はじめに
多くの急性期病院においてCHDFはすでに日常の風景なのではないでしょうか.CHDF以外に「CHD」もあれば「CHF」もあり,総称としては「CRRT」と書くことが適切なのですが,日本においてCHDFが“ICUにおける血液浄化”の代名詞となった感があります.
世界においては,必ずしもCHDFはメジャーではなく,多くの国においてCHFが主に使われると聞くと驚く読者は多いのではないでしょうか.CHDFを主に使うのは日本とオーストラリアだけと聞いたことがありますが,オーストラリアに友人がいないので本当かどうかわかりません.本書を読み終えるころには,各国でCHFが主に使われる背景も理解できているはずです(筆者の希望).
少し脱線をして……,トヨタ自動車が開発したプリウスに代表されるハイブリッド車はガソリンエンジンと電気モーターを持ち,それらが精密に制御されています.ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて動かすことは非常に難しく,初代プリウスの開発当初,車の走行テストをしようにもエンジンがまともに始動すらしなかったとの逸話があります.
読者が車を一から開発するという立場になったとして,いきなりハイブリッド車を作りはしないですよね.ガソリンエンジンの開発をするか,電気モーターの開発をするのか,まずはそこから始めるはずです.CHDF(continuous hemodiafiltration:持続的血液ろ過透析)は文字通り透析原理とろ過原理の両方を持つ方法です.透析原理とろ過原理のハイブリッドをいきなり理解するのは難しいにきまっています.まずは,透析原理,ろ過原理のそれぞれをしっかり理解しなければなりません.そして両方をきちんと理解できれば,CHDFの理解はそれほど難しくありません.
本書の読了後,読者が「いきなりCHDFから理解しようとするから難しいんだよ」と周囲に語ることを期待します.
2018年2月
小尾口邦彦