Catalina)
・Linux Ubuntu 11.10 〜 20.04
・XGA(横1024×縦768ドット)以上の画面サイズが必要(縦のドット数が768未満だと一部の解析においてダイアログが部分的に表示できません)
注意 RやRコマンダーはGNU General Public License(GPL)のバージョン2 (1991年)およびバージョン3 (2007年)に従っており、EZRも同様です。従って本書添付のDVD-ROMに含まれる内容も「SampleData」フォルダに含まれるファイル以外はGPLの条件に従う範囲内であれば再配布することが可能です。ただし、R、Rコマンダーと同様にEZRは「完全に無保証」であり、EZRの使用によって何らかの損失が生じたとしても責任を負うことはできません。
2020年10月
神田善伸
※本WEBサイト上では文中の@を☆へ変換し記載しております。
出版社からのコメント
■EZRが幅広く使用されるようになり,その解説書も他にも刊行されていますが,
本家本元の本書はここ ↓ が違います! ぜひクリックして見本ページをご覧ください.
・「統計学の基礎」の解説の充実度が違う!
・「実際のEZRの操作法」の解説の充実度が違う!
・「統計解析」の解説の充実度が違う!
・「臨床研究のテクニック」の解説の充実度が違う!
・「Rの関数」の解説の充実度が違う!