第2版の序
2015年4月に初版を上梓してから約3年が経ちました.おかげさまで好評で多くの方に読んでいただいたようです.そのため,残りの部数も少なくなり,第2版を作るように出版社から依頼がありました.この2年間の動きとしてHBワクチンが定期接種となったことや海外からの旅行者の増加に伴って,麻疹や風疹などの我が国への持込みやキャッチアップが問題になってきました.今後の動きとして,5種混合ワクチン,2期用の3種混合ワクチン,帯状疱疹サブユニットワクチン,MMRワクチンが新しく使用できるようになりそうです.さらにHPVワクチンについても使用再開が模索されているようです.またロタやムンプスワクチンの定期接種化も待ち遠しい限りです.これらを加えて,できるだけ最新の情報が提供できるように改訂版を作成しました.
読者は,専門医から研修医,保健師や保育士までを対象にしています.最近は字数の少ない読みやすさばかりが目立つ本が多いように思われますが,この本は,内容が濃く専門医まで満足してもらえるものであると信じています.しかし,まだまだ至らないところがあると思いますので,読者の方々からご指導ご鞭撻を頂ければ幸いです.
残念ながら,初版で編集に携わっていただきました庵原俊昭先生が2016年2月にご逝去されました.後で判明したことですが,共同編集をお願いしたときにはすでに病気のことが判明していたようです.この本をどのようにするのかを二人で熱心に話し合い,何度もメールのやり取りをしたことを思い出します.また多くの部分を自ら進んで担当すると言ってくださり,この本は庵原先生の大きな遺作といえると思っています.読んで頂ければ,先生の並々ならぬ心意気を感じることができると思います.衷心より庵原俊昭先生のご冥福を祈っております.
最後に,改訂にあたり,ご多忙中ご執筆いただいた先生方に心より感謝いたします.ありがとうございました.
2018年3月吉日
寺田喜平
序
2005年に「実践予防接種マニュアル」,続いて2008年にその「改訂2版」を上梓してから約7年間も経過しました.その間に,結合型ヒブおよび肺炎球菌ワクチン,HPVワクチン,そして水痘ワクチンが定期接種となり,2016年からB型肝炎ワクチンも定期接種化が予定されています.そのほか,任意接種ではありますが,2種類のロタワクチンが接種できるようになり,わが国における予防接種もようやく世界水準に近付いてきました.しかし,ムンプスワクチンやロタワクチンの定期接種化の問題,百日咳増加への対応問題,多価混合ワクチンが少なく接種回数が多い問題など,まだまだ多くの壁が存在します.また最近,ワクチンは小児用だけでなく,高齢者用および海外渡航者用ワクチンにも注目が集まってきました.これらを追加し,改訂しないと読者の要望に答えることができないと心配していました.ちょうどその頃,今回は改訂ではなくまったく新しいワクチンの本を作成したらとの話を頂きましたので,別の新しい本を作成することにしました.その際,私だけでは力不足ですので,我が国で最もワクチンに造詣が深く,ワクチン行政にも関わっておられる三重病院の庵原先生にも編集に加わっていただきました.いろいろと話し合いながら,どのような特徴ある本を作成するのか,また執筆者などを決め,随所にいろんな工夫を入れました.もちろん庵原先生も多くの部分を執筆されました.
この本の特徴は,小児用ワクチンから高齢者用および渡航者用ワクチン,そして新型インフルエンザワクチンまで,すべてのワクチンを網羅していることです.また予防接種のリスクマネージメントや院内感染対策の予防接種から,基礎疾患を持つ児への接種まで,多方面から予防接種を取り上げました.さらに各論ではピットフォールや多くの方が疑問と思っていることなどを「ここが知りたいQ&A」で,また今後の展開について「今後の課題と問題点」で解説しています.読者は研修医から小児科専門医,ワクチン接種医などのほかに看護師や保育士までを対象にしており,この本1冊で十分予防接種については事足りるのではないかと思っています.しかし,まだまだ至らないところがあると思いますので,読者の皆様からのご指導,ご鞭撻をいただければ幸いです.
最後に,出版にあたり,ご多忙中原稿を執筆いただいた先生方に心より感謝いたします.ありがとうございました.
2015年3月吉日
寺田喜平