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書籍詳細

糖尿病性腎症の治療

糖尿病性腎症の治療

佐中 孜 編著

B5判 184頁

定価6,380円(本体5,800円 + 税)

ISBN978-4-498-02490-8

1999年06月発行

在庫なし

糖尿病性腎症をいかにひょうかして治療するかを実践的に解説した臨床書である.「早期に発見された腎症」,「進行した腎症」,「透析が必要となった場合」,「合併症の対応,扱い」を柱に「きめ細かく,具体的に,分かり易く」をモットーに簡潔に記述した.



 平成9年に国民栄養調査とともに実施された糖尿病実態調査によると,わが国の糖尿病患者はHbA↓1c↓ 6.1%以上の患者で集計すると692万人で,糖尿病の可能性のある人を含めると1370万人に及ぶという.この数値は昨年夏のある朝の新聞の一面にトップニュースとして報ぜられた.国民,皆が知るべき重大な事実であるというわけだろう.しかも,一説によると,10年後には現在の2倍,1220万人になると推計する研究者もいる.
 そうであるなら,糖尿病性腎症についてはどうなるのであろうか.
 糖尿病性腎症による慢性腎不全のために透析療法を受けている患者の数は,先の集計と同じ年が39,350名で,全体の22.7%である.10年後には同じ倍率で増加するとして単純計算すると,7万人に近くなる可能性がある.現在の透析患者数は17万名であるから,大変な数ということになる.ちなみに,当の実態調査では,糖尿病が強く疑われる人のうち糖尿病治療中の人は45.0%であったという.すなわち,糖尿病患者の約1/2〜2/3は適切な治療を受けていないとのことになる.このことを考え合わせると,糖尿病性腎症は予想以上に増加するのかもしれない.このような現実は,患者個人の問題とか,純医学的な問題に留まるのではなく,本症がわが国の経済を逼迫させるやもしれぬという重大な意味を含んでいるのである.
 このまま放置することはできない.なんとしても,糖尿病性腎症あるいは腎不全の発症進展を抑えたい.そのような思いが今回の企画の推進力になった.
 本書には,一読してご理解いただけるように,腎臓病,糖尿病,栄養管理,看護などについて,それぞれ各自の本来の専門分野を踏まえたうえで,相手の専門分野にも造詣が深い方々が執筆者として参画下さっている.その結果,これまでの類書にはない内容に仕上げることができたように感じられるが,私1人の自惚れだろうか.本書が読者の期待に応え,糖尿病性腎症そのものの発生頻度に歯止めがかかれば,望外の喜びとするところである.
 今日は,平成11年5月5日.連休の最後の日である.昨日まで2日間にわたって降り続いた雨はすっかり晴れ上がり,林間を吹きぬける風はまさに風薫る5月という素晴らしい1日だったことを最後に記して,序とさせていただくことにする.

1999年5月
佐中 孜

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目 次

I.どのような機序で糖尿病性腎症になるか…〈佐中 孜〉
  a.糖尿病性腎症発症前
  b.糖尿病性腎症発症後

II.糖尿病性腎症ではどのような病変がみられるか…〈佐中 孜〉
  a.画像診断
  b.顕微鏡的観察

III.糖尿病性腎症はどのように分類されるか…〈武田將伸,馬場園哲也〉
  a.第1期(腎症前期)
  b.第2期(早期腎症期)
  c.第3期(顕性腎症期)
  d.第4期(腎不全期)
  e.第5期(透析療法期)

IV.どのような点に注意して病態を評価するか
A.糖代謝異常
 1.血糖,ブドウ糖負荷試験とその評価…〈栗山 哲〉
  a.血 糖
  b.ブドウ糖(グルコース)負荷試験(GTT)とその評価
 2.ケトン体測定とその評価…〈栗山 哲
 3.インスリン分泌能の評価…〈甲田 豊,高澤哲也〉
  a.空腹時インスリン値(IRI)
  b.経口糖負荷試験(OGTT)時の血中インスリン値
  c.血中C-ペプチド(CPR)
  d.尿中C-ペプチド
  e.グルカゴン負荷試験(GLT)
  f.アルギニン負荷試験
  g.静脈内糖負荷試験
  h.食事負荷試験
 4.インスリン抵抗性とその評価 : インスリン感受性試験(クランプ法)〈甲田 豊,高澤哲也〉
  a.空腹時IRI
  b.インスリン(静注)テスト
  c.高インスリン正常血糖クランプ法,グルコースクランプ法
  d.ミニマルモデル
B.腎障害
 1.尿蛋白と臨床病理…〈金内雅夫〉
  a.微量アルブミン尿・蛋白尿の評価法
  b.微量アルブミン尿・蛋白尿と腎組織病変
  c.その他の尿中排泄物質
 2.腎機能検査と臨床病理…〈河田哲也〉
  a.糖尿病の腎機能評価―なにがポイントか?
  b.どうやって腎機能を評価するか?

V.糖尿病性腎症の診断…〈佐中 孜〉
  a.早期腎症
  b.顕性腎症

VI.早期に発見された腎症はどう治療すればよいか
A.食事療法の原則…〈布井清秀〉
  a.早期腎症における血糖コントロールの目標
  b.早期腎症における食事療法指導の実際
  c.具体例
  d.経口血糖降下剤療法への変更のタイミング
B.経口血糖降下剤…〈布井清秀〉
  a.経口血糖降下剤の適応
  b.経口血糖降下剤の選択とインスリン分泌能,抵抗性の臨床的評価
  c.実際の使用法
  d.インスリン療法への変更のタイミング
C.インスリン療法…〈武田 倬〉
  a.早期腎症と進展阻止に必要な治療
  b.1型糖尿病におけるインスリン治療
  c.2型糖尿病におけるインスリン治療
  d.1型糖尿病と2型糖尿病でインスリン療法に違いがあるか
  e.早期腎症での経口血糖降下剤からインスリンへの変更
  f.早期腎症の進行阻止にどの程度の血糖コントロールが必要か
  g.血糖自己測定と血糖コントロールの指標
D.血圧の管理,降圧剤の選択など
 1.糖尿病性腎症における血圧管理の意義…〈高橋千恵子〉
 2.ACE阻害薬の適応と注意点…〈朝長 修〉
 3.他の降圧剤の種類と選択…〈朝長 修〉
  a.Ca拮抗薬
  b.α↓1↓遮断薬
  c.β遮断薬
  d.中枢性降圧剤
  e.利尿降圧剤

VII.進行した糖尿病性腎症はどう治療すればよいか
A.血糖管理…〈高橋千恵子〉
B.血圧管理…〈高橋千恵子〉
C.凝固線溶系の管理…〈朝長 修〉
  a.凝固線溶異常の原因
  b.検査および治療
D.薬剤の使い方―腎機能低下を防ぐために,薬剤の副作用を避けるために〈朝長 修〉
  a.薬剤性腎障害
  b.薬剤性腎障害の対策
E.食事療法
 1.栄養指導のポイント…〈佐中 孜〉
  a.エネルギー
  b.蛋白質
  c.食 塩
  d.カリウム
  e.リン,カルシウム
  f.水 分
 2.食事療法の実際…〈橘 裕司〉
  a.栄養計算は食品成分表が基本
  b.栄養指導
  c.献立について
  d.食事療法と検査データ
  e.カリウム制限と茄でこぼし
  f.でんぷん製品について
  g.でんぷん製品の調理方法
F.ネフローゼ症候群を呈した場合の注意点…〈佐中 孜〉
  a.はじめに考えること
  b.次に考えること
  c.糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群であることが確定的になった場合
  d.ネフローゼ症候群の原因が依然不明の場合

VIII.透析療法が必要になった患者はどう扱えばよいか
A.導入時の管理
 1.導入基準…〈作家有実子,馬場園哲也〉
 2.透析方法の選択…〈作家有実子,馬場園哲也〉
  a.身体的因子
  b.日常生活様式・家庭,職場環境
  c.性 格
 3.ブラッドアクセス作製…〈鈴木利昭〉
  a.ブラッドアクセスの種類とその選択
  b.ブラッドアクセス作製時期
  c.ブラッドアクセス作製の実際
  d.術後の注意点
B.血液透析患者の管理
 1.抗凝固薬の選択…〈久保和雄〉
 2.血糖管理…〈朝長 修〉
  a.血糖コントロールの意義
  b.糖尿病の治療
  c.血糖制御の指標
  d.血糖制御の目標
  e.低血糖
  f.透析中の低血糖
  g.分食の効果
  h.低栄養に注意
  i.運動療法
 3.食事療法…〈望月隆弘〉
  a.特徴と注意点
  b.導入期の栄養管理
  c.安定期の食事療法
 4.血圧管理…〈椿原美治〉
  a.透析導入後の血圧管理の特徴と注意点(透析導入前,あるいは他の原疾患による透析患者の管理とどこが違うか)
  b.高血圧の管理
  c.透析中や透析間の低血圧管理
C.腹膜透析患者の管理
 1.血糖管理…〈中本雅彦〉
  a.CAPD
  b.CCPD
 2.食事療法…〈中本雅彦〉
  a.エネルギー
  b.蛋白摂取量
  c.脂 質
  d.塩 分
  
IX.合併症をどう扱うか
A.脳血管障害…〈氏家 弘〉
B.虚血性心疾患…〈木村暢孝,川越康博〉
C.糖尿病性足病変…〈新城孝道〉
D.不整脈…〈佐中 孜,久保和雄〉
E.低血圧…〈加藤満利子〉
F.動脈硬化症…〈西沢良記,庄司哲雄〉
G.目の合併症…〈北野滋彦〉
 1.糖尿病網膜症
 2.白内障
 3.緑内障
H.歯の合併症…〈桑澤隆補〉
I.末梢神経,自律神経障害…〈高橋良当〉
J.骨病変…〈加藤義治〉
K.泌尿器疾患(糖尿病性膀胱障害)…〈石川暢夫,合谷信行〉
L.妊娠・分娩…〈佐中真由実〉
M.貧血(非透析・透析)…〈椿原美治〉
N.高脂血症…〈園部美弥彦,宗 正敏〉

X.どの程度の運動がよいか…〈平野 宏〉
  a.運動能低下と運動療法の必要性
  b.運動療法の有効性
  c.運動療法の実施法

XI.自己管理をどうすすめるか
 1.患者教育…〈西田淳子,今村富美子〉
  a.患者指導の意義
  b.患者教育の実際
 2.糖尿病性腎症患者の血糖自己測定…〈金井千晴〉
  a.SMBGの利点
  b.SMBGの指導の実際
  c.SMBGの問題点
 3.視覚,聴覚障害者に対するインスリン注射指導…〈武田 倬〉
  a.視覚,聴覚障害者のインスリン自己注射にあたっての一般的な方法
  b.ペン型注射器用のインスリン製剤
 4.要介護患者のケア…〈大橋信子〉
  a.視力障害のある患者心理
  b.対 応
  c.声での判断
  d.曖昧な言葉を避ける
  e.状況判断が最も困難
  f.誘導時の注意点
  g.危険防止
  h.食 事
  i.導入指導
  j.家族への援助

XII.糖尿病性腎症に対する腎移植…〈馬場園哲也〉
A.腎移植の現状
B.適 応

XIII.移植前後の血糖管理…〈朝長 修〉
  a.移植前の管理
  b.手術当日の管理
  c.手術後の管理
  d.慢性期の管理
  e.適正体重の維持

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