はじめに
この春,順天堂大学を定年退職するにあたり,退職記念として「IgA腎症を診る」を上梓しました.私は,1974年順天堂大学医学部を卒業後,市立札幌病院病理・内科,北海道大学第一病理,東海大学内科,順天堂大学腎臓内科で素晴らしい先輩たちのご指導を受け,多くの仲間たちとともに臨床診療と基礎研究・教育を行ってきました.心から厚く御礼申し上げます.特に,市立札幌病院・順天堂大学病理で基礎医学の厳しさと面白さをお教えいただいた白井俊一先生,東海大学内科で基礎と臨床の連携の重要性をお教えいただいた堺秀人先生,また順天堂大学で臨床における基礎研究の重要性をお教えいただき,私に活躍の場をお与えくださった小出輝先生には,心から御礼申し上げます.
当初,私が仮説を立てて行った研究成果の一部が現在のIgA腎症病態解明の基礎資料になったり,さらには活かされているものもあり嬉しく思っています.それらは,すべてこれまで多くの仲間たちと行った成果であります.もう少し研究を深めていればIgA腎症の発症・進展機序の解明や治療法の確立がもっと早く進んだのではないかとの想いもあり,若干の悔いが残っています.また,全く的外れの研究も多かったように思います.臨床の場では,多くの患者さんの診療に関わらせていただき,大変勉強させていただきました.これら多くの患者さんのご協力に深謝いたします.
本書は,これまでの私の基礎・臨床研究開始初期の内容を紹介し,これまで執筆してきた拙著の内容を取り込みながら,IgA腎症研究・治療の動向・今後への期待を自分なりにまとめたものです.私自身これまでの自らの基礎・臨床研究を振り返ってみることができたと思っていますが,腎臓内科学に関わっている多くの若手の臨床医と研究者のお役にたてれば幸いです.ご一読いただければ,望外の喜びでもあります.これまで,長い間ともに学んできた市立札幌病院,東海大学,順天堂大学の諸先輩・仲間たちに感謝し,本書を謹呈したいと思っています.今回,本書の刊行にあたり特にご協力いただいた順天堂大学医学部腎臓内科学講座の鈴木祐介博士,大澤勲博士,鈴木仁博士,日高輝夫博士に深謝いたします.
最後に,本書の刊行にあたりご協力いただきました小川孝志部長はじめ中外医学社の皆さまに厚く御礼申し上げます.
2015年春 神田川のほとりにて
定年退職を前に 富野康日己