新標準透析療法
飯田喜俊 他編著
B5判 386頁
定価9,460円(本体8,600円 + 税)
ISBN978-4-498-12408-0
2001年06月発行
在庫なし
新標準透析療法
飯田喜俊 他編著
B5判 386頁
定価9,460円(本体8,600円 + 税)
ISBN978-4-498-12408-0
2001年06月発行
在庫なし
今日の透析療法の最もスタンダードな実際を簡潔且つ具体的に示したものである.透析対象疾患の病態と治療指針,透析療法の基礎的事項,実際の方法,検査結果とその評価,食事・栄養療法,薬物の使用法,患者のケア,各種合併症の対策,リスクマネージメントなど,透析療法に関するすべてを図表を多用して分かり易く解説した.透析療法に携わる医師,スタッフの方々が必要とされる最新の知識を本書1冊で得ることが出来る充実した内容の透析マニュアルである.
序
「標準透析療法」が始めてこの世に出たのが1981年であるから,すでに20年が経過した.この間の透析事情の変遷,透析療法の種類,機器および技術の進歩については,まさに隔世の感がある.例えば,わが国の透析患者が約3万人から約20万人に増加しており,以前は原因疾患として糸球体腎炎が首位であったのが今では糖尿病性腎症が首位となり,導入患者は年々高齢化して,1999年12月末で63.38歳となっている.したがって,各種の合併症をもつ患者が著しく増加し,以前の透析技術では適切な治療は実施困難となっている.
一方,この間の透析療法の進歩はめざましく,治療内容も血液透析以外にCAPD,HF,HDF,血漿交換,吸着療法,血液潅流など多岐にわたり,対象疾患・病態によって適切に選択されるようになった.また,透析機器・技術面では各種の優れた透析膜,ダイアライザー,透析液,UFRコントローラー,水処理装置などが全く一変して安楽かつ良質の透析療法が行われるようになり,薬物面でも腎性貧血に対するrHuEPOなどにより患者のQOLが向上するようになった.これに伴って患者はさらに高齢化し,長期透析者も増加して20年以上経過した患者が約1万人に達している.
このような患者の高齢化や長期間の透析などにより,近年,各種の透析合併症.例えば透析アミロイドーシス,骨障害や心・血管合併症などが増加しており,患者のQOLの低下や社会復帰困難の原因となっていることも事実で,その対策や解決は緊急かつ重要な課題といえる.
これらの情勢の変化や治療の著しい進歩に対しては,本書の部分的改訂によってはとても対応できないので,この度本書の著者を一新し,それぞれの分野における最適な先生方に執筆していただいて,「新 標準透析療法」として登場することになった.これにより,旧著と比べて全く新しくかつ充実した内容になり,透析療法の技術的な面は勿論のこと,現在かかえている基礎から臨床までの諸問題や各種合併症の対策まで具体的かつわかりやすく示したものとして,書名のごとく「最新」にして「標準的」な透析療法書になり得たものと考えている.
本書が透析療法に関与しておられる医師,看護婦,臨床工学技士,栄養士,ケースワーカーなど諸分野の方々にとって優れた教師・先輩・相談相手となることができ,良きチームワークがなされて最新・最良の透析療法を行うことができれば,編者らの喜びこの上もない.
おわりに,ご多忙な先生方の優れた原稿の執筆に対し,心から感謝します.また,終始熱心に企画,編集,校正をして下さった中外医学社の萩野邦義氏,稲垣義夫氏に深くお礼を申し上げます.
2001年6月
飯田喜俊
秋澤忠男
椿原美治
目 次
§1.透析療法の概要〈飯田喜俊〉
a.血液浄化療法
b.HD
c.CAPD,APD
d.血液濾過法(HF)
e.血液透析濾過法(HDF)
f.持続的血液浄化法
g.血液吸着法
h.血漿吸着法
i.血漿交換療法(プラスマフェレシス)
j.白血球系細胞除去療法(サイタフェレシス)
§2.透析療法対象疾患・病態と治療方針〈阿部貴弥,秋澤忠男〉
1.慢性腎不全
a.慢性腎不全の一般的治療
b.糖尿病性腎症と腎硬化症
c.非糖尿病・非腎硬化症患者
2.急性腎不全(多臓器不全を含む)
a.急性腎不全の分類
b.急性腎不全の鑑別
c.急性腎不全の保存的療法
d.急性腎不全に対する透析療法とその目的
e.急性腎不全の透析療法
f.透析療法への導入基準
g.透析療法からの離脱
3.その他
a.急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
b.膠原病
c.劇症肝炎
d.重症急性膵炎
e.妊娠・周産期疾患
f.神経・筋疾患
g.高脂血症
h.薬物中毒
i.炎症性腸疾患
§3.透析療法の基礎
A.病因関連物質…〈長谷川裕人,秋澤忠男〉
1.尿毒症物質
a.概 念
b.分 類
c.臨床症状との関連
2.サイトカイン
a.概 念
b.分 類
c.作用の特徴
d.透析との関わり
e.臨床応用
3.エンドトキシン
a.概 念
b.透析との関わり
c.生体への影響
d.生体からの除去法
4.AGEs
a.概 念
b.種 類
c.腎不全患者におけるAGEsの動態
d.AGEsと透析アミロイドーシス
5.免疫不全
a.概 念
b.腎不全患者における免疫不全
6.活性酸素,フリーラジカル
a.概 念
b.種 類
c.生体と活性酸素・フリーラジカルの関わり
B.血液浄化の基礎
1.透析療法の原理…〈峰島三千男〉
a.拡 散
b.限外濾過
2.透析膜…〈峰島三千男〉
a.分離と物質交換
b.種 類
3.ダイアライザー…〈峰島三千男〉
a.中空糸型
b.積層(平板)型
c.ダイアライザーの性能指標
4.適正治療指標…〈峰島三千男〉
5.生体適合性…〈篠田俊雄〉
a.概 念
b.血液透析法(HD)における生体適合性
6.ブラッドアクセス…〈篠田俊雄〉
a.種類と適応
b.特徴,問題点
7.ペリトネアルアクセス…〈篠田俊雄〉
種類と適応,特徴,問題点
8.抗凝固薬…〈篠田俊雄〉
a.種 類
b.各抗凝固薬の適応,特徴,問題点
9.透析液,置換液(補充液)(CAPD液も含む)…〈篠田俊雄〉
a.血液透析液
b.血液濾過法(HF)および血液透析濾過法(HDF)に用いる置換液
c.腹膜透析液
10.透析機器・装置…〈篠田俊雄〉
a.透析液供給装置(多人数用,個人用),患者監視装置
b.水処理装置
c.透析液の清浄化
d.周辺機器
e.CAPD装置
§4.透析療法の実際
1.血液透析法(HD)…〈飯田喜俊〉
a.原 理
b.概 要
c.長所と短所
d.適応と尿毒症症状
e.慢性HDの導入時期
f.HD導入時の準備
g.HD開始前の準備
h.標準的な透析操作
i.血液透析量の処方
j.ドライウエイトの設定法
k.ダイアライザーの選択
l.血液透析液の選択
m.抗凝固薬の選択
n.高Na透析とprofilling dialysis
o.低温透析
p.長時間透析
q.小児の透析療法
r.透析時の自己管理記録
s.在宅血液透析(家庭血液透析)
2.血液濾過法(HF)…〈飯田喜俊〉
a.概要と特徴
b.種 類
c.使用されるヘモフィルター
d.適 応
e.ECUM(イーカム,extra-corporeal ultrafiltration method)
3.血液透析濾過法(HDF)…〈飯田喜俊〉
a.概 念
b.種 類
c.使用されるヘモダイアフィルター
d.適 応
e.臨床上の注意点
4.持続的血液浄化法…〈飯田喜俊〉
5.腹膜透析法(PD)…〈藤井正満〉
a.原 理
b.腹膜透析システム
c.適 応
d.PDでの至適透析
e.PET(peritoneal equilibration test:腹膜平衡試験)
f.合併症
g.PDの中止
h.バッグ交換の実施方法
i.カテーテルケア
j.患者教育と管理
6.その他…〈藤井正満〉
a.血漿交換療法
b.血液吸着法〔直接血液潅流法(DHP)〕
c.白血球系細胞除去療法(サイタフェレシス)
§5.検査結果とその評価
1.血液検査…〈湯淺繁一,高橋則尋〉
a.赤血球(RBC),ヘモグロビン(Hb),ヘマトクリット(Ht),白血球(WBC),血小板
b.網赤血球
c.血清鉄,鉄結合能,フェリチン
d.血液凝固検査
2.血液生化学検査…〈湯淺繁一,福永 恵〉
a.血清酵素
b.血清蛋白,窒素化合物,色素
c.血清電解質,血液ガス
d.糖・脂質・骨代謝
3.内分泌学的検査,免疫学的検査…〈湯淺繁一,清元秀泰〉
a.甲状腺ホルモン
b.副甲状腺ホルモン(PTH)
c.レニン,アルドステロン,Na利尿ペプチド
d.自己抗体,補体
e.肝炎ウイルスマーカー
4.生理学的検査と画像検査…〈小路哲生,藤岡 宏,湯淺繁一〉
a.心電図
b.骨塩定量
c.単純X線写真
d.超音波検査
e.CT scan
f.MRI
§6.食事・栄養療法〈金澤良枝,中尾俊之〉
1.透析患者の食事基準
2.エネルギー摂取
3.蛋白質摂取
4.塩分・水分摂取
5.カリウム(K)摂取
a.調理方法の問題
b.摂取量の問題
6.リン(P)摂取
7.カルシウム(Ca)摂取
8.糖尿病性腎症の透析患者の食事
9.CAPD患者の食事
10.小児透析患者の食事
11.高齢透析患者の食事
12.急性腎不全患者の食事
a.所要量の基準
b.摂取経路
13.低栄養患者の食事
a.全く食欲のない患者の場合
b.流動食の対応
c.軟菜食の対応
14.治療用特殊食品
15.外食・旅行時の食事
§7.薬物の使用法〈飯田喜俊〉
1.透析患者の薬物の使用法
a.透析療法時の薬物投与
b.CAPD,血液濾過法(HF)や持続的動静脈血液濾過法(CAVH)のときの薬物投与
2.主な薬物の使用法
a.昇圧薬
b.降圧薬
c.狭心症治療薬
d.強心薬,抗不整脈薬
e.解熱・鎮痛薬,非ステロイド性抗炎症薬
f.鎮静・睡眠薬
g.糖尿病薬
h.ホルモン剤
i.高脂血症治療薬
j.消化器用薬
k.抗菌薬,抗真菌薬,抗結核薬,抗ウイルス薬
l.造血薬
m.血液凝固阻止薬
n.高K血症治療薬
o.アシドーシス治療薬
p.経口尿毒症毒素吸着薬とリン(P)吸着薬
q.抗癌薬
r.漢方薬
s.ビタミン薬
§8.透析患者のケアー―ソーシャルワーカーの役割―〈白石純子〉
1.透析患者のソーシャルワーカーとしてのケアーと視点
a.外来腎不全(保存期)患者への係わり
b.透析導入時への係わり
c.高齢透析患者の場合
d.糖尿病性腎不全患者の場合
e.単身者の場合
f.重複障害を伴ったとき
g.長期透析患者の場合
2.介護保険と透析患者について
3.社会資源について
§9.出現する症状・合併症と対策〈椿原美治〉
A.透析中の症状と対策
1.不均衡症候群
2.透析低血圧
3.発 熱
4.胸 痛
5.不整脈
6.こむらがえり
B.長期透析治療時の合併症と対策
1.高血圧,低血圧
2.動脈硬化症
3.冠動脈疾患(CAD)
4.心不全
5.足の潰瘍・壊疽
6.ブラッドアクセス合併症
7.呼吸器系の異常
8.造血系の異常
9.中枢神経系の異常
10.消化管の異常
11.肝・胆・膵病変
12.内分泌系の異常(二次性副甲状腺機能亢進症を含む)
13.泌尿器系の異常
14.骨・関節の異常
15.神経系の異常
16.皮膚の異常
17.眼の異常
18.感染症
19.低栄養
20.悪性腫瘍
21.薬物中毒
22.外科手術
23.CAPDカテーテル障害
24.CAPD腹膜炎,出口部・トンネル感染
25.硬化性腹膜炎,被嚢性腹膜硬化症(EPS)
§10.透析療法のリスクマネージメント〈藤井正満〉
1.医療事故対策
a.医療事故対策の基本
b.血液透析法における医療事故…
2.院内感染対策
a.基本的な院内感染対策
b.“透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル(2000年3月)”について
c.B型・C型肝炎ウイルス
d.MRSA感染症
e.結核症
f.職員の管理
3.防災対策
a.設備の対応
b.スタッフ・患者教育
c.災害ネットワークの構築
索 引
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