プロローグ
本書には際立った特徴が一つあります.通常の書籍は,中身の記述で情報が完結している場合が多いでしょうが,本書ではインターネットという巨大空間に開いており,本書を手掛かりにして膨大な情報への糸口となるはずで,私自身もその意識で書いています.元来そのつもりで書いた記事から採用したもので,それとのかかわりが大きくて当然です.他に一部,書籍紹介の文章を含めましたが,これも内容や記事がインターネットにかかわっているものを中心に選びました.
数年前から,「呼吸」という雑誌に,「インターネットでみる『呼吸器』」という記事を連載しています.本書の原稿は基本的にそこから採用しました.内容の大部分は医学一般に関するもので,呼吸器の要素は最後の章に少しだけ加えました.私は血液ガスつまり酸素と二酸化炭素の問題を学んでいるので,呼吸器とはいっても医学一般に近い故もあり,その意味でも採用しやすい気持ちでいます.個々の病気の詳細な議論は避けています.
タイトルにつかった「医楽」は,私が今回初めて採用した造語です.少し以前からこの仕事が「本当に楽しい」と感じるようになってきました.特に2011年11月に山道で滑落事故を起こし,それ以来脊椎骨の圧迫骨折の後遺症で体力のパワーもスタミナも低下しています.幸いにして,四肢の麻痺や頭脳の異常は,少なくとも自覚的にはありません.でも,スタミナの低下がはなはだしく,その能力の恢復の遅れに一時は苛立ちましたが,「まあ残った機能がかなりあるから,それをうまく使おう」という気持ちに落ち着いてきました.身体を動かすことに,以前ほどは時間とエネルギーを費やせない点も,そんな気持ちを助けているようです.
なお,「呼吸」の記事には英語のタイトルをつけてあり,これはそのまま残しました.必要はないのですが,せっかく存在するものを除去するのももったいなく,読者の参考になるかも知れないと感じました.また書籍紹介の記事は,一般記事風に書き換えたことをお断りします.
また,最初に調べた時点では存在したURLで,現在は消滅したもの,当初はオープンアクセスだったのに現在は有料のものなどがあります.判明したものは加えましたが,手の及ばないもののある点をお詫びします.
2013年 初夏
諏訪邦夫