コメディカルのための専門基礎分野テキスト
公衆衛生学 改訂3版
柳川 洋 編
A5判 306頁
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
ISBN978-4-498-07672-3
2014年04月発行
在庫あり
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コメディカルのための専門基礎分野テキスト
公衆衛生学 改訂3版
柳川 洋 編
A5判 306頁
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
ISBN978-4-498-07672-3
2014年04月発行
在庫あり
3版の序
2008年の第2版刊行以来6年が経過し,この間の社会経済情勢の変化に伴い,わが国の公衆衛生事情も大きく変わったので,このたび3版を刊行することになり,大幅な改訂に踏み切ることにしました.
「健康日本21」が2000年に発足して10年経過したところで最終評価が行われ,2011年にその結果が発表されました.それによると,9分野(栄養・食生活,身体活動・運動,こころの健康づくり,たばこ,アルコール,歯の健康,糖尿病,循環器病,がん)で掲げられた到達目標80項目のうち,再掲21項目を除く59項目について評価した結果,目標値に達した10項目と改善傾向にある25項目を合わせた35項目(59%)が良い方向を示していましたが,決して満足すべき成果が得られたとはいえません.これらの結果を受けて,厚生労働省は2012年7月に国民の健康づくり計画を総合的に推進させるための基本計画を大幅に変更し,2013年度から10年間の活動を対象にした新たな計画「健康日本21(第2次)」が策定されました.急速に高齢化が進む中で,国民の健康づくりは公衆衛生の最も重要な課題として位置づけられます.この際,学生諸君には,健康づくりに関する正しい知識を身につけていただきたいと考え,本版ではできるだけ多くの情報を取り入れることにしました.
2013年9月にアルゼンチンで開催されたIOC総会で,2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりました.生活習慣病の増加に伴う医療費の増加,寝たきり・認知症などによる要介護者の増加,介護施設・介護要員の不足などは,いずれもオリンピック開催以前の緊急課題として,解決しなければならない問題です.医療人を目指す学生諸君は,この点の課題にも関心を持ち,今後のあるべき姿について真剣に考えていただかなければなりません.
今回の第3版改訂に当たっては,保健師,看護師,助産師,理学療法士,作業療法士,臨床検査技師など,いわゆるコメディカルの専門職を目指す学生に対して,公衆衛生学の様々な課題を理解するために必要な基礎的な事項を学ぶための教科書として編集執筆しました.第一線で公衆衛生活動および健康管理業務に従事している方々にとっても手引き書として役立つことを願 っています.
改訂にあたり,最近の新しい動きを的確に捉え,読者の皆様方に正しい情報が提供できるように努めましたが,不十分な点も多々あると思います.皆様方の忌憚のないご意見,ご批判をいただきたく,また,不正確な記述などを指摘していただければ幸いです.
最後に,改訂に当たり煩わしい仕事を快く引き受けてくださった中外医学社のスタッフ各位に厚く御礼申し上げます.
2014年2月
編集者を代表して 柳川 洋
目 次
1 公衆衛生の意義 <柳川 洋>
1.公衆衛生の目指すもの
2.健康と公衆衛生
3.疾病予防の段階
4.健康管理
2 地域保健と医療制度 <久保訓子>
1.地域保健
a. 保健行政の歩み
b. 地域保健対策の推進に関する基本的な指針
c. 保健所活動
d. 市町村保健センターの事業
2.医療制度
a. 医療法の概要
b. 医療施設
c. 保健医療従事者
d. 医療計画
e. 医療保険と国民医療費
3 国際保健 <萱場一則>
1.保健水準の国際比較
2.世界人口と人口問題
3.環境保健
4.感染症
a. 急性重症感染症
b. マラリア
c. 結核
d. 後天性免疫不全症候群(AIDS)
5.WHOとわが国の国際保健活動
a. 世界保健機関(WHO)
b. わが国の国際保健活動
4 疫学概論<柳川 洋>
1.疫学の定義
2.疫学の発展に寄与した人物
a. ヒポクラテス
b. グラウント
c. スノー
d. パーヌム
e. グレッグ
f. リンド
g. 高木兼寛
h. ゴールドバーガー
3.疫学の応用
a. 疾病発生要因の追求
b. 疾病自然史の解明
c. 疾病予後要因の解明
d. 疾病頻度の将来予測
e. 疾病対策の企画・評価
f. 健康水準の測定,地域診断
g. 臨床医学への応用
5 疫学指標<神田 晃>
1.割合・比・率
a. 割合
b. 比
c. 率
2.よく用いられる疫学指標
a. 罹患率
b. 累積罹患(率)
c. 有病率
d. 死亡率
e. 致命率
f. 相対頻度
3.相対危険と寄与危険
a. 相対危険
b. 寄与危険
c. 寄与危険割合
d. 集団寄与危険
e. 集団寄与危険割合
6 疫学調査方法<坂田清美>
1.疫学研究方法の分類
2.観察研究
a. 記述研究
b. 分析研究
3.介入研究
7 保健統計資料の活用<三浦宜彦>
1.人口静態統計
a. 人口ピラミッド
b. 人口の年齢3区分の推移と現状
c. 人口の将来予測
2.人口動態統計
a. 出生
b. 死亡率
c. 乳児死亡率
d. 死産率
e. 婚姻率
f. 離婚率
3.国民生活基礎調査
4.患者調査
5.生命表
a. 世代生命表
b. 現状生命表
8 生活習慣病の疫学
A.循環器疾患の疫学 <萱場一則>
1.循環器疾患
2.危険因子
3.わが国における死亡率と罹患率の年代推移
4.国内の地域差
5.国際比較
6.予防
a. 予防の概要
b. 1次予防
c. 2次予防と臨床試験
B.がんの疫学 <大木いずみ>
1.がんの発生状況
a. がん全体の状況
b. がんの部位別の状況
2.がんの生存率
3.がん対策
a. がんの一次予防
b. がんの二次予防
c. がんの三次予防
C.糖尿病の疫学 <萱場一則>
1.糖尿病
2.糖代謝異常と糖尿病の定義
3.有病率と予後
a. 国際比較
b. わが国の現状
4.予防
a. 生活習慣改善による発症予防
b. スクリーニングにおける検査法
9 生活習慣病対策
A.「健康日本21」の概要 <柳川 洋>
1.「健康日本21」の趣旨
2.「健康日本21(第二次)」の発足
3.健康寿命の延伸と健康格差の縮小
4.主な生活習慣病の発症予防と重症化予防に関する目標
5.生活習慣および社会環境の改善に関する目標
6.「健康日本21」に関する資料
B.国民栄養の現状 <大木いずみ>
1.国民健康・栄養調査の概要
a. 栄養素の摂取状況
b. 食品群別の摂取状況
c. 身体状況
d. 生活習慣
C.対策の根拠としての疫学 <三浦克之>
1.国民のための疫学的エビデンス
2.NIPPON DATAとは
3.血圧と循環器疾患
4.血清コレステロールと心筋梗塞リスク
5.NIPPON DATAリスク評価チャート
10 母子保健<小林正子>
1.母子保健の動向
2.母子保健の水準・指標
a. 出生率・合計特殊出生率
b. 乳児死亡率
c. 周産期死亡率
d. 妊産婦死亡率
e. 幼児および児童の死亡率
3.母子保健行政
a. 母子保健法
b. 児童福祉法
4.主な母子保健活動
a. 健康診査
b. 保健指導
c. 医療援護
d. 母子保健の基盤整備
5.母子保健の現状と課題
a. 少子化
b. 低出生体重児の増加
c. 生活習慣の乱れ
d. 20歳未満の人工妊娠中絶の増加と性感染症の増加
e. 親子の地域からの孤立
f. 児童虐待
6.健やか親子21
7.リプロダクティブ・ヘルス/ライツとバース・ライツ
11 学校保健<門田 文>
1.学齢期の健康状況
a. 死亡
b. 体格・体力
c. 疾病・異常
2.学校保健の概要
3.保健教育
4.保健管理
a. 健康診断
b. 感染症の予防
c. 学校環境衛生
d. 学校医・学校歯科医・学校薬剤師の任務
5.学校安全・学校体育・学校給食
a. 学校安全
b. 学校体育
c. 学校給食
6.学校保健の最近の課題
a. 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育など
b. 性の低年齢化,性感染症
c. 暴力行為・いじめ・不登校など
12 老人保健・福祉<坂田清美>
1.老人保健
a. 老人保健対策の歴史
b. 老人保健法
c. 高齢者の医療の確保に関する法律
d. がん検診
2.老人福祉
a. 老人福祉法
b. 老人福祉対策
3.介護保険法
a. 介護保険法の意義
b. 保険者,被保険者,保険料の徴収方法
c. 給付の利用手続き
d. 保険給付の内容
e. 介護保険の費用負担
13 精神保健福祉<久保訓子>
1.精神障害者の現状
2.精神保健対策の歩み
3.精神医療
a. 入院形態
b. 精神障害者の入院に対する保護の申請・通報・移送
c. 自立支援医療(精神通院医療)
4.地域精神保健福祉と社会復帰対策
a. 精神障害者地域移行・地域定着支援事業
b. 精神障害者保健福祉手帳制度
14 感染症対策<土井由利子>
1.感染症対策の原則
2.感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律の概要
a. 総論
b. 基本指針,予防計画,特定感染症予防指針
3.検疫法の概要
4.予防接種法の概要
5.「改正法」における結核に関する個別規定
6.最近のトピックス
a. 結核
b. HIV/AIDS
c. 風しん
d. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
e. インフルエンザ
f. コロナウイルス感染症
15 食品保健<谷原真一>
1.食品添加物
2.ポジティブリスト
3.保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品),健康食品
4.食中毒
a. 食品安全基本法
b. 食品衛生法
c. 食中毒の原因
d. 食中毒の現状
e. 食中毒原因調査
16 産業保健<黒沢洋一>
1.産業保健とは
2.産業保健体制と労働衛生管理
a. 産業保健体制
b. 労働衛生管理
3.労働災害と職業性疾患
a. 労働災害
b. 職業性疾患
17 環境衛生と公害<黒沢洋一>
1.生活環境
a. 空気と健康
b. 温熱環境
c. 上水道
d. 下水道
e. 住居環境
f. 衣服衛生
g. 廃棄物
h. 電磁波と電磁界
i . 放射線
2.公害
a. 公害とは
b. 大気汚染
c. 水質汚濁
d. 慢性砒素中毒症
3.環境基準と現状
a. 大気汚染
b. 水質汚濁
c. 騒音
d. 振動
e. 化学物質
f. その他
4.地球規模の環境問題
a. 温暖化
b. 酸性雨
c. オゾン層破壊
d. 砂漠化
18 社会保障・社会福祉<朝日雅也>
1.社会保障と社会福祉
a. 健康で文化的な生活の保障
b. 社会福祉とは何か
2.医療保険制度
a. 医療保障の構成
b. 国民皆保険
c. 医療保険の種類と対象
d. 医療保険制度の内容
e. 保険診療の仕組み
f. 高齢者医療の仕組み
g. 医療保険の課題
3.身体障害者福祉の概要
a. 障害とは何か
b. 障害の3つのレベル
c. 障害者の実態
d. 障害者の福祉サービス
4.生活保護
a. 生活保護制度とは
b. 生活保護の原理と原則
c. 生活保護の種類
d. 生活保護の給付
e. 生活保護の行政主体
f. 生活保護の実態
19 統計解析の基礎<三浦宜彦>
1.データの種類
2.記述統計
a. 数量データの記述統計
b. 質的データの記述統計
3.確率分布
a. 離散確率分布
b. 連続確率分布
4.統計的推定
a. 点推定
b. 区間推定
5.仮説検定
a. 平均値の検定(母分散が未知の場合)
b. 平均値の差の検定(対応のない場合で母分散は未知であるが等しいと仮定できる場合)
c. 平均値の差の検定(対応のある場合で母分散が未知の場合)
d. 割合(比率)の検定
e. 割合(比率)の差の検定
f. 分割表による検定
g. 対応のあるデータの検定
h. 検定における留意点
6.相関と回帰
a. 相関係数の推定
b. 回帰直線の推定
c. 検定
7.ノンパラメトリック検定
8.寿命データの計算
カプラン-マイヤー法
9.調査に必要な標本数(標本サイズ)
2群間の割合の差の検定に必要な標本サイズ
20 よいグラフの作り方<柳川 洋>
1.よいグラフとは
2.棒グラフ
3.帯グラフ
4.円グラフ(パイグラフ)
5.線グラフ
6.ヒストグラム(度数分布図)
7.散布図
8.地図
索引
執筆者一覧
柳川 洋 自治医科大学名誉教授・埼玉県立大学名誉教授 編
萱場一則 埼玉県立大保健医療福祉学部教授 編
久保訓子 前香川県東讃保健所長
神田 晃 華学園栄養専門学校・華学園栄養指導センター長
坂田清美 岩手医科大学衛生学公衆衛生学教授
三浦宜彦 埼玉県立大学学長
大木いずみ 栃木県立がんセンター研究所疫学研究室長
三浦克之 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門教授
小林正子 女子栄養大学保健栄養学科教授
門田 文 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門/アジア疫学研究センター特任准教授
土居由利子 国立保健医療科学院疫学調査研究分野統括研究官
谷原真一 福岡大学医学部衛生公衆衛生学准教授
黒沢洋一 鳥取大学医学部社会医学講座健康政策医学分野教授
朝日雅也 埼玉県立大学保健医療福祉学部教授
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