EBM血液疾患の治療 2003-2004
押味和夫 他編著
A5判 740頁
定価10,450円(本体9,500円 + 税)
ISBN978-4-498-12512-4
2002年09月発行
在庫なし
EBM血液疾患の治療 2003-2004
押味和夫 他編著
A5判 740頁
定価10,450円(本体9,500円 + 税)
ISBN978-4-498-12512-4
2002年09月発行
在庫なし
赤血球の疾患,白血病,悪性リンパ腫,骨髄腫,凝固・血小板異常,支持療法・輸血造血幹細胞移植治療の問題点につてを最新のエビデンスをもとにいかに理解し,治療にあたったらよいかを示した.
今日の日常の診療で問題となるテーマ,判断に迷うようなテーマ100余について,解説・指針・エビデンス・根拠となった臨床研究の問題点と限界・本邦の患者に適応する際の注意点・コメント・文献にわたり各々の第一人者が解説にあたった.
序
最近わが国でもevidence-based medicine(EBM:根拠にもとづいた医療)という言葉が広がり,この言葉の普及とともに,EBMと略称で呼ばれることも多くなってきた.EBMでは,確かな情報にもとづいて個々の患者に対し最適な医療を行うことを目的としている.
医学的にエビデンス,すなわち根拠あるいは証拠とよばれるものにはさまざまな質(レベル)のものがある.たとえば,ランダム化比較試験から得られる結果はエビデンスのレベルとしては高いが,さらに高いレベルのエビデンスとしては,複数の同様の試験結果をプールして解析したメタアナリシス(meta-analysis)がある.エビデンスといってもさまざまな質のものがあるため,どのレベルのエビデンスであるかに注意する必要がある.
とくに血液疾患では,頻度の低い疾患が多い.頻度が低いと,同じような症例を多数集めてランダム化比較試験を行うのがむずかしくなる.多数例の解析が不可能なときは,どうしてもエビデンスのレベルは低下する.また,示されたデータが日本人での試験結果ではなく欧米人のものだったりすることも多い.日本人で同じ成績が得られるとは限らない.
エビデンスにもとづいた診療をたえず心がけていたとしても,このような理由から,われわれが日常診療の場で困ることは数多い.たとえ専門家でさえも,判断に迷うことがしばしばある.このような状況下で,これまでに得られたエビデンスを整理し,現在何がもっとも真実に近い治療法なのかを専門の先生方に解説してもらうことは,時宜を得た企画と思った.そこで,専門分野が異なる4人の編集者が日頃疑問に思っている事柄を列挙し,各界の第一人者に答えていただいたのが本書である.
本書が血液学専門医のみならず多くの医師,研修医,看護師にとって,有益かつ楽しい書となることを祈るとともに,多忙な折に執筆をお引き受けいただいた先生方にこの場を借りて深謝する次第である.
最後に蛇足ではあるが,血液内科の診療を行うにあたってはevidenceが重要なのは当然のことだが,expertise (専門の技術・知識とでも訳すのか) を研鑽し続けることも必要不可欠であることを付け加えたい.
2002年8月
編者
目 次
I. 赤血球の疾患
1. 鉄欠乏性貧血の治療として経口鉄剤の至適投与方法は?…〈浦部晶夫〉
a) ビタミンCの併用は不可欠か?
b) お茶を飲んではいけない?
c) 長期内服しても鉄過剰症にはならない?
2. 鉄欠乏性貧血にピロリ菌の除菌が有効か?…〈内田立身 本田豊彦〉
3. 鉄欠乏性貧血における非経口鉄剤の適応と至適投与方法は?…〈鳥本悦宏 高後 裕〉
4. 悪性貧血の治療にビタミンB↓12↓の経口投与は有効か?…〈池田柊一〉
5. 温式抗体による自己免疫性溶血性貧血の治療をどう行うか?…〈小松則夫〉
6. 冷式抗体による自己免疫性溶血性貧血に有効な薬物は何か?…〈木村文彦〉
7. 遺伝性球状赤血球症―どのような症例にいつ脾摘を行うか?…〈石田陽治〉
8. 腎性貧血の治療…〈坂口俊文 秋澤忠男〉
9. 慢性疾患に伴う貧血(ACD)にエリスロポエチンは有効か?…〈今川重彦〉
10. 再生不良性貧血の治療…〈中条達也〉
a) 蛋白同化ホルモンは有効か?
b) 至適な免疫抑制療法は?
c) ATGの反復投与は有効か?
11. 再生不良性貧血の輸血 : 赤血球輸血と血小板輸血の目安…〈武藤良知〉
12. 再生不良性貧血におけるG-CSF療法は?…〈小島勢二〉
a) 適応
b) MDS/AML発症,染色体異常との関連
13. 発作性夜間血色素尿症の治療…〈七島 勉 池田和彦〉
a) 溶血発作の対応は?
b) 血栓症の予防をどう行うか?
c) 輸血は洗浄赤血球か?
14. 発作性夜間血色素尿症の治療―蛋白同化ホルモン? 免疫抑制剤?移植をどう行うか?…〈寺村正尚〉
15. PRCAの治療―胸腺摘出は不可欠か? 免疫抑制剤をどう選択するか?…〈富山順治〉
16. 骨髄異形成症候群の治療をどう行うか? : 免疫抑制剤をどう選択するか?…〈松田 晃〉
a) 免疫抑制療法は有効か? その適応は?
b) 分化誘導療法は有効か? その適応は?
17. 骨髄異形成症候群の治療をどう行うか? : 化学療法の適応…〈松田光弘 金丸昭久〉
18. 骨髄異形成症候群におけるG-CSF療法…〈通山 薫〉
a) 適応は?
b) 白血病化を促進するか?
19. 骨髄異形成症候群における造血幹細胞移植--どのようなケースに,どのような時期に,どのような移植を行うか?…〈長藤宏司 原田実根〉
20. 真性赤血球増加症の治療―瀉血,化学療法(含,二次性白血病発症の問題),抗血小板療法の選択基準は?…〈木村之彦 大屋敷一馬〉
II. 白血病
A. 急性骨髄性白血病
1. 急性骨髄性白血病第一寛解期の予後予測因子として,現時点で最も有用な指標はなにか?…〈宮脇修一〉
2. 急性骨髄性白血病に対する第一寛解期での至適治療法は?…〈秋山秀樹〉
3. 急性前骨髄球性白血病の初回治療でATRAと化学療法をどのように組み合わせればよいか?…〈高山信之〉
a) 寛解導入療法でATRAは化学療法と併用すべきか?
b) 寛解後療法(維持療法)にATRAを加えるべきか?
4. ATRAで治療された急性前骨髄球性白血病の再発はどのように治療すべきか?…〈澤藤かの子 木崎昌弘〉
5. 予後中間群(intermediate risk group)の予後はより詳細に予測できる?…〈宮崎泰司 栗山一孝〉
6. 治療選択におけるMRDの有用性はどこまで明らかにされたのか?…〈小川啓恭〉
7. 予後不良群(poor risk group)の治療として造血幹細胞移植は化学療法に勝るか?…〈高橋 聡〉
8. Mylotargの有用性はどこまで明らかになったか?…〈小林幸夫〉
9. 高齢者AMLの治療目標…〈森 真由美〉
a) QOLを重視した生存期間の延長か,それとも治癒か
b) 治療選択に有用な指標は
10. P-glycoproteinに起因する薬済耐性の克服法はAMLの予後を改善したか?…〈泉二登志子〉
B. 急性リンパ性白血病
1. 第一寛解期の予後予測因子 : 現時点で最も有用な指標は何か?…〈陣内逸郎〉
2. 思春期ALLは成人,小児いずれのレジメンで治療すべきか?…〈堀部敬三〉
3. 成人ALL第一寛解期の化学療法…〈竹内 仁〉
a) 寛解後強化療法は有用か?
b) 維持療法の有用性は明らかにされたか?
c) 中枢神経系白血病(CNSL)の至適予防法は?
4. 治療選択におけるMRDの有用性はどこまで明らかにされたのか?…〈横田昇平 岡本朋美〉
5. 成人ALL第一寛解期に対する造血幹細胞移植の適応…〈河野文夫 眞田 功〉
a) 予後予測因子に基づく層別化治療としての同種造血幹細胞移植の有用性はどこまで明らかになったか
b) 自家造血幹細胞移植の適応はあるか
C. 急性白血病の化学療法
1. 急性白血病の寛解導入療法あるいはこれに準ずる化学療法を施行する場合の輸血は?…〈石田 明〉
2. 急性白血病の化学療法後にG-CSFを併用することで予後は改善するのか?…〈北野喜良〉
D. 慢性骨髄性白血病
1. 慢性期慢性骨髄性白血病の初回治療…〈森下剛久〉
2. Interferon α抵抗性の慢性期慢性骨髄性白血病の治療…〈岡本真一郎〉
a) HLA適合同胞が得られた場合,同種造血幹細胞移植は治療の第一選択か?
b) HLA適合同胞が得られない場合,治療の第一選択は非血縁者からの同種造血幹細胞移植かSTI571(Glivec)か?
3. Interferon αによって,minor/partial cytogenetic responseが持続的に得られている場合の治療選択は?…〈大西一功〉
4. Interferon αによってcomplete cytogenetic responseが得られた後の治療…〈田内哲三 大屋敷一馬〉
a) いつまでInterferon αを続けるべきか?
b) 治癒が得られたと考えてよいのか?
5. STI571(Glivec)の至適投与法は?…〈薄井紀子〉
a) 慢性期の場合
b) 移行期/急性期の場合
E. 慢性リンパ性白血病…〈待井隆志〉
1. Rai/Binetのstagingが現時点においても治療開始時期の至適な指標か?
a) いつから治療を開始するのか?
b) Fludarabineは治療の第一選択か?
2. HLA適合同胞が得られれば,同種造血幹細胞移植を施行すべきか?…〈谷本哲也 上 昌広〉
III. 悪性リンパ腫
1. 限局期Hodgkin病の治療法として最も優れている方法は?…〈笹井啓資〉
2. Hodgkin病の化学療法で最も優れているのは?…〈江崎幸治〉
3. 濾胞性リンパ腫では,rituximabと併用する化学療法剤は何がいいのか?…〈木下朝博〉
4. 濾胞性リンパ腫では,どのような時期にどのような種類の造血幹細胞移植を行うのがいいのか?…〈下田和哉 権藤久司〉
5. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではどのような化学療法が最も優れているのか?
また,サルベージ療法では何が最も優れているのか?…〈高木省治郎〉
6. びまん性大細胞性B細胞リンパ腫に対するrituximabを用いた治療は?…〈畠 清彦〉
7. bi-weekly CHOP療法はstandard CHOP療法よりも本当に優れているのか?…〈大間知 謙〉
8. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では,どのような時期にどのような種類の造血幹細胞移植を行うのがいいのか?…〈田中淳司〉
9. マントル細胞リンパ腫で治癒可能な治療法はあるのか?…〈小椋美知則〉
10. Burkittリンパ腫に最も有効な治療法は何か?…〈磯部泰司〉
11. リンパ芽球性リンパ腫に最も有効な治療は何か?…〈古川雄祐 加納康彦〉
12. 胃のMALTリンパ腫とびまん性大細胞型リンパ腫に最も有効な治療は何か?…〈小林幸夫〉
13. 鼻NK細胞リンパ腫に最も有効な治療法は何か?…〈山口素子〉
IV. 骨髄腫
1. 多発性骨髄腫の化学療法…〈藤井 浩〉
a) 治療の第一選択はmelphalan+prednisolone(MP)療法か?
b) VAD療法はdexamethazone(DEX)単独投与に勝るか?
c) VAD療法を選択すべき症例は?
2. 多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植…〈西村美樹〉
3. 同種造血幹細胞移植は自家移植に勝るか?…〈一戸辰夫〉
4. 多発性骨髄腫の感染予防に免疫グロブリンの投与は有用か?…〈吉田 稔〉
5. サリドマイドの有効性,毒性はどこまで明らかになったのか?…〈柿本綱之〉
6. Bisphosphonateは骨髄腫の骨病変の予防法として有効か…〈原 朋子 小阪昌明〉
7. 多発性骨髄腫の層別化治療に有用な予後因子は?…〈村上博和 半田 寛〉
V. 凝固・血小板異常
1. 特発性血小板減少性紫斑病に対する脾摘について…〈藤村欣吾〉
a) どのような症例に対し,どの時期に脾摘にふみきるか?(適応)
b) 長期的にみた場合の有効率,治癒率は?
c) 開腹手術と腹腔鏡下手術のどちらかを選択すべきか?
2. 特発性血小板減少性紫斑病難治例に対する治療法…〈長澤俊郎〉
3. 特発性血小板減少性紫斑病に対するH. pylori除菌療法について…〈檀 和夫〉
a) どのような症例に試みるべきか?
b) 慢性型ITP治療の選択枝の一つになりうるか?
4. 特発性血小板減少性紫斑病合併妊産婦の治療・管理について…〈中村 靖〉
a) ステロイド投与は妊娠の継続,胎児の発育に悪影響を及ぼさないのか?
b) 分娩法は経腟分娩でよいのか,帝王切開にすべきか?
c) 臍帯穿刺は必要か?
5. 血栓性血小板減少性紫斑病に対する血漿療法について…〈加藤 淳〉
a) 血漿交換と血漿輸注はどちらが優れた治療法か?
b) 具体的な治療スケジュールはどのようにしたらよいか?
6. 血栓性血小板減少性紫斑病に対する治療で,血漿療法以外の薬物療法その他の治療をどのようにしたらよいか?…〈末廣 謙〉
7. 溶血性尿毒症症候群の治療はどのようにしたらよいのか?
血漿交換を主体としたTTPの治療法とは,区別して考えるべきか?…〈中島 充 吉岡 章〉
8. 播種性血管内凝固症候群における凝固亢進状態,線溶亢進状態は区別して評価することが可能か?
その場合どのような検査項目が有用か? また治療効果の判定に有用な検査項目は?…〈小山高敏〉
9. 播種性血管内凝固症候群に対する治療はどのようにすればよいのか?…〈岡嶋研二〉
10. 血友病の治療はどのようにすればよいのか?…〈嶋 緑倫〉
11. 難治性の血友病患者(高力価のインヒビター陽性例)の治療…〈佐々木昭仁 福武勝幸〉
12. 非血友病患者にみられる第VIII因子インヒビター : 診断と治療…〈高松純樹〉
13. von Willebrand病の治療はどのようにすればよいのか?…〈高橋芳右〉
14. 抗リン脂質抗体症候群の治療はどのようにすればよいのか?
a) 血栓症に対する治療,血栓症予防目的の治療は?…〈齊藤 幸 渥美達也 小池隆夫〉
b) 抗リン脂質抗体症候群合併妊婦の妊娠・分娩管理をどう行うか?…〈杉 俊隆〉
15. 原発性血小板血症の治療について…〈冨山佳昭〉
a) 血小板数をいくらに保てばよいのか?
b) どのような症例にhydroxyureaなどの抗癌剤やアスピリンなどの抗血小板薬を投与すべきか?
VI. 支持療法・輸血
1. 輸血による鉄過剰症の予防と治療は?…〈加藤淳二〉
2. 出血傾向の強い患者に対する解熱・鎮痛剤として何が適当か? 血小板機能抑制作用の少ない薬剤は何か?…〈矢崎 晃 西川政勝〉
3. 好中球減少患者に合併した感染症はどのように治療すればよいのか?抗生剤の選択,投与量,投与期間,薬剤変更の指標…〈神田善伸〉
4. 血小板輸血の適応・方法…〈半田 誠〉
a) 血小板数をいくらに保てばよいか? 予防的血小板輸血の基準は?
b) 1度に何単位輸血すればよいか?
c) 血小板輸血不応状態と白血球除去フィルターの効果
5. 真菌感染症のempiricalな治療は何を指標として開始すべきか?…〈森 健〉
a) neutropenic feverが抗生剤に反応しない場合,すぐにamphotericin Bを始めるべきか?
b) 真菌の血清・遺伝子診断の有用性は?
6. B型肝炎ウイルスキャリアに化学療法を施行する場合,抗ウイルス薬を使用すべきか?…〈権藤久司 林田一洋 佐田通夫〉
VII. 造血幹細胞移植
1. 同種造血幹細胞移植の造血幹細胞sourceとして末梢血は骨髄に勝るか?…〈品川克至〉
2. 骨髄非破壊的移植(ミニ移植)の前処置としてどのような方法が優れているか?…〈吉田 喬〉
3. 急性GVHDの予防および治療はどのような方法がよいのか? 薬剤の選択とその使い方,難治例に対する治療法は?…〈小寺良尚〉
4. 慢性GVHDの治療は,どのような方法がよいのか? 薬剤の選択とその使い方,難治例に対する治療法は?…〈田中祐次〉
5. 肝静脈閉塞症の予防および治療は,どのように行えばよいのか?
薬剤の選択とその使い方,難治例に対する治療法は?…〈御子柴路朗 大橋一輝〉
6. 移植後のドナーリンパ球輸注療法(DLI)はどのようにして行うか--移植後のDLI,輸注するT細胞量,輸注のタイミング,投与量…〈塩原信太郎〉
7. 同胞および骨髄バンクでHLA適合ドナーの得られない造血器腫瘍患者に対する移植は,
ハプロタイプ一致の血縁ドナーからのCD34陽性造血幹細胞移植,1座不一致非血縁ドナーからの移植,
非血縁者間臍帯血移植のいずれを選択すべきか?…〈加藤俊一〉
索 引
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