序
今回,中外医学社から「神経因性膀胱ベッドサイドマニュアル」が発刊されることになりました.本書は,泌尿器科医,神経因性膀胱を専門としない神経内科医や一般内科・脳外科・整形外科・リハビリテーション医,さらに患者さんに接する看護師,コメディカルの方々を広く対象に,過活動膀胱も含めた神経因性膀胱に関する知識を,エキスパートの立場からわかりやすく解説する書です.総論的知識はもちろん,診断・治療のノウハウを実践的にまとめる,神経因性膀胱診療ガイドブックの決定版と言っては言い過ぎですが,それに近いものができたように思います.
総論は,下部尿路症状へのアプローチと神経診察入門,臨床オリエンテド─下部尿路の解剖と生理および受容体と薬理,ウロダイナミクス検査波形のとり方と読み方,括約筋筋電図のとり方と読み方,神経因性膀胱を診療するのに必要な前立腺肥大症・腹圧性尿失禁・間質性膀胱炎・夜間多尿・薬剤性・心因性排尿障害の鑑別と治療,神経因性膀胱の治療方針,間欠導尿の指導の仕方について,第一線の先生方に御執筆を頂きました.
各論は,非常にバラエティに富みますが,脳の疾患については,重要で頻度も高いParkinson病・脳血管障害を,脊髄では脊髄損傷・二分脊椎を,末梢神経では糖尿病の項目をまず御覧頂きますと,脳・脊髄・末梢神経の障害で,どのような排尿障害をきたすのか,その場合どのように対処したらよいかがわかりやすいように思います.一方,Ochoa症候群・Fowler症候群といった,稀ながら遭遇する可能性のある疾患についても,簡略に触れています.
本書は,全体がコンパクト,コンサイスで,携帯にも便利であり,患者さんに実際に接する先生方,看護師さん,コメディカル,ケアに携わる方々に,必ず役に立つ一冊であると思います.本書をベッドサイドで手に取って頂き,知識の整理,治療・ケア方針の決定に役立つならば,望外の喜びです.
最後に,編集発刊に向け終始御助言を賜りました,中外医学社五月女謙一さんに心より深謝申し上げます.
2014年3月
東邦大学医療センター佐倉病院神経内科准教授
榊原隆次