この度,前著「医療スタッフのための白血病ハンドブック」を引き継ぐ形で,著者や内容構成を一新し本書を出版することになりました.幸いなことに前書は,医療現場で広く受け入れられ活用されてきました.しかしながら,前著を出版して約8年になり,この間の白血病診療の進展は目覚ましく,白血病の分子病態解明が急速に進んだことにより,新たな治療薬が導入され治療法そのもの変革とともに,移植医療や感染症などの合併症対策なども格段に進歩しました.
白血病の治療成績を向上させ,より良い医療を実践するために,われわれ医療者は絶えず最新の情報を入手しなくてはなりません.また,白血病診療は患者さんを中心に医師のみならず,看護師,薬剤師,検査技師,理学療法士,臨床心理士,移植コーデイネーターなどさまざまな職種によるチーム医療の実践が不可欠です.いかに質の高いチームを形成し,お互いが緊密に連携して医療を実践することが求められています.
本書の目的は,進歩した白血病診療に関する最新情報を白血病診療に関わる多職種の医療者で共有することにあります.このような観点から,本書では白血病を理解するために必要な基本的な知識や最新の治療法や治療成績に加えて,移植医療や化学療法を中心に白血病診療における現場で求められている知識について,現在,第一線で活躍しているエキスパートに解説いただきました.また,小児白血病治療の実際と看護についても新たに章立てして専門家に解説いただき,白血病診療のほとんどの分野で必要とされる知識について多くの職種で情報共有できるように配慮しました.最後に,日頃,患者さんから寄せられるさまざまな疑問や悩みの相談に応じている「NPO法人血液情報広場つばさ」の橋本明子さんには,実際の事例をもとに白血病診療を受ける患者さんにどう向き合っていくかについて,医療者とは違う側面から解説いただきました.われわれ医療者の気づかなかったこともあり参考になると思います.
第一線のエキスパートに書いていただいただけに本書は白血病に関する学術書としても優れた内容になっていますが,本書の目的は臨床現場での活用です.白血病診療に関わるすべての医療者のみならず,白血病と闘っている患者さんやそのご家族,ボランテイアの方々そしてこれからの白血病診療を志す若き医学生や看護学生まで,多くの方々に本書がお役に立てば,編者として望外の喜びです.
最後に,多忙の中に本書を執筆いただいたエキスパートの先生方に心より感謝申し上げます.本書が,病棟や病室,そしてあらゆる場面で多くの方々に愛され活用されることを願っています.
平成29年9月
教授室から穂を垂れる稲穂をみつつ
木崎昌弘