序
旧「スポーツ整形外科マニュアル」は故萬納寺毅智先生が関東労災病院スポーツ整形外科部長であった1991年に出版された著書です.
外来や病棟で患者さんに向き合うとき診断・手術だけでなく競技復帰までのリハビリテーションの道筋も重要な問題でした.リハビリの各段階でできることは何か,いつ練習を始められるのか,競技を始められるのはいつ頃かといったことを,ある程度具体的に示す必要がありました.スポーツ整形外科のテキストは既にありましたが,それとは別に代表的な外傷・障害のリハビリプロトコールをわかりやすく解説したパンフレットが関東労災病院スポーツ整形外科の病棟には備えてありました.それを基に患者さんに説明しながら後療法を行っていました.萬納寺先生の旧著の序文を再録し,本書のコンセプトの説明に替えたいと思います.
「このような必要性に応じて生まれたリハビリテーション中心の小冊子に,診断・治療などを書き加えたのが本書である.外来の診察机の中にでもおいて頂き,診察の一助になれば幸いである.
なお本書は学生クラブ活動レベル以上のスポーツ選手を,主に対象としているので,一般のスポーツ愛好家にとっては復帰が遅すぎるきらいがあると思うが,御批判を頂ければ幸いである.
なお最近は後療法が急速に早くなってきておりそれを競うかのような風潮があるとも思う.基礎的データを無視した超早期のリハビリテーションは医療サイドにとり決して良いものではなく,患者サイドでも再発など隠れた問題点は少なくない.われわれは厳に患者側に立った治療を行って行くべきだと思う.」
本書が萬納寺毅智先生のマニュアルの改訂版として出版できることになるにあたりましては,福林徹先生,メディカルコーディネーター吉野秀昭氏に大きな御尽力を頂きました.お二人のお力添えがなければ改訂版を作ることは不可能でした.また執筆を引き受けてくださった全ての著者の先生方のお力の結集でこのようにアップデートされた形になりました.萬納寺先生の御家族からは快く改訂版出版の許可を頂きました.中外医学社の秀島悟氏,宮崎雅弘氏,沖田英治氏のお力で本の形になりました.深く感謝いたします.
ありがとうございました.
2013年8月19日
篠塚整形外科
篠塚昌述