序
近年小児循環器領域において,内科的治療また外科的治療面の進歩は顕著です.またバージョンアップされた心エコー,3D?CTなどの導入により過去に比して診断技術の向上は著しいものがあります.しかし外来,入院,学校検診の場においての基本診断ツールは,聴診,胸部レントゲン,12誘導心電図です.その中でも心電図は多くの情報をわたくしたちに提供してくれる基本検査といっても過言ではないと考えています.しかし漫然と眺めていてもその情報を心電図から引き出すことは困難です.肥大所見や不整脈を診断するにあたり,まずは正常心電図の基本的な理解が必要です.そのような観点から本書は小児心電図の特徴,正しいとり方などの基本項目から異常波形の見方,最新の知見をふくめた不整脈解説など14項目に分け,それぞれの執筆者に形式にとらわれず執筆していただきました.各章において,そのテーマに関して基本から解りやすく概説してあり,小児循環器医のみならず学生,研修医,小児科医に臨床の場で役立つ1冊の本になればと考えています.今回本書の編集にあたり,各章の執筆者の選定に関しては,わたくし独自の判断で,約25年の歴史をもつ九州小児不整脈研究会の会員にお願いしました.この研究会は田崎 考先生(佐賀)が年に1回九州各地より心電図を持ち寄り皆で検討し理解を深めていく趣旨のもと開催されたものです.その後,福重淳一郎先生(福岡),城尾邦隆先生(福岡)の尽力により現在に至っています.そのような会で育成され現在,九州・山口の臨床の第一線にて活躍されている先生にお願いしました.それぞれの先生の本会でのさまざまな心電図との出会い,その心電図を理解できた時の感動を思い起こしながらの執筆であったと考えます.読者の方々へその思いが通じることを願っております.
最後に本書の完成にあたり,長年九州小児不整脈研究会の顧問としてわたくし,各章の執筆者に多くの知見を与えて頂きました新村一郎先生(新村医院)に感謝申し上げます.
2013年8月
高木純一