脳卒中理学療法 コア コンピテンス
網本 和 編著
A5判 428頁
定価7,040円(本体6,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06728-8
2018年03月発行
在庫あり
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脳卒中理学療法 コア コンピテンス
網本 和 編著
A5判 428頁
定価7,040円(本体6,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06728-8
2018年03月発行
在庫あり
序
脳血管障害(脳卒中)は理学療法の対象として最も主要な病態であり,多くの理学療法士がその治療に日々挑戦しています.周知のように脳卒中の病型は様々ですが,多くの症例はある日突然に発症し,医学的管理が適切であればかなり救命され,そして適切な治療とリハビリテーションによって徐々に回復を示します.本書ではこのような回復過程にそって,リスク管理,評価,具体的な理学療法の進め方,そしてその時期に必要不可欠な臨床力(コンピテンス)が示されています.病期によって理学療法の課題が異なることは今や常識ではありますが,第一線の現場で活躍する執筆者の「現在の到達レベル」が詳しく述べられている点で類書にない構成になっています.
脳卒中症例の多くは自然経過として回復を示します.読者の皆さんは自分が行っている「理学療法」がこの自然経過を超えて効果を持つということを実感したことがあるでしょうか.もちろん大規模な臨床試験などでリハビリテーションの有効性は証明されていますが,一人の症例を目の前にして自分の理学療法が「効いている」と確信するためには何が必要でしょうか.一般論的にも倫理的にも,「理学療法を行わない」ということはできないわけですから,その効果の検証はすなわち,初期状態からの即時的変化および継続的変化を分析することによると考えられます.その意味において「現在の到達レベル」の臨床力を体得することが求められていると思います.
筆者は臨床にいた最初の2年間はいわゆる回復期病院で,その後19年間は大学病院で急性期の脳卒中症例の理学療法に携わってきました.そして大学教育に転じてさらに18年が経ちましたが,研究活動のフォーカスは脳卒中症例を対象とした高次脳機能障害に関するものです.つまり筆者のこれまでの臨床・研究活動はほとんど脳卒中症例についてのものです.それ故今回,脳卒中理学療法の臨床的なテキストを上梓できることは大変意義深いものと思います.本書を脳卒中理学療法にかかわる多くのセラピストに臨床現場で活用していただき,その臨床力を磨く一助となれば幸いです.
2018年 啓蟄の候
首都大学東京
網本 和
目 次
I.序論 〈網本 和〉
1.コンピテンス(competence)とコンピテンシー(competency)
2.理学療法士のコア コンピテンス
3.脳卒中理学療法のコア コンピテンス(読者のためのガイダンス)
II.高度急性期の評価と治療
1▶高度急性期脳卒中理学療法のポイント 〈藤野雄次〉
1.高度急性期における脳卒中の特徴
2.高度急性期における治療方針
3.高度急性期における治療目標
4.高度急性期における脳卒中理学療法実施上の注意点
5.高度急性期におけるコンピテンス
2▶症例提示 〈藤野雄次〉
3▶リスク管理
高度急性期のリスク管理を理解できるか 〈深田和浩〉
1.高度急性期のリスク管理
2.一般的なリハビリテーション中止基準
3.リスクの高い病態
4.症状の経過と理学療法の実施判断のポイント
4▶ポジショニング
高度急性期において効果的なポジショニングを選択できるか 〈深田和浩〉
1.ポジショニングの意義
2.ポジショニングの実際
3.看護師への協力依頼方法
5▶ベッド上での理学療法
高度急性期において離床が制限された場合に理学療法士は何ができるか 〈井上真秀〉
1.ベッド上での理学療法
2.関節可動域運動
3.筋力強化運動
4.合併症の予防
6▶離床
高度急性期の安全な離床の進め方を理解できるか 〈藤野雄次〉
1.高度急性期における離床の位置づけ
2.脳循環代謝への影響
3.離床のリスク
4.離床の進め方
7▶急変時の対応
目の前の患者が急変した際に理学療法士は何をすべきか 〈井上真秀〉
1.急変時の対応
2.急変の予兆をモニタリングする
3.急変後の二次的な障害を予防する
4.急変の原因を推察する
5.一次救命処置(basic life support: BLS)
8▶rt-PA実施例の高度急性期理学療法
rt-PA後に出血性合併症をどう管理するか 〈播本真美子〉
1.血栓溶解療法の対象となる脳梗塞
2.rt-PAとは
3.rt-PA後の合併症・出血性梗塞
4.理学療法施行前後での注意点
9▶頚動脈内膜剥離術実施例の高度急性期理学療法
CEA後の過灌流症候群・術後合併症をどう管理するか 〈播本真美子〉
1.頚動脈狭窄症について
2.CEAについて
3.CEAの合併症と術後管理
4.理学療法介入時の注意点
10▶急性期再発性・進行性脳卒中の高度急性期理学療法
再発や進行の起因となる病態をいかに理解できるか 〈藤野雄次〉
1.脳卒中再発の疫学
2.急性期における脳卒中の再発と進行
3.理学療法を実施する上での注意点
11▶くも膜下出血後の高度急性期理学療法
どのように遅発性脳血管攣縮と向き合い理学療法を進めるか 〈関根大輔〉
1.くも膜下出血の病態と治療
2.合併症について
3.理学療法におけるリスク管理,評価について
4.高度急性期からできる理学療法アプローチ
III.急性期の評価と治療
1▶急性期脳卒中理学療法のポイント 〈渡辺 学〉
1.急性期における脳卒中の特徴
2.急性期における治療方針
3.急性期における治療目標
4.急性期における脳卒中理学療法実施上の注意点
5.急性期におけるコンピテンス
2▶症例提示〈渡辺 学〉
3▶リスク管理
安全かつ効果的な早期離床を実践できるか 〈米澤隆介〉
1.早期離床の意義とリスク
2.脳卒中急性期の脳循環動態
3.リスク管理の臨床指標
4.急性期におけるリスク管理の実際
4▶機能評価
ハンズオフとハンズオンを適切に組み合わせて評価できるか 〈斎藤 均〉
1.急性期の評価項目
2.評価表
3.ハンズオン(hands on)による潜在性の評価(と治療)
4.予後予測
5▶能力評価
ハンズオンによる能力評価ができるか 〈塚田直樹〉
1.能力評価と意義
2.症例紹介
6▶認知機能評価
認知機能障害が理学療法に与える影響を評価できるか 〈渡辺 学〉
1.認知機能障害と理学療法
2.急性期における認知機能障害
3.基盤となる認知機能障害の評価
4.理学療法で重要な認知機能障害の評価
7▶予後予測
急性期において運動機能の予後を予測することができるか 〈渡辺 学〉
1.予後予測はなぜ必要か
2.何の予後を予測するのか
3.予後予測の説明はどうするか
8▶ベッド上での理学療法
動くことを目的とした治療を考えることができるか 〈渡辺 学〉
1.ベッド上での理学療法の目的
2.動く機会の提供
3.神経筋促通
4.感覚刺激の提供
5.姿勢変換練習
6.周囲の環境への注意づけ
9▶離床
リスク管理しながら麻痺を有した身体を抗重力環境に適応させることができるか 〈渡辺 学〉
1.離床の目的
2.臥位での準備
3.ギャッチアップ
4.端座位
5.立ち上がり・立位
6.移乗
10▶運動麻痺への治療
神経学的背景を考えた運動麻痺への治療ができるか 〈塚田直樹〉
1.随意運動と姿勢制御の構成要素
2.症例紹介
3.姿勢制御に必要な感覚情報の取り込み
4.ポジショニングの検討
5.麻痺側への寝返り
6.体幹の活動と麻痺側の準備
7.歩行への応用
11▶非麻痺側への治療
急性期において非麻痺側への治療の必要性を判断できるか 〈中村 学〉
1.非麻痺側上下肢・体幹の機能障害について
2.非麻痺側上下肢・体幹の評価
3.評価と治療の実際
12▶体幹の治療
急性期での抗重力姿勢制御の土台として体幹を治療できるか 〈渡辺 学〉
1.脳卒中における体幹機能障害
2.体幹機能の評価
3.体幹機能の治療
13▶基本動作練習
麻痺側の認知と抗重力伸展活動を促しながら基本動作が治療できるか 〈竹村美穂〉
1.急性期における起居動作の治療方針
2.寝返り
3.起き上がり
4.座位保持・バランス
5.立ち上がり
6.立位保持・立位バランス
14▶移動練習
重度麻痺者の歩行練習や安全な移動手段の選択ができるか 〈中村 学〉
1.麻痺側上下肢の運動麻痺について
2.重度麻痺者の歩行練習はどのように進めるか
15▶装具療法
長下肢装具を用いて立位・歩行を誘導できるか 〈溝部朋文〉
1.装具を使用する目的
2.長下肢装具を用いた練習
3.その他の注意点
16▶呼吸機能の治療
脳卒中急性期の肺炎を予防することができるか 〈米澤隆介〉
1.脳卒中急性期の呼吸障害
2.脳卒中における肺炎
3.呼吸機能の治療
17▶摂食嚥下機能の治療
理学療法で必要な摂食嚥下障害への介入を実施できるか 〈森下元賀〉
1.脳卒中における摂食嚥下障害
2.摂食嚥下能力の評価
3.摂食嚥下障害に対する理学療法介入
18▶排尿・排泄機能の治療
排尿・排泄機能障害の理学療法評価と治療を実施できるか 〈森下元賀〉
1.脳卒中における排尿機能障害
2.脳卒中における排便機能障害
3.排尿,排便機能の評価
4.おむつ,膀胱留置カテーテルの管理
5.排尿,排便障害に対する理学療法介入
IV.回復期の評価と治療
1▶回復期脳卒中理学療法のポイント 〈古澤浩生〉
1.回復期における脳卒中の特徴
2.回復期における治療方針
3.回復期における治療目標
2▶症例提示 〈関根陽平,古澤浩生〉
3▶機能評価
ADLの向上に対する機能上の問題点をどのようにして評価していくか 〈塚田和也,古澤浩生〉
1.歩行における立脚相の評価
2.評価項目と動作との関連についての一例
4▶能力評価
治療へつながるADL評価を行えるか 〈宮本真明〉
1.脳卒中患者におけるADLの難易度
2.ADL能力の評価方法
3.自宅環境に合わせた動作能力を評価する
4.手段的ADL(IADL)の評価
5▶認知機能評価
高次脳機能障害がもたらす症状に対処できるか 〈宮本真明〉
1.高次脳機能障害の予後を考える
2.運動療法やADL場面における工夫
3.自宅退院へ向けて
6▶予後予測
ADL能力の予後をどのように予測するか 〈宮本真明〉
1.退院時のADL能力を予測する
2.退院後の生活を予測する
3.退院後の家庭への影響も予測する
4.回復期リハビリテーション病棟からの自宅復帰率について
7▶基本動作練習
基本動作の多様性獲得に向け効率的な運動指導ができるか 〈村田佳太,古澤浩生〉
1.基本動作練習からADLへの汎化
2.座位〜立位での介入
3.座位〜背臥位での介入
4.First stepから歩行へ
8▶歩行練習
実用的な歩行の獲得を目指すことができるか 〈万治淳史〉
1.屋内での環境の変化(家具などの障害物,他者往来への対応)
2.屋外での環境の変化(路面変化への対応や危険回避)
9▶ADL練習
身のまわり動作獲得に向けた回復的・代償的アプローチができるか 〈万治淳史〉
1.食事動作
2.整容
3.更衣
4.排泄動作(トイレ動作)
5.入浴
10▶応用動作練習
多種多様なニーズに応えることができるか 〈廣澤全紀〉
1.理学療法評価
2.補装具や福祉用具の選択
3.応用動作練習のための環境設定
11▶装具療法
治療・生活場面で短下肢装具を有効活用できるか 〈溝部朋文〉
1.回復期における装具
2.短下肢装具による歩行の改善と身体機能
3.生活の中で装具を有効に使うための注意点
12▶体力向上
体力向上の必要性を理解できるか 〈中村 学〉
1.体力向上に向けた身体活動量の評価とトレーニング
2.栄養状態の把握と管理の必要性
3.退院に向けた指導
13▶24時間マネジメント
リハビリテーションの効果を高めるために介入時間以外もマネジメントできるか 〈廣澤全紀〉
1.環境調整
2.情報共有
V.維持期(生活期)の評価と治療
1▶維持期脳卒中理学療法のポイント 〈齋藤崇志,平野康之〉
1.維持期における脳卒中の特徴
2.維持期における治療方針
3.維持期における治療目標
4.維持期における脳卒中理学療法実施上の注意点
5.維持期におけるコンピテンス
2▶症例提示 〈齋藤崇志,平野康之〉
1.症例提示
2.生活上の問題点
3▶フィジカルアセスメント
生活期の現場で収取できる情報から対象者の変化を予見できるか 〈芝崎 淳〉
1.生活期のリハビリテーションの効果
2.生活期の脳卒中片麻痺者へのリハビリテーションとリスク管理
3.リスク管理とフィジカルアセスメント
4.生活期のリハビリテーションの役割
4▶精神機能の評価
生活期脳卒中後遺症者の精神・知能障害を評価できるか 〈芝崎 淳〉
1.脳卒中後の精神・知能障害
2.脳卒中後の精神障害─うつ─
3.脳卒中後の知能障害
5▶生活環境の評価
在宅脳卒中患者が安全に在宅生活を送るための評価ができるか 〈齋藤崇志,平野康之〉
1.生活環境評価の目的
2.生活環境評価と介入の実際
6▶起居移動動作練習
生活期脳卒中後遺症者の起居移動動作練習を工夫できるか 〈芝崎 淳〉
1.生活期脳卒中片麻痺者と日常生活動作(ADL)
2.生活期片麻痺者の起居移動動作
3.生活期片麻痺者の起居移動動作練習のポイント
7▶介護者への指導
活動支援と介護負担の軽減に向けて指導できるか 〈高橋秀介,金谷さとみ〉
1.生活面への助言
2.介助方法の指導
3.事例紹介
8▶外出支援
外出に向けた指導ができるか 〈高橋秀介,金谷さとみ〉
1.理学療法士が行う外出支援
2.屋外活動の指導
3.事例提示
9▶社会資源の活用
どのような資源があり,誰に相談すればよいか 〈万治淳史〉
1.介護保険制度
2.障害者福祉制度
3.障害福祉制度と介護保険制度について
4.その他の社会資源
10▶生活環境調整
維持期(生活期)での物理的環境へのアプローチ方法を理解できるか 〈高澤寛人,金谷さとみ〉
1.生活環境調整の基礎
2.評価
3.生活環境調整の具体例
11▶急変時の対策
自宅や通所サービスで発生する急変に対し対策・対応できるか 〈高澤寛人,金谷さとみ〉
1.急変とリスク管理
2.リスクの評価
3.急変時の対応と対策
4.一次救命処置(basic life support: BLS)の手順
12▶ロボット・スーツの利用
脳卒中後歩行障害に対するロボットスーツリハビリテーションの適応と限界を理解できるか 〈万治淳史〉
1.リハビリテーションロボットによる歩行練習支援
2.ロボットスーツの利用
3.ロボットスーツHALⓇを使用した動作練習とその効果
索 引
執筆者一覧
網本 和 首都大学東京健康福祉学部教授 編著
渡辺 学 北里大学メディカルセンター 編著
藤野雄次 埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター主任
深田和浩 埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター
井上真秀 埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター
播本真美子 埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター
関根大輔 埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター
米澤隆介 北里大学メディカルセンターリハビリテーションセンター主任
斎藤 均 横浜市立市民病院リハビリテーション部
塚田直樹 順天堂東京江東高齢者医療センターリハビリテーション科
中村 学 花はたリハビリテーション病院リハビリテーション科主任
竹村美穂 北里大学メディカルセンターリハビリテーションセンター
溝部朋文 横浜市立脳卒中・神経脊椎センターリハビリテーション部
森下元賀 吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科准教授
古澤浩生 リハビリテーション天草病院院長補佐
関根陽平 リハビリテーション天草病院リハビリテーション部
塚田和也 リハビリテーション天草病院リハビリテーション部
宮本真明 渕野辺総合病院リハビリテーション室主任
村田佳太 リハビリテーション天草病院リハビリテーション部
万治淳史 埼玉みさと総合リハビリテーション病院リハビリテーション部主任
廣澤全紀 東京都リハビリテーション病院リハビリテーション部理学療法科主任
齋藤崇志 公益社団法人日本理学療法士協会
平野康之 徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科准教授
芝崎 淳 将道会総合南東北病院リハビリテーション科主任
高橋秀介 博愛会菅間記念病院リハビリテーション科係長
金谷さとみ 博愛会菅間記念病院在宅総合ケアセンターセンター長
高澤寛人 博愛会菅間記念病院通所リハビリテーションセンター主任
株式会社中外医学社 〒162-0805 東京都新宿区矢来町62 TEL 03-3268-2701/FAX 03-3268-2722
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