「こどもの身体の基準 ―検査値と身体所見―」の発刊にあたって
わが国の少子化が止まらない.このことは,わが国の将来を担う次世代の人材が不足することにつながり,悲観的に考えざるを得ない.政治家は子育て支援を行い,挙児希望者への手当を手厚くし,対策を講じている.
こどもたちに直接向かい合う私達小児科医にできることは何であろうか? それは生を受けたこどもたちを健やかに成育させることである.そのためにまず行うべきは,こどもの健康状態の正確な把握である.正確な健康状態の把握は診察,すなわち身体所見や検査所見からなされる.しかし小児は成人と異なり,成長と発達の過程にあるため,年齢などによって変化する.この点がこどもの診察の難しさであり,またプロフェッショナルとしての醍醐味でもある.したがってこれまでも小児の検査基準値に関する書籍は少なからず発刊されてきた.
本書は,「医学生を含めた小児医療に携わる全てのプロフェッショナル(研修医,一般開業医,看護師,検査技師)のために,小児の検査値や評価法について,平易かつコンパクトにまとめた書を提供する」ことを目的として立案した.さらに企画段階で,「現場で役立つ書籍とするためには,小児の身体所見(バイタルサイン,身長や体重,発達指標など)のみかたも包含すべきである」と思うに至った.一方で,コンパクトであることも重要と考え,身体所見を追加する分,検査項目に関しては,年に1度はオーダーするような一般的な検査項目に限定した.ただし,最近実施されるようになった新規の検査項目について実施頻度が高くなると予想されるものは掲載した.
上記のような編者の独善的な思いで企画した書籍であるので,執筆は私の信頼できる仲間である関西医科大学小児科学講座のスタッフのみに依頼した.
したがって本書には臨床現場で培った貴重な指導医の経験が詰まっており,小児医療に携わる全てのプロフェッショナルにとって必携の書となることを願ってやまない.
2014年7月吉日
関西医科大学小児科学講座 主任教授
金 子 一 成