序--診断学を学ぶ人のために
診断学,これはいかなる専門分野に進もうとも,医師となるものにとって基本となる学問である.患者から正確な情報を聞きだすという技法,患者を診る正確な技法,これなしには診療は始らないし,始っても舵が思わぬ方向へ向いてしまう.ここは,教科書的には習得の困難な場合が少なくない分野ではあるが,一定の法則があるのも事実である.この法則に則って得られた正確なデータベースに立脚した検査計画なり,治療計画を立てることが,良医のミニマムな必要条件である.
一方,最近は医学の進歩にともない実地診療の重要性がとみに強調されている.その影響か,国家試験でも実地の診療手技を問う問題も増加してきており,近い将来OSCEも導入されると聞く.
実際の診療に役立つ診断学書が要求される所以である.本書をコンパクトなサイズにし,実地の使用に耐えるよう考慮していただいたのは実地の場で大いに活用戴きたいからである.
本書では,診断学を学ぶ人の理解を深めるための工夫をいくつか施した.まず,各項目の前に,行動目標をたて,何を読み取るかを知ったうえで,読み進んでいただきたい.更に項目の最後にキーワードを付した.これは,各項目を読み終わって,重要な単語について理解できているかを確認するためである.また,将来の国家試験にも対応できるようOSCEについても概略触れた.
本書が,手あかでよごれて病棟にある姿を見ることがあれば,これに勝る喜びはない.
末筆になるが,本書の企画の段階から,真摯に御相談に乗っていただき的確なアドバイスも戴き,さらには編者の無理を聞いてくださった中外医学社荻野邦義氏には心より深謝したい.
2000年12月
編集者