•改訂2版の序•
改訂2版を出版させていただくことになった.
おかげさまで本書の初版は御好評をいただき,多くの方に読んでいただくことができた.読者の皆様より,単純な誤植から内容にかかわることまでさまざまな御指摘,御意見をいただき,分担執筆者からも,初版では紙数等の関係で記載しきれなかった事項や,その後の新知見を追記したいという希望もいただいていた.
本年の3月に中外医学社から連絡をいただき,在庫が少なくなったので増刷が必要だが,誤植等の修正のみとするか,あるいは改訂2版にすることも可能であるがどうかということであった.初版の発刊は2014年11月であったので,1年半での改訂は少し早い気もしたが,頭痛研究は日進月歩で,新知
見も増えてきているので,多忙な分担執筆者には心苦しかったが,読者の皆様にお役にたてばと改訂2版にさせていただくことにした.
最近の大きな話題としては,抗CGRP抗体による片頭痛予防と可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛があげられる.新規発症持続性連日性頭痛,前庭性片頭痛は国際頭痛分類第3版beta版の公開で注目され,その後のデータが集積しつつある.また,後発トリプタンがかなり広く使用されるようになったこともわが国の頭痛診療の変化の一つであろう.これらの項目を新しく追加,あるいは初版から大幅に改訂していただいた.
頭痛治療に使用する薬剤の種類,使い方のミニマムエッセンシャルは慢性頭痛の診療ガイドラインや,各種医学雑誌の頭痛の特集をみれば明快に整理,記述されている.しかし,実際に頭痛の患者を診療していると,それぞれの患者では,標準的な治療方法,投与量ではうまくいかないこともある.薬剤の特性についてよく知り,うまく使えるようになると,頭痛の治療効果も上がり,患者や他の医師からの評判もよくなっていく.本書は頭痛に関する治療薬について,何でも書いてある本を目指した.初版の序文でも述べたが,本書は辞書的な使用も可能であるが,通読いただくことで自家薬籠中の物となる頭痛治療薬の種類が増え,治療の選択肢が増え,頭痛診療におけるバラエティーが拡大するであろう.
「さじ加減」という言葉は,最近はネガティブな意味で使われることが多いかもしれないが,本来的な意味でのさじ加減は,それぞれの患者に応じて,薬の種類や用量を調整することであり,いわばテーラーメイドの治療を表す言葉であると思う.繰り返しになるが,ガイドライン,添付文書の記載に盲目的に従って,杓子定規に処方するばかりでなく,標準的な治療を踏まえたうえで,上手なさじ加減をして,頭痛をうまく治療する,そういう頭痛診療医になっていただくためのハンドブックとなれば幸甚である.改訂2版が読者と読者が診療する頭痛患者のお役にたつことを願ってやまない.
2016年10月
著者一同を代表して
竹島多賀夫