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書籍詳細

EBM腎臓病の治療 2003-2004

EBM腎臓病の治療 2003-2004

富野康日己 他編著

A5判 566頁

定価9,460円(本体8,600円 + 税)

ISBN978-4-498-12422-6

2003年02月発行

在庫なし

腎炎,ネフローゼ,尿細管・間質性腎障害,高血圧と腎障害,腎硬化症,急性腎不全,慢性腎不全,電解質異常,透析療法,移植の問題点についてを最新のエビデンスをもとにいかに理解し,治療にあたったらよいかを示した.
今日の日常診療で問題となるテーマ,判断に迷うようなテーマ70余りについて,概説・指針・エビデンス・根拠となった臨床研究の問題点と限界・本邦の患者に適応するの際の注意点・コメント・文献にわたり各々の第一人者が解説にあたった.

はじめに
 近年,臨床診療の場では根拠(evidence)が求められ,EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉が随所に認められるようになりました.腎臓病の治療に関しても例外ではありません.また,EBMのEには,“experience(臨床経験)やeconomy(医療経済)といった意味も含まれるのではないか”,との意見を耳にすることがあります.EBMは,「目の前の患者さんに対して,その疑問を明らかにしたうえで,それに関連する現在入手できる最新情報を踏まえ,さらにその患者さんの置かれている状況を勘案して,その患者さんにベストな処方を出すための行動指針である」と定義されています(EBM循環器疾患の治療 2001-2002,中外医学社).この定義に照らしてみると,EBMでは医師の十分な専門技能・臨床経験(experience)を前堤として,患者さんの置かれている立場・経済状況(economy)・価値観を参考にしつつ,現在入手できる最新情報を駆使した医療を行うことが求められているものと思われます.最近では,患者さんや家族の皆さんがインターネットやテレビ・ラジオなどのメディアから多くの最新情報を得られるようになりましたので,EBMに則らない旧来の「勘に頼ったさじ加減の医療」は信頼を失っていき,時には医療訴訟にもなりかねないとの声も聞かれます.したがって,このEBMは今後益々求められていくものと思われます.
 「EBM腎臓病の治療 2003-2004」は中外医学社の「EBM循環器疾患の治療 2001-2002」と同趣旨のシリーズの一冊として刊行されました.まず,EBMの総論を記載していただいたうえで,腎炎・ネフローゼ,尿細管・間質性腎障害,高血圧と腎障害・腎硬化症,急性腎不全,慢性腎不全,電解質異常,透析療法,移植の8項目に大別しました.編者らは,日常疑問に思っている点を中心に設問(Q)を取り上げ,腎臓病治療の各分野でご活躍中の先生方に現時点でのEBMを記載していただきました.記載しにくいQも多く多大なご迷惑をおかけしましたが,諸先生のご協力により刊行にこぎつけることができ,編者として大変嬉しく思っております.こうしたEBMは日々変化するものであり取り上げる設問を含め,今後検討を重ね版を重ねていくことができればと願っています.
 本書を腎臓専門医のみならず,臨床研修医をはじめ臨床に携わる多くの先生にお読みいただき,忌憚のないご意見をいただければ望外の喜びです.最後に本書の刊行にあたり,ご尽力いただきました中外医学社の皆様に厚く御礼申し上げます.

2003年 初春
編 者

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目 次

EBMとは…〈福井次矢〉
 1.EBMの提唱するもの
 2.エビデンスに基づいた診療ガイドライン
 3.EBMの有効性
 4.EBMの歴史と背景
 5.EBMの展望

I.腎炎,ネフローゼ
A.溶連菌感染後急性糸球体腎炎
 1.溶連菌感染後急性糸球体腎炎の発症頻度は本当に低下しているのでしょうか?…〈保元裕一郎〉
 2.溶連菌感染後急性糸球体腎炎の減塩療法と安静はいつまで続けるのでしょうか?…〈山辺英彰〉
 3.溶連菌感染後急性糸球体腎炎の薬物療法は本当に必要でしょうか?
  必要ならばどのように行うのでしょうか?…〈鈴木重伸〉
 4.溶連菌感染後急性糸球体腎炎の予後は良好でしょうか?…〈新田孝作〉
B.急速進行性糸球体腎炎・ANCA関連腎炎
 1.急速進行性糸球体腎炎・ANCA関連腎炎の発症頻度…〈平山浩一 小山哲夫〉
 2.急速進行性糸球体腎炎,ANCA関連腎炎のステロイドパルス療法,カクテル療法は有効でしょうか?…〈中山謙二 佐藤 博〉
 3.急速進行性糸球体腎炎,ANCA関連腎炎の血漿交換療法には予後改善効果を期待できるのでしょうか?…〈佐藤 顕 今井裕一〉
 4.急速進行性糸球体腎炎,ANCA関連腎炎の予後は本当に不良なのでしょうか?…〈加藤哲夫〉
C.再発性・持続性血尿
  再発性・持続性血尿は未治療で問題はないのでしょうか?…〈菱木俊匡〉
D.IgA腎症
 1.IgA腎症の発症・進展に遺伝は関与しているのでしょうか?…〈今井圓裕〉
 2.IgA腎症のステロイド療法はどの時期から行うのが有効でしょうか?…〈小林 豊〉
 3.IgA腎症のステロイドパルス療法と扁桃摘出術は本当に有効でしょうか?…〈堀田 修〉
 4.IgA腎症の抗血小板・抗凝固療法は,いつから,どのように行うのでしょうか?…〈古巣 朗 宮崎正信〉
 5.IgA腎症のACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬は有効でしょうか?…〈川村哲也〉
 6.IgA腎症の予後は本当に不良なのでしょうか?…〈遠藤正之〉
E.ネフローゼ症候群
 1.ネフローゼ症候群の発症のきっかけとなる糸球体の透過性因子はあるのでしょうか?…〈吉村吾志夫〉
 2.ネフローゼ症候群の病理組織所見と予後とは関連するのでしょうか?…〈森田良樹 松尾清一〉
 3.ネフローゼ症候群の高度な蛋白尿の持続は予後不良の指標なのでしょうか?…〈佐藤昌志 木暮照子〉
 4.ネフローゼ症候群の膜性腎症にステロイド療法は有効でしょうか?…〈北澤孝三〉
 5.ネフローゼ症候群の巣状糸球体硬化症に有効な薬物治療は何でしょうか?…〈斉藤喬雄〉
 6.ネフローゼ症候群の膜性増殖性糸球体腎炎に有効な薬物治療は何でしょうか?…〈大井洋之〉
 7.ネフローゼ症候群のステロイド抵抗性ないし頻回再発型ネフローゼ症候群の治療法はどのようなものがあるのでしょうか?…〈椎木英夫〉
 8.ネフローゼ症候群の免疫抑制薬の使い方は?…〈堀越 哲〉
 9.ネフローゼ症候群のLDLアフェレーシスは有効でしょうか?…〈横山 仁 和田隆志〉
F.ループス腎炎
 1.ループス腎炎の病理組織所見は予後を左右するのでしょうか?…〈内田啓子〉
 2.ループス腎炎のステロイド療法は有効でしょうか?…〈齊藤 幸 小池隆夫〉
 3.ループス腎炎の免疫抑制薬の使い方について教えてください.…〈頼岡徳在 谷口良彦〉
G.糖尿病性腎症
 1.糖尿病性腎症はなぜ増えてきたのでしょうか?…〈余財享介 四方賢一 槇野博史〉
 2.糖尿病性腎症の血糖コントロールは進行を抑えられるでしょうか?…〈梅園朋也 谷亀光則〉
 3.糖尿病性腎症の蛋白制限食は有効でしょうか?…〈宇都宮一典〉
 4.糖尿病性腎症に対して,ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬はいつから開始するのが有効でしょうか?…〈羽田勝計〉
 5.糖尿病性腎症の腎機能低下時のACE阻害薬や,アンジオテンシン受容体阻害薬の投与法について教えてください.…〈三浦浩平 木村健二郎〉
 6.糖尿病性腎症のカルシウム拮抗薬・利尿薬・アルファ遮断薬投与のコツはあるのでしょうか?…〈冨田公夫〉
 7.糖尿病性腎症の抗高脂血症薬併用の意義はどのようなことでしょうか?…〈坂頭美智子 宗 正敏〉
H.常染色体優性多発性嚢胞腎
  常染色体優性多発性嚢胞腎ではACE阻害薬やアンジオテンシン受容体阻害薬は有効でしょうか?…〈奴田原紀久雄 東原英二〉

II.尿細管・間質性腎障害
 1.どうして薬物が腎障害を起こすのでしょうか?…〈細山田 真 遠藤 仁〉
 2.急性尿細管・間質性腎炎の治療はどのように行うのでしょうか?…〈松村 治 御手洗哲也〉
 3.慢性尿細管・間質性腎炎の治療はどのように行うのでしょうか?…〈海野鉄男 草野英二〉

III.高血圧と腎障害,腎硬化症
 1.生活習慣の中でリスクファクターとなるものは何でしょうか?…〈渡辺 毅〉
 2.高血圧の減塩療法は効果的でしょうか?…〈平山智也 菊池健次郎〉
 3.腎機能障害を有する高血圧に対する降圧薬の選択と降圧目標は?…〈伊藤 修 伊藤貞嘉〉
 4.高齢者の血圧管理はどのように行いますか?…〈船曳和彦〉

IV.急性腎不全
 1.急性腎不全の機序はどこまでわかってきたのでしょうか?
  その機序に直接働く予防ないし治療薬はみつかっているのでしょうか?…〈加藤明彦 菱田 明〉
 2.腎機能が低下している患者へ腎毒性のある薬剤投与について頼るべき指針はありますか?…〈平田純生 金 昌雄〉
 3.腎毒性のある薬剤を投与せざるをえないとき,腎毒性の発現を最小限にする方法は?…〈山田 明〉
 4.急性腎不全患者の透析開始時期についての判断法はどうしたらよいのでしょうか?…〈鈴木正司〉
 5.急性腎不全患者の透析条件はどのようなものでしょうか?
  また透析膜の選択法はどのように行いますか?…〈内藤秀宗 藤森 明〉

V.慢性腎不全
 1.多彩な原疾患の慢性腎不全患者の腎機能低下に共通する機序はどこまでわかっているのでしょうか?…〈丹羽利充〉
 2.慢性腎不全の腎機能低下を減速ないし停止できるとされる治療はどこまで確実なのでしょうか?…〈佐中 孜〉
 3.副甲状腺機能亢進症に対する薬剤が最近たくさん市販されるようになりました.
  これらの薬の薬効の違いと使い分けはどのようでしょうか?…〈椎崎和弘 秋澤忠男〉
 4.慢性腎不全患者の病態に酸化・カルボニルストレスがかかわっているのでしょうか?
  また治療的側面から考えられる可能性はどうですか?…〈伊豆原優子 稲城玲子 宮田敏男〉
 5.アミロイドーシスの予防法と治療法について,どこまでわかっているのでしょうか?…〈高橋直生 丸山弘樹 下条文武〉

VI.電解質異常
 1.浸透圧の異常を呈する疾患の病態はどのくらい解明されていますか?…〈石川三衛〉
 2.ナトリウムのtransporterの異常によることがわかっている電解質異常を呈する疾患にはどのようなものがありますか?
  またその診断法は?…〈山内小津枝 内田信一〉

VII.透析療法
 1.透析患者の予後を決める因子はどのようなものでしょうか?…〈井関邦敏〉
 2.最も生命予後の良好な血液浄化療法にはどのような方法がありますか?
  またそれが広く行われていないのはなぜですか?…〈斎藤 明〉
 3.透析導入後の成績をよくするために,どのように保存期を治療したらよいのでしょうか?…〈衣笠えり子〉
 4.透析膜の生体適合性は臨床効果にどう影響しますか?…〈矢内 充 高橋 進〉
 5.EPOの使用法は? 従来のtargetはどのようにして決まったのですか?…〈栗山 哲〉
 6.脳循環からみて透析患者の高血圧の管理はどのように行いますか?…〈四枝英樹 平方秀樹〉
 7.腹膜硬化症の成因と予防法はどこまでわかっているのでしょうか?…〈濱田千江子〉

VIII.移植
 1.腎移植の生命予後は,血液透析・腹膜透析とで違いますか?…〈寺岡 慧 岩藤和広 東間 紘 秋葉 隆 伊藤克己 二瓶 宏〉
 2.ABO血液型不適合腎移植,非血縁生体腎移植など生体腎提供の可能性を広げることの問題点は何ですか?…〈齋藤和英 高橋公太〉
 3.腎移植の適応とならない原疾患にはどのようなものがありますか?
  またその診断法は?…〈両角國男 武田朝美 打田和治〉
 4.腎移植患者のウイルス感染症にはどのようなものがありますか?
  またその診断,治療は?…〈田邉一成〉
 
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