監修の言葉
ついに新専門医研修制度が開始になります.麻酔科学領域では,小児(6歳未満)の麻酔25件,帝王切開術の麻酔10件,心臓血管手術の麻酔(胸部大動脈手術含む)25件,胸部外科手術の麻酔25件,脳神経外科手術の麻酔25件の症例数を経験することが必要となります.ただ,いきなり心臓血管麻酔から経験することはなく,まず,一般手術麻酔から順序を経て困難な麻酔となります.麻酔科研修実況中継第1巻は麻酔科学の入門書,この第2巻の本書は各診療科の麻酔の入門書となっています.
手術麻酔は麻酔科医だけではなく,外科医,手術室看護師,薬剤師,臨床工学技士などからなるチーム医療です.本書は,メディカルスタッフからの目線で,要望,アドバイスも含まれており,メディカルスタッフとのコミュニケーションの一助にもなり,今までの入門書とは似て異なるものです.
本書で麻酔科学に興味を持っていただき,成書の購入につながることが,本書の役割と考えています.
最後に,このような企画を実現していただいた中外医学社各位に深謝致します.
2018年2月吉日
大阪医科大学麻酔科学教室 教授
南 敏明
プロローグ
〜各診療科手術にベストな麻酔管理を提供するために〜
さて,医師免許を取得してまだ2週間の藤田,中山,渡辺の3人の研修医は「患者さんを前にする緊張感」,「手術室の緊迫した空気」,「麻酔管理の綿密さ」,「他職種とのコミュニケーション」などに直面しています.
しかし,最初の1〜2週間で,「麻酔とは何か」,「手術室とは何か」のイメージがつかめてきた彼らは,逃げません.自分たちが研修医として,学ぶべき課題をみつけることができたからです.
第1巻で彼らは麻酔の基本を学びました.この第2巻では,3人の研修医が,各診療科の代表的手術に対して,最良の麻酔を行おうと奮闘する姿を描いていきます.いわゆる初期臨床研修医が,本格的に2〜3カ月研修する姿を描いていきます.
患者さんの状態だけでなく,担当する手術ごとに,適切な麻酔方法は変わります.どんな診療科の麻酔も,安全に管理できてこその麻酔科です.彼らは第2巻で各手術に対する麻酔方法に直面し,学んでいきます.腹腔鏡手術,整形外科(下肢手術・脊椎外科),脳神経外科,小児,帝王切開,呼吸器外科,心臓血管外科,電気痙攣療法,敗血症の麻酔をテーマに,それぞれの病態や手術に対するベストの麻酔管理とは何かを学んでいきます.
さて,闘志満々の藤田,中山,渡辺先生達の足音が聞こえてきました.
2018年2月
大阪医科大学麻酔科学教室
駒澤伸泰