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書籍詳細

症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z

症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z

忽那賢志 著

A5判 302頁

定価4,400円(本体4,000円 + 税)

ISBN978-4-498-02122-8

2015年04月発行

品切れ・重版未定

海外渡航者が増加の一途をたどる現代社会において、いかなる医療機関においても輸入感染症に遭遇する可能性は少なくありません。マラリアや腸チフスなどのメジャーな疾患から近年話題のデング熱やエボラ出血熱、さらには見落としてはいけないマイナーな感染症まで、「日本で」診る可能性のある輸入感染症の適切な診療について忽那、上村の師弟コンビが対話形式でゆる〜く解説します。

まえがき


 本書のタイトルは『症例から学ぶ輸入感染症A to Z』です.最初にお断りしておきますが,看板に偽りあり,です.本書は輸入感染症のすべてを網羅しているわけではありません.実臨床で遭遇する頻度が高い疾患については網羅していますが,無鉤条虫症やスナノミ症などの疾患は扱っていませんし,MERSやインフルエンザH7N9などについても触れていません.読者の方が「過大広告だ!」と訴訟を起こされる前に自己申告しておきたいと思います.
 本書は「日本で」輸入感染症を診療する際の一助となることを目的として作成いたしました.熱帯感染症やトラベルメディシンの良書はすでにたくさんありますし,私ごときがかなうべくもありません.また,日本国内には私よりも熱帯感染症やトラベルメディシンの造詣が深い先生がたくさんいらっしゃいます.しかし……しかし,なぜ私が本書を書くに至ったかと申しますと,こと「日本で輸入感染症を診る」という点においては,それなりに自負があるからであります.アフリカで診るマラリアと日本で診るマラリアは同じ感染症であっても違います.それは診断へ至る過程の鑑別疾患であったり,検査方法であったり,また治療方法であったり.この本は「日本で」輸入感染症をどう診るのかという視点から書かれており,同じく日本で実臨床をされている臨床医の先生方のお役に立てるのではないかと思っております.
 実は本書を書き始めたきっかけは,国立国際医療研究センター国際感染症センター(DCC)で出版予定の『グローバル感染症マニュアル』という本のコラムでした.そこで本書のような「症例から学ぶClinical Problem Solving形式」を取り入れてみたのですが,どうにも前衛的すぎたのか編集者の方に「ちょちょ,ちょっとこれは……(絶句)」ということで不採用になってしまいました.危うくお蔵入りになりかけたところに,中外医学社の岩松さんが「いいですね!」と言ってくださりトントン拍子に書籍化ということになってしまいました.中外医学社の英断(なのかどうなのかわかりませんが)に感謝いたします.本書を書き始めたのは2014年12月ですが,あまりにトントン拍子に進みすぎたため,元々の『グローバル感染症マニュアル』と発売時期が被りそうなのでちょっと気まずいのですが,『グローバル感染症マニュアル』は輸入感染症だけでなく渡航前相談も詳しく載っていますし,マニュアル本として使っていただくことを想定しています.輸入感染症の診断にフォーカスした本書とは内容の重複はあまりないはずですので,ぜひそちらもお読みいただければと思います(よし,これで早川先生には怒られないはずだ……).なお,本書の内容は私忽那の個人的見解に基づいたものであり,国立国際医療研究センター 国際感染症センターの見解ではありませんので,そこんとこよろしくお願い致します.
 私が輸入感染症に興味を持ったのは,ある一人の患者さんがきっかけでした.2010年10月のことです.当時,私は奈良市の市立奈良病院という市中病院で一人感染症医をやっていました.そこで非常に珍しい輸入感染症を経験したのですが(本書にも登場します),私はその症例を通じてすっかり輸入感染症の魅力に取り憑かれてしまいました.ちょうど大曲貴夫先生が国立国際医療研究センターに移動されるという話を聞きつけ,「ここしかない! そしてこのタイミングしかないッ!」と思い家族を説得し,2012年に国立国際医療研究センターの国際感染症センターという部署にやってきたわけです.そこで今回の国内デング熱や西アフリカでのエボラウイルス病のアウトブレイクといっためくるめく輸入感染症系のイベントを経験できました.東京にやってきて早3年ですが,楽しい仲間に囲まれて本当に退屈しない日々が続いています.もしこの本を読んで輸入感染症に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら,ぜひ国立国際医療研究センター 国際感染症センターで一緒に働きませんか? いつでも見学可能ですのでお待ちしております.
 最後に,私に輸入感染症の世界を教えてくださったボス・大曲貴夫先生を始めとする国際感染症センターの皆さま,そして私に学ぶ機会を与えてくれたすべての患者さんに心より感謝いたします.あと,上村も.

2015年3月
忽那賢志

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目 次

各感染症の流行地域と潜伏期間

A はじめに〜日本を取り巻く輸入感染症
B 海外渡航歴を取ろう!
C 渡航地はどこだ!
D 潜伏期から絞り込もう
E 曝露歴をしっかり聴取しよう!
F 渡航歴で聴取すべき問診事項
G 身体所見と検査所見,特徴があれば儲けもの
H マラリア,マラリア,そしてマラリア
 Column マラリアにキノロンは効くのか?
I 予防内服していても……時間が経っていても……
J 第5の刺客……?
K 赤い海に浮かぶ白い島?
 Column ヨーグルトとカルピスをグラム染色してみよう
L デングのようでデングでない
M 季節外れでも……
N 渡航歴があるからこそ性交渉歴を!
O たかが下痢症,されど下痢症
 Column キャンピロバクター腸炎は辛い
P 下痢,ときどき便秘……?
Q 下痢をしているからといって……
R 輸入感染症ではオッカムのかみそりの切れ味が悪い
S 流行には敏感に!
T 海外での入院歴は要注意!
U 海外で犬に咬まれたら
 Column パロモマイシンは必要なのか?
V 渡航歴がなくても……その1
 Column ドイツ人中年女性は日本のどこでデング熱に感染したのか?
W 渡航歴がなくても……その2
 Column うどんCT
X ときには稀な輸入感染症も……
 Column 日本でも土着回帰熱?
 Column 日本海に浮かぶ無人島にまだ誰も罹ったことのない回帰熱ボレリアが……?
Y 基本を大事に!
Z エボラを取り巻く問題について

索 引
本書で登場する主な感染症

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