序 文
消化器内科領域の研修を行う研修医,若手医師の診療の参考になる携帯可能なガイドブック的な教科書を目指して消化器内科グリーンノートを編集させていただきました.執筆は島根大学消化器内科・肝臓内科のスタッフと関連の施設の先生方を中心に,専門の先生方のサポートをいただき,消化器疾患の診療であれば救急室でも外来でも,病棟でも役立つように作成されています.本書の構成は診断の基本,治療の基本として診断や治療に用いられる手技や薬剤などの解説が最初に記載されています.それに続いて救急外来を受診することが多い消化器疾患への基本的な対応が書かれております.本書があれば救急外来で困ることが少なくなると思います.また,一般外来を受診する患者の主訴となりやすい症状,徴候に関しても一般外来での対応としてまとめております.外来で患者の病状が把握できなくて,どのように診断確定と治療を行ったらよいか迷うことが少なくなると思います.これらの総論的な記載に続いて消化器疾患各論として,各消化器疾患の診療方法が記載されています.
本書はポケットに入るサイズの小さなガイドブックです.この小さな本の中に記載できるボリュームは多くはありません.このため,何を記載し,何を記載しないかは大変重要な選択となります.本書は利用者として研修医や若手医師にフォーカスを絞って,彼らが救急室で,外来で,病棟で消化器疾患の患者,消化器症状を訴える患者を診療するときに役立つことを目指して編集と執筆がなされております.このため,本書には最先端医療に関する記載は多くはありませんが,本書を参考にしていただきますと消化器疾患の診療の基本が手に取るようにわかり,普段の診療で困ることはないだろうと考えております.
最近は,若手の先生たちは,診療の現場でも疑問があるとすぐにスマホを取り出して検索をしているようです.スマホで検索することも良い方法の1つだと思いますが,得られる情報が玉石混合となりやすいと考えられます.本書はスマホよりは,すこし大きくなりますが,白衣のポケットに本書を入れて消化器系の研修を行っている若手医師が増えてくることを願っております.
2016年10月
島根大学内科学第二 教授 木下芳一