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書籍詳細

わかりやすい分子生物学

わかりやすい分子生物学

兵頭昌雄 著

B5判 170頁

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-00830-4

1995年08月発行

在庫なし

本書は,分子生物学の基本をやさしく解説すべく,わかり易い文章と豊富なシェーマを用いて,雑誌「Clinical Neuroscience」に連載し好評を博した内容に加筆し,まとめたものである.遺伝子はどのようなものかに始まり,mRNAおよび蛋白質の合成,原核生物と真核生物の遺伝子,細胞の増殖および分化と遺伝子,DNAの複製,修復,組換えについて,また臨床と最も関わってくる遺伝子の解析と操作の基本についても簡潔に解説されている.


 最近の新聞やテレビの報道では,ほとんど毎月1回はヒトに対する遺伝子診断や遺伝子治療が取り上げられています.また,犯罪捜査等においてはDNA鑑定が行なわれ,証拠として採用されていることも報道されています.このように,遺伝子に関する事柄は,社会のなかでますます人々に身近なものとなっているわけですが,その内容を正しく理解するということになると,そう容易なことではないといえるでしょう.本書がそのためのテキストになれば幸いです.
 本書は,「CLINICAL NEUROSCIENCE」という医学専門誌に1990年7月から1994年7月まで49回にわたって連載されたものをまとめたものです.はじめ編集部の方からは20回くらいで,というお話でしたが,つい長くなってしまいました.医学の専門家を対象として,分子生物学について復習し,最近の進歩についても「わかりやすく」解説する,というのが当初の目的でしたが,一般の方でもある程度の理科の知識があれば,理解できるのではないかと思います.ただ,記述が「わかりやすい」かどうかは,読者にご判断いただきたく思います.連載が長期にわたったために,同じ説明を繰り返して少しくどくなっているところがありますが,そのようなところは読み飛ばしていただきたいと思います.
 分子生物学の進歩は著しく,この連載中にも一度解説したことを,その後の新発見のために説明し直さなければならなくなった,ということもありました.したがって,本書の内容のうち,新しい研究分野についての部分は,近い将来変更が必要になるかも知れません.しかし,重要なことは基本を理解するということでしょう.重要と思われる用語はゴチック体とし,索引にあげてあります.知識を整理するためにも,本書がお役にたてばと思います.

1995年6月 著者

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目 次

1.遺伝子とはどのようなものか
 A.蛋白質は遺伝子産物
  蛋白質の機能
  蛋白質の一次構造
  蛋白質の高次構造
 B.遺伝子の本体はDNA

2.真核生物遺伝子の発現
 A. mRNAの合成
 (1)転写
  遺伝子の発現
  RNA分子とその合成
  転写の調節
 (2)発現調節領域と転写因子
  転写プロモーター
  ホルモンによる転写調節
  転写因子
  エンハンサー
  転写因子の構造と機能
  DNA結合ドメイン
  ロイシンジッパー
 (3)RNAプロセシング
  RNAプロセシング
  キャップ構造とポリA
  イントロンとエクソン
  RNAスプライシング
  選択的スプライシング
  トランススプライシング
  リボザイム
  RNA編集
  rRNAのプロセシング
  遺伝子とは?
  転写後の発現調節
 B.蛋白質の合成
 (1)蛋白質の合成
  蛋白質の合成
  コドン
  リボソーム
  トランスファーRNA
  コドンとアンチコドン
  アミノアシルtRNA
  蛋白質の合成  開始反応
  伸長反応
  翻訳の終了
  蛋白質合成と抗生物質の作用
  塩基配列の読み枠と重複遺伝子
 (2)塩基配列と突然変異
  突然変異
  遺伝子突然変異
  ヘモグロビン遺伝子の変異
  地中海貧血サラセミア
  ABO式血液型
  ABO式血液型の生化学
  ABO式血液型の遺伝学
  ABO式血液型の分子生物学
 (3)蛋白質のプロセシングと輸送
  蛋白質のプロセシング
  ペプチド結合の切断
  プレプロインスリン
  プロオピオメラノコルチン
  高次構造の形成
  特定のアミノ酸の修飾
  蛋白質のグリコシル化
  蛋白質のリン酸化
  蛋白質の変性,再生と高次構造
  熱ショック蛋白質
  大腸菌の温度感受性変異株
  シャペロニン

3.原核生物と真核生物
 A.原核生物と真核生物
  始原細胞の分化
 B.原核生物の遺伝子
 (1)バクテリアの遺伝子
  真核生物と原核生物のDNA量
  大腸菌
  大腸菌染色体の構造
  大腸菌遺伝子の転写
  誘導と抑制
  ラクトースオペロン
  転写と翻訳の共役
  転写の終結と減衰
 (2)プラスミドとファージ
  プラスミドとは
  プラスミドの構造
  プラスミドの増殖
  薬剤耐性遺伝子
  大腸菌の性とプラスミド
  プラスミドと遺伝子工学
  バクテリオファージとは
  バクテリオファージの構造
  バクテリオファージの遺伝子
  バクテリオファージの増殖
  溶原性ファージ
  ファージによる形質導入
  バクテリオファージと遺伝子工学
 C.真核生物の遺伝子
 (1)染色体の構造
  真核生物の複雑化
  複雑化1  染色体の構造
  染色体のバンドと遺伝子地図
  複雑化2  2倍体
 (2)塩基配列の繰り返し
  複雑化3  遺伝子の繰り返し構造
  ヘモグロビン遺伝子の繰り返し構造
  真核生物のもつDNA
  DNAの変性と再会合
  複雑化4  反復配列
  いろいろな反復配列
 (3)クロマチンの活性と不活性
  DNAの立体構造と転写
  複雑化5  活性クロマチンと不活性クロマチン
  ランプブラシ染色体
  パフ
  発現が抑制されている領域
  ヘテロクロマチン
  ヘテロクロマチンの代表  Xクロマチン
  発現が抑制されている領域

4.細胞の増殖と分化
 A.細胞増殖と遺伝子調節
  細胞増殖調節についての研究
  細胞外因子による細胞増殖の調節
  促進と抑制
  シグナル伝達
  蛋白質のリン酸化
  転写因子としてのレセプター
  その他の要因
  細胞周期の調節
  コンピテンスとプログレッション
  コンピテンス・細胞の状態
 B.細胞分化と遺伝子発現
  細胞増殖と細胞分化
  動物の発生
  発生の一般的特徴
  極性や部分の決定と位置情報
  ショウジョウバエの発生
  体軸の決定
  体節の形成
  ショウジョウバエの体作り
  哺乳動物の発生調節

5.遺伝子の複製,修復,組換え
 A.DNAの複製
 (1)複製のメカニズム
  遺伝子の伝達
  DNA複製のモデル
  DNAポリメラーゼ
  不連続的複製
  DNA複製機構の研究
  DNAポリメラーゼによる反応系
  複製の反応系
  複製の忠実性
  染色体の複製
 (2)複製の開始
  複製開始の調節
  レプリコン
  大腸菌の開始点
  真核細胞のレプリコン
 (3)染色体の末端テロメア
  環状DNAの複製
  直線状DNAの複製とDNAの末端
  直線状DNAの複製,アデノウイルスの場合
  染色体の末端テロメア
 B.DNAの修復
 (1)DNAの損傷と修復
  DNAは不安定
  DNAの損傷
  DNA損傷と細胞の生存
  DNA修復
  除去修復
  光回復酵素
  複製後修復
  大腸菌のSOS
  その他の修復系
 (2)がんの発生と制がん剤の作用
  DNAの損傷と突然変異
  変異原と発がん物質
  変異原の検出
  がん遺伝子とがん抑制遺伝子
  発がんのプロモーター
  がんの増殖と制がん剤
  制がん剤とDNAの損傷
  DNA複製とDNA前駆物質合成の阻害
  がん細胞の薬剤耐性
 (3)修復に関わるヒトの遺伝病
  DNA修復遺伝子の変異
  色素性乾皮症
  XP相補群,細胞融合による解析
  DNA修復遺伝子の分離
 C.DNAの組換え
  DNAの柔軟性
  相同的組換え
  相同的組換えのモデル
  組換えに関与する酵素
  部位特異的組換え
  それ以外の組換え
  ジーンターゲッティング
  挿入突然変異
  転移遺伝子
  反復遺伝子とDNAの増幅
  抗体産生細胞におけるDNAの組換え
  免疫グロブリンの構造
  抗体遺伝子の再配列
  抗体のクラススイッチ
  超可変領域における突然変異

6.遺伝子の解析と操作
 A.DNA組換え実験法
 (1)制限酵素
  バクテリアにおける制限
  制限酵素地図
  DNAクローニング
 (2)DNAのクローニングとスクリーニング
  クローニングのベクター
  制限酵素による切断と再結合
  遺伝子ライブラリー
  いろいろなベクター
  構造と機能によるスクリーニング
  DNA塩基配列の検出
  サザンハイブリダイゼーション
  コロニーハイブリダイゼーション
  機能によるスクリーニング
  その他のクローニングとスクリーニング
 (3)塩基配列の決定法とPCR法
  塩基配列の決定法
  遺伝子解析の魔法PCR
 B.遺伝子病の解析と治療
 (1)遺伝子異常の診断と治療
  遺伝病の塩基配列異常  三塩基反復配列の増幅
  ハンチントン病
  脆弱X染色体症候群
  筋緊張性ジストロフィーとケネディー病
  DNAの不安定性
  遺伝子診断の結果
  初期胚における男女の判定,着床前診断
  遺伝子治療
  遺伝子治療の方法
  治療への応用
  遺伝子治療の問題点
 (2)標的遺伝子組換え
  トランスジェニック動物
  細胞に移入した遺伝子
  逆転遺伝学
  胚性幹細胞とキメラ動物
  標的遺伝子組換え

索引

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