認知症の排泄ケア ベッドサイドマニュアル
榊原隆次 編著 / 関戸哲利 編著 / 西村かおる 編著
A5判 218頁
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
ISBN978-4-498-06438-6
2020年09月発行
在庫あり
認知症の排泄ケア ベッドサイドマニュアル
榊原隆次 編著 / 関戸哲利 編著 / 西村かおる 編著
A5判 218頁
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
ISBN978-4-498-06438-6
2020年09月発行
在庫あり
認知症の方の排泄(排尿と排便の働き)の困りごとについて解説する唯一無二の書! 最近まで対処法がないものと考えられてきた認知症の排泄障害だが,その背景が明らかになるにつれて効果的な治療も可能となってきた.現場の「なまの声」への対処法を,医師・看護師などの医療者,家族会・介護支援専門員などの支援者たるエキスパートが実践的に説く.
巻頭言
このたび,中外医学社から本書『認知症の排泄ケア ベッドサイドマニュアル』が発刊されることになりました.排泄(はいせつ)とは,排尿(膀胱)と排便(腸管)の働きをまとめた言葉です.本書は,認知症の方の排泄の困りごとについて解説したものです.
泌尿器科,消化器科の先生方に知られておりますように,認知症の方の,内視鏡で異常がない機能性の排泄障害は,以前は,「認知症によるもので,対処のしようがないもの」と考えられがちでした.ところが最近,認知症がごく軽度またはほとんどない年配の方にも,排泄障害(過活動膀胱と便秘)が高頻度にみられることが明らかとなってきました.その背後にあるものがある程度明らかにされ,メカニズムに応じた,効果的な治療ができるようになってきました.
以下のことが明らかとなってきています.
・若年性アルツハイマー病では,認知症が目立ちますが,過活動膀胱・便秘や歩行障害が目立たないこと.
・高齢の方では,かくれ脳梗塞とアルツハイマー病の2疾患の合併が多く,このうちかくれ脳梗塞が,過活動膀胱と歩行障害(ちょこちょこ歩き・左右に足が開いている)を早くからきたすこと.
・最近注目されているレビー小体型認知症は,脳だけでなく末梢神経(腸管壁内神経叢)にも病気が及ぶために,便秘・イレウスを早くからきたし,溢流性便失禁もみられること.
・高齢の方は,脳の病気の他に,全身(各診療科)の合併症も多いものです.おなかの手術後の癒着性イレウス,前立腺肥大症(男性),糖尿病・腰椎症による残尿(便秘),腹圧性尿失禁(女性),夜間多尿,薬の効きすぎによる残尿便秘,廃用性萎縮(椅子から立ち上がれない,サルコペニアともいいます),整形外科の病気(膝関節症・腰椎症)による痛み,発熱/脱水/手術後や悪性腫瘍の方にみられるせん妄(脳症ともいいます)など.
・一方,認知症が進行すると(認知の物差しであるミニメンタルテストが10点以下など),トイレの場所がわからない,トイレで排尿排便する意思がない,尿便失禁をしても教えず平気でいる,などの認知機能・意欲の低下のため失禁をしてしまいます.さらに,1時間に10回以上ナースコールを呼ぶなどのいらいら症状(膀胱のBPSD[認知症の行動・心理症状]ともいいます)がみられることもあります.
これらの,認知症の方の排泄の困りごとに対して,ケアと治療の試みがされてきています.本書は3章からなります.
第1章「どんなパターンがあるの?」は症例提示です.排泄の困りごとがあった時,似たパターンを探しますと,その背後にあるものと,具体的な方策を知ることができるように思います.
第2章「もうちょっと知りたい!」 は質問と答えです.まとまった答えを得ることができるように思います.
第3章「もっと詳しく知りたい!」 は総論編です.認知症・高齢者・排泄をもっと知りたい方のために,第1・2章のもとになる考え方・研究について知ることができるように思います.
本書は,認知症の方と共に歩んでおられる家族会,介護支援専門員,医療社会福祉士,市の高齢者福祉課,認知症専門看護師,理学療法士,臨床心理士,脳神経内科,精神科,老年内科,泌尿器科,婦人科,消化器内科外科その他の皆様方に,直接ご執筆を依頼して,完成したものです.すなわち,認知症の方の排泄の困りごとの「なまの声」に対して,対処法を,エキスパートの立場からわかりやすく解説する実践の書です.ぜひ,手に取ってお役立ていただけますと幸いです.
なお本書は,中外医学社から出版されました『神経因性膀胱ベッドサイドマニュアル』,『神経・精神疾患による消化管障害ベッドサイドマニュアル』の姉妹編でもあります.併せて御覧いただけますと幸いです.最後に,編集発刊に向け終始ご助言を賜りました,中外医学社 五月女謙一さん・中畑 謙さんに心より深謝申し上げます.
2020年8月
目次
1章 どんなパターンがあるの?
1 [在宅]前立腺肥大症と過活動膀胱の治療中,薬を頻回になくす患者と
付き添い(認知症の疑い 軽度認知障害) 82歳 [谷口珠実]
2 [在宅]骨盤臓器脱の治療中,説明と了解が難しい患者
(認知症と神経症の合併の疑い) 78歳 [関口由紀 中村綾子 増田洋子]
3 [在宅]若年性レビー小体型認知症(パーキンソン病が広がった形)
初期男性の過活動膀胱 63歳 [榊原隆次]
4 [在宅]若年性アルツハイマー病女性の夜間のおむつふとん漏れ 61歳
[大内みふか 林みゆき 橘田岳也]
5 [入院急性期]前立腺がん精査中,尿閉・有熱性尿路感染症と
同時に歩けなくなり,せん妄が出現した男性 71歳 [横山剛志 吉田正貴]
6 [入院急性期]大腿骨頸部骨折で整形外科入院中,頻尿と認知症の
両方で相談があった女性 85歳 [横山剛志 吉田正貴]
7 [入院急性期]脳梗塞急性期で入院中,尿失禁と認知症/高次脳機能
障害の両方で相談があった男性 70歳 [吉田美香子 本間之夫]
8 [在宅]レビー小体型認知症(パーキンソン病が広がった形)で
頻尿・尿失禁の相談があった男性 75歳 [吉田美香子 本間之夫]
9 [在宅]尿道留置カテーテルと認知症の両方で相談があった
膀胱がんの男性 90歳 [小内友紀子]
10 [グループホーム]子宮頸がん手術後の尿道留置カテーテルと
認知症の両方で相談があった女性 85歳 [小内友紀子]
11 [老人保健施設]頻尿とトイレ・おむつの使用がうまくできない
男性 85歳 [柴田千晴 山西友典]
12 [ショートステイ]夜間頻尿と認知症の両方で相談があった
男性 95歳 [鈴木康之 倉脇史郎] 36
13 [特別養護老人ホーム]強い尿意と認知症の両方で相談があった
女性 100歳 [上島千春 中田真木]
14 [特別養護老人ホーム]失禁による皮膚びらんと認知症の両方で
相談があった女性 95歳 [阿部由依 秋田珠実 橘田岳也]
2章 もうちょっと知りたい!
[A.認知症の全般的事項]
1 認知症の人と家族の会は,どのような会ですか? [広岡成子]
2 認知症の方に対する接し方とケアはどのようにするとよいでしょうか?
[広岡成子]
3 地域での認知症の気づきと,それに続く医療・介護の施策には
どのようなものがありますか? [緑川由佳]
4 クリニック・病院内での認知症の気づきと,それに続く医療の
窓口にはどのようなものがありますか? [鈴木惠子]
5 認知症のものさし(簡易認知症評価表)にはどのようなものがありますか?
[尾形 剛]
6 歩行障害の評価にはどのようなものがありますか? [寺山圭一郎]
7 急性せん妄/脳症の対処,認知症の行動・心理症状(BPSD:不眠,
不穏,大声,妄想幻覚)の対処を行うべきでしょうか? [榊原隆次]
8 せん妄/脳症・認知症の行動異常に対する抑制手技(ミトン,抑制帯)
を減らすことはできますか? [飯村綾子]
[B.下部尿路機能障害]
9 下部尿路機能障害の入院・外来診療上のケアにはどのようなものがありますか?
[矢野 仁 鈴木啓悦]
10 排尿日誌を用いた評価とはどのようなものでしょうか?
[杉崎裕香 加藤精二 矢野 仁]
11 残尿測定とはどのようなものでしょうか? [杉崎裕香 加藤精二 矢野 仁]
12 「排せつ支援加算」(介護保険)のためにどのような評価・支援が
よいでしょうか? [鈴木基文]
13 過活動膀胱とはどのようなものでしょうか? [網谷兆康]
14 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で過活動膀胱のあるとき,
薬物治療はどのように対処したらよいでしょうか? [朝倉博孝 篠島利明]
15 前立腺肥大症とはどのようなものでしょうか? [納谷幸男]
16 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で前立腺肥大症があるとき,
薬物治療はどのように対処したらよいでしょうか? [大池 洋 石塚 修]
17 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で前立腺肥大症があるとき,
手術治療はどのように対処したらよいでしょうか? [大池 洋 石塚 修]
18 低活動膀胱とはどのようなものでしょうか? [関戸哲利]
19 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で低活動膀胱(UAB)が
あるとき,どのように対処したらよいでしょうか? [関戸哲利]
20 腹圧性尿失禁とはどのようなものでしょうか?[加藤久美子 渡邊日香里 後藤百万]
21 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で腹圧性尿失禁があるとき,
どのように対処したらよいでしょうか?[加藤久美子 渡邊日香里 後藤百万]
22 骨盤臓器脱とはどのようなものでしょうか? [巴ひかる]
23 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で骨盤臓器脱があるとき,
どのように対処したらよいでしょうか? [巴ひかる]
24 夜間多尿とはどのようなものでしょうか? [阿波裕輔]
25 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で夜間多尿があるとき,
どのように対処したらよいでしょうか? [内山智之 村井弘之]
26 認知症とその排泄障害(排尿・排便)について漢方は有効でしょうか? [大岡均至]
[C.下部消化管機能障害]
27 排便日誌・ブリストル便形態を用いた評価はどのようなものですか?[神山剛一]
28 便秘・溢流性便失禁はなぜ起きるのでしょうか? [榊原隆次 土井啓員]
29 認知症の方(ごく軽度のものも含む)で,便秘・溢流性便失禁があるとき,
どのように対処したらよいでしょうか? [榊原隆次 土井啓員]
[D.機能性尿(便)失禁への対処]
30 認知症に対する認知行動療法は尿・便失禁にも有効でしょうか?[西村かおる]
31 認知症の薬物療法は尿(便)失禁に有効でしょうか? [山本達也]
32 身体機能改善目的のリハビリテーションは尿(便)失禁に有効でしょうか?
[山本達也]
33 レビー小体型認知症(ごく軽度のものも含む)の方で,
歩行障害の薬物療法は尿失禁にも有効でしょうか? [山本達也]
34 尿・便失禁に対する行動療法は有効でしょうか? [西村かおる]
35 尿・便失禁に対するおむつはどのようなものが有効でしょうか?[西村かおる]
3章 もっと詳しく知りたい!
[A.認知症とは?]
1 認知症の症状 [細井尚人]
2 認知症をきたす疾患 [長谷川 浩]
3 認知症の検査 [長谷川 浩]
4 認知症の治療の進め方 [桂川修一]
5 歩行障害の治療 [寺山圭一郎]
6 認知症患者と家族の心のケア [尾形 剛]
[B.下部尿路機能障害とは?]
7 下部尿路機能障害の症状 [千葉博基 橘田岳也]
8 下部尿路機能障害をきたす疾患と病態 [東郷未緒 橘田岳也]
9 下部尿路機能障害の検査 [高橋 修 清水彩未 杉山 恵 榊原隆次]
10 下部尿路機能障害の治療 [山西友典]
[C.下部消化管機能障害とは?]
11 下部消化管機能障害の症状 [味村俊樹]
12 下部消化管機能障害をきたす疾患 [味村俊樹]
13 下部消化管機能障害の検査 [榊原隆次 土井啓員]
14 下部消化管機能障害の治療〜内科的治療を中心に〜[三澤 昇 中島 淳]
15 肛門括約筋障害による排便困難・便失禁 [味村俊樹]
[D.高齢認知症患者の排泄障害の治療]
16 要介護高齢者の排泄障害に対する薬物治療の基本的方針 [鈴木基文 井川靖彦]
17 高齢認知症患者の排泄障害の考え方〜非薬物療法を中心に〜[佐藤和佳子]
索引
執筆者一覧
榊原隆次 東邦大学医療センター佐倉病院脳神経内科教授 編著
関戸哲利 東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科教授 編著
西村かおる コンチネンスジャパン株式会社専務取締役 編著
谷口珠実 山梨大学大学院総合研究部医学域健康・生活支援看護学講座教授
関口由紀 女性医療クリニック LUNAグループ理事長
中村綾子 女性医療クリニック LUNAネクストステージ院長
増田洋子 女性医療クリニック LUNA横浜元町看護師長
大内みふか 北海道医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科助教
林 みゆき 北海道大学病院看護部
橘田岳也 北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学講師
横山剛志 国立長寿医療研究センター看護部副看護師長
吉田正貴 国立長寿医療研究センター 副院長/泌尿器外科部長
吉田美香子 東北大学大学院医学系研究科ウィメンズヘルス・周産期看護学准教授
本間之夫 日本赤十字医療センター院長
小内友紀子 ときわ会常磐病院泌尿器科
柴田千晴 獨協医科大学病院排泄機能センター
山西友典 獨協医科大学病院排泄機能センター主任教授
鈴木康之 東京都リハビリテーション病院副院長/泌尿器科
倉脇史郎 東京都リハビリテーション病院泌尿器科
上島千春 三井記念病院産婦人科
中田真木 三井記念病院産婦人科医長
阿部由依 北海道科学大学保健医療学部理学療法学科/
北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学
秋田珠実 北海道大学病院看護部
広岡成子 公益社団法人認知症の人と家族の会千葉県支部
緑川由佳 佐倉市福祉部高齢者福祉課包括ケア推進班
鈴木惠子 東邦大学医療センター佐倉病院精神保健福祉士
尾形 剛 東邦大学医療センター佐倉病院脳神経内科公認心理師・臨床心理士
寺山圭一郎 東邦大学医療センター佐倉病院リハビリテーション部
飯村綾子 東邦大学医療センター佐倉病院認知症看護認定看護師
矢野 仁 東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科講師
鈴木啓悦 東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科教授
杉崎裕香 東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科
加藤精二 東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科助教
鈴木基文 東京大学医学部泌尿器外科学准教授
網谷兆康 国保旭中央病院泌尿器科部長
朝倉博孝 埼玉医科大学病院泌尿器科教授
篠島利明 埼玉医科大学病院泌尿器科准教授
納谷幸男 帝京大学ちば総合医療センター泌尿器科教授
大池 洋 信州大学医学部泌尿器科
石塚 修 信州大学医学部泌尿器科教授
加藤久美子 名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科部長
渡邊日香里 名鉄病院泌尿器科・ウロギネセンター
後藤百万 独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院院長
巴 ひかる 東京女子医科大学東医療センター骨盤底機能再建診療部教授
阿波裕輔 船橋クリニック泌尿器科
内山智之 国際医療福祉大学医学部・市川/成田病院脳神経内科教授
村井弘之 国際医療福祉大学医学部神経内科学主任教授
大岡均至 国立病院機構神戸医療センター泌尿器科部長
神山剛一 医療法人俊和会寺田病院外科・胃腸科・肛門科
土井啓員 東邦大学医療センター佐倉病院薬剤部
山本達也 千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科教授
細井尚人 袖ケ浦さつき台病院認知症疾患医療センターセンター長
長谷川 浩 杏林大学医学部総合医療学・高齢医学/もの忘れセンター教授
桂川修一 東邦大学医療センター佐倉病院メンタルヘルスクリニック教授
千葉博基 北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学助教
東郷未緒 北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学
高橋 修 東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部
清水彩未 東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部
杉山 恵 東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部
味村俊樹 自治医科大学外科学講座消化器一般移植外科学部門教授
三澤 昇 横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学
中島 淳 横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学主任教授
井川靖彦 長野県立信州医療センター泌尿器科部長
佐藤和佳子 山形大学大学院医学系研究科看護学専攻教授
株式会社中外医学社 〒162-0805 東京都新宿区矢来町62 TEL 03-3268-2701/FAX 03-3268-2722
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