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書籍詳細

めまいの起源を求めて

めまいの起源を求めて

室伏利久 著

A5判 133頁

定価3,080円(本体2,800円 + 税)

ISBN978-4-498-06280-1

2018年03月発行

在庫なし

「めまい」という症状について歴史を繙き,ときに神話や小説,映画や絵画などの芸術作品を題材に現代医学の素養を使って解き明かしていくという意欲作.エッセイのように気軽に読める一方,専門家でも読み応えがある現代の知見も散りばめられている.めまい平衡医学の源流から歴史をなぞり,いつの間にか臨床でも使える知識が入ってくる,めまいに少しでも興味のある人にすすめしたい1冊.

はじめに

「めまい」という症状は,いつごろから人間に認識されてきたのであろうか.「めまい」の原因はさまざまであるが,いずれの場合も生体における身体平衡維持システム,空間識の破綻によるということは共通している.したがって,その身体的な側面に関していえば,人類の誕生時にはすでに存在していたものと考えられる.もちろん,「めまい」の原因についての考え方は時代とともに変遷してきている.本書では,この「めまい」という古くて新しい症状について古代の神話から現代文学に至る人類の残した書物や芸術作品から題材を得て,それに対し現代医学の立場からのコメントを加えるという大胆な企画がその出発点であった.
本書では,さらに,現代のめまい平衡医学を確立するにあたり大きな功績を残した人物にも光をあて,彼らの業績を紹介するとともに,現代医学へと通ずる道筋についても紹介した.各項目はおのおの独立しているので,読者は興味のあるところを拾い読みしてくださっても結構である.また,めまい平衡医学の専門家でないかたは,各項目の後半の比較的専門性の高い部分については読み飛ばしていただいても結構である.
さまざまな立場の読者諸兄が本書を通じてめまい平衡医学の流れについて理解し,興味をもっていただければ幸いである.

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目 次

CHAPTER 1.めまいの源流
 1.「めまい」は人間の苦痛の代表的なものの一つである
  ─ギリシア神話のイクシオンの話:『変身物語』から─「めまい」の分類について
  めまいの起源 ── ギリシア・ローマ神話『変身物語』
  めまい症状の分類 ── vertigoとdizziness
 2.最も古い「めまい」の記述は? その疾患は?
  ─カッパドキアのアレテウスの著作と中国の『黄帝内経』─めまいの責任病巣はどこと考えられていたか?
  めまいの源流(西洋)
  めまいの源流(東洋)
  めまいの責任病巣 ── 現代の視点から
 3.直立二足歩行の発達と衰え
  ─スフィンクスの謎かけの話『ギリシア神話』─姿勢・歩行・平衡機能の発達と老化
  スフィンクスの謎かけ
  直立二足歩行の進化
  姿勢・歩行・平衡機能の発達
  姿勢・歩行・平衡機能の老化
 4.わが国におけるめまいの源流
  ─『和名類聚抄』と『病草紙』の「風病の男」の段─眼振について
  『和名類聚抄』におけるめまいの記載
  『病草紙』の「風病の男」の話
  眼振の分類
  眼振発生のメカニズム

CHAPTER 2.めまい平衡医学者列伝
 1.Antonio Scarpa(1752-1832)─末梢前庭系の解剖学の祖
  スカルパ以前
  スカルパの生涯
  前庭神経の形態と生理
  前庭神経炎 ── 前庭神経を病巣とする代表的疾患
  スカルパの生首
 2.Jean Pierre Flourens(1794-1863)─半規管生理学の始祖
  フルーランとガル
  フルーランのハトによる実験
  半規管の生理学
  HIT(head impulse test)
 3.Prosper Menière(1799-1862)─めまいは耳の病気で起こる─神経耳科学の源流
  メニエールの生涯
  メニエールの論文
  メニエール病と片頭痛
  「メニエール病」の誕生と現在
 4.Joseph Breuer(1842-1925)とPietro Tullio(1881-1941)─前庭迷路の生理学の発展─VEMPへの流れ
  ブロイアーと前庭生理学の発展
  エヴァルトの実験とEwaldの法則
  トゥリオとその生理学実験
  音刺激に対する末梢前庭系の反応と前庭誘発筋電位検査
  上半規管裂隙症候群
 5.Robert Bárány(1876-1936)─臨床めまい平衡医学領域での唯一のノーベル賞受賞者
  ─近代神経耳科学の幕開け
  1914年以前 ── 温度眼振の発見と温度刺激検査の開発
  その他の臨床検査の開発
  1914年 ── 転換点
  ウプサラでのバラニー
 6.Charles Skinner Hallpike(1900-1979)─現代めまい平衡医学へと続く流れ
  インドから英国へ
  メニエール病の側頭骨病理所見
  前庭神経炎と良性発作性頭位めまい症
  温度刺激検査法

CHAPTER 3.文学・芸術作品とめまい
 1.耳に毒薬?『ハムレット』シェークスピア─鼓室内注入療法とメニエール病
  耳に薬 ── 前置き
  耳に薬 ── 治療
 2.『インフェルノ』と『ロミオとジュリエット』におけるめまい─良性発作性頭位めまい症の原因と治療
  『インフェルノ』に登場するめまい
  BPPVの病因・病態
  耳石の生成・代謝
  BPPVの治療
  『ロミオとジュリエット』におけるめまい治療──頭位治療の原型?
 3.ヒッチコックの『Vertigo』─高所性めまいについて
  ヒッチコックの『vertigo』におけるめまい
  高所性めまい
 4.樋口一葉『たけくらべ』,芥川龍之介『歯車』─頭痛とめまい
  樋口・芥川と頭痛
  片頭痛の歴史
  現在の状況
 5.ゴッホの『星月夜』─渦巻く夜空は何を意味するのか?
  『星月夜』
  ゴッホ メニエール病説
  メニエール病説の弱点
  ゴッホの発作を説明する他の仮説──側頭葉てんかん+α
  てんかん性めまい
  その他の可能性 ── 前兆のある片頭痛
 6.ムンクの『叫び』─めまいと不安のリンク
  『叫び』と不安
  不安と空間識障害
  心因性めまいとは
  心因性めまいへの対応

おわりに

索 引

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執筆者一覧

室伏利久 帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科教授 著

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   2018年03月発行
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