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書籍詳細

緩和治療薬の考え方,使い方

緩和治療薬の考え方,使い方

森田達也 著

A5判 372頁

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-01796-2

2014年03月発行

在庫なし

はじめに
 筆者がはじめて本格的な緩和ケア専門施設(聖隷ホスピス)に足を踏み入れたのは医学部6年生の1991年だったと思う.いまからわずかに20年ほど前のことである.その時点で利用可能であったオピオイドはオキシコンチン・経皮吸収フェンタニル登場前なのでモルヒネとフェンタニル注射薬だけだった.抗精神病薬は非定型抗精神病薬登場前だったので,セレネース,コントミン,ヒルナミンであった.抗うつ薬はSSRI,SNRIの登場前でアナフラニールを点滴して使用していた.いまや緩和治療の「標準治療薬」とされているサンドスタチンの消化管閉塞の適応はなく,鎮痛補助薬として保険適応を持っている薬剤もなかった.そのような中,医師たちは限られた薬剤で症状緩和を図っていた.

 今日,緩和領域に限らず,毎年毎年数多くの新しい薬剤が登場する.緩和ケア領域でも多くの臨床試験が行われるようになり,数年前までは「効果がある」とされていた治療が「効果がない」ことが示唆されることもみられるようになった.
緩和治療の薬物療法を行う上で,個々の薬剤に関する知識を蓄積することが求められている.そんな中,本書は,既存の緩和ケアの出版物にない「デジャブー感のない」ものを目指した.特に気を付けたことがいくつかある.

 1つ目は,臨床研究の知見をなるべく取り入れて解説したことである.臨床研究はいわゆる個々の領域で古典といわれる代表的なものはおおむね含め,そのうえで,最近の知見として目につくものを紹介した.これらのうちのいくつかは出版後に知見を覆す研究がまた得られると思われるが,緩和ケア領域でも臨床研究の知見を患者さんに反映することの重要性を感じていただければと思う.

 2つ目は,一般の医師にとって整理されにくい精神科領域の記述を多くした.特に精神科医にとってはよくみる常識的な内容だが,一般の医師は何度みても頭に残らない内容を視覚的に表現できるように心がけた.この点については,20年にわたって公私ともにご指導いただいている我が国のサイコオンコロジーグループの先生方に感謝したい.

 3つ目は,間違いも含めて,筆者の考えを前面に出した.今やあたりさわりのないことは巷に多くある緩和ケアの教科書やマニュアルで情報が得られるので,それらの本には記載されないストーリーを筆者の体験をふまえて書いた.この点については,筆者の理解不足で明らかな誤りもあると思いますが,お許し下さい.

 本書が,緩和ケアに関わる医師をはじめとするみなさんの知識の補充と,少し楽しみながら見てもらえるものになれば幸いです.最後になりますが,本書を書こうという気になったのは,白土明美先生(聖隷三方原病院臨床検査科)が図表の作成・資料の整理などを手伝ってくれると手を挙げてくれたからです.心より感謝します.また,本書の製剤に関する多くの箇所について医師にはわからない点を丁寧に対応してくれた伊藤智子さん(聖隷三方原病院薬剤部)に感謝します.

2014年1月
森田達也

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目次

§1 痛みに対する薬
 1.オピオイド総論
  A.ものすごく単純化したオピオイドのイメージ
  B.古典的WHOラダーと現代版ラダー
  C.現実的な使用パターン
  D.オピオイドの特性についてのエビデンスのまとめ
  E.オピオイドの特性に従った使い分け
  F.オピオイドの換算
  G.オピオイドの副作用対策
  H.EAPCの推奨と系統的レビューのまとめ
  I.日本緩和医療学会の疼痛ガイドラインの推奨文
 2.オピオイド各論
   Overview
  A.オキシコドン
  B.フェンタニル
  C.モルヒネ
  D.トラマドール
  E.メサドン
  F.レペタン
§2 痛みの治療薬:鎮痛補助薬
   Overview
  A.リリカ
  B.トリプタノール
  C.ケタラール
  D.サインバルタ(R)
  E.キシロカイン
  F.テグレトール
§3 非オピオイド鎮痛薬
   Overview
  A.アセトアミノフェン
  B.経口NSAIDs:ロキソニン・ナイキサン(R)・モービック(R)
  C.非経口NSAIDs:ボルタレン坐薬,ロピオン(R)
§4 呼吸困難の治療薬
   Overview
  A.モルヒネ
  B.コデイン
  C.抗コリン薬
§5 嘔気嘔吐の治療薬
   Overview
  A.プリンペラン
  B.ノバミン
  C.抗ヒスタミン剤(クロール・トリメトン(R)・トラベルミン)
  D.多次元受容体拮抗薬(MARTA)・ノルアドレナリン・
    セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
§6 食欲不振の治療薬
   Overview
  A.ナウゼリンと六君子湯
  B.ステロイド製剤: リンデロン(R),ヒスロンH
  C.いろいろな組み合わせとEPA製剤
§7 消化管閉塞の治療薬
   Overview
  A.サンドスタチン
  B.ブスコパン
§8 便秘の治療薬
   Overview
  A.カマグ(マグミット)
  B.プルゼニド
  C.ラキソベロン
  D.モニラック,ラクツロース
  E.オピオイド開始時
  F.便秘に有効な漢方薬
  G.ちょっとかわった方法
  H.新しい下剤:アミティーザ
§9 倦怠感・眠気の治療薬
   Overview
  A.精神賦活薬:リタリン・モダフィニル・ベタナミン
  B.眠気に対するその他の薬
  C.リンデロン(R)
§10 不安・抑うつの治療薬
   Overview
  A.ベンゾジアゼピン系抗不安薬: ソラナックス,ワイパックス(R),リボトール
  B.SSRIとSNRI
  C.鎮静系抗うつ薬:トリプタノール・テトラミド・リフレックス
§11 不眠の治療薬
   Overview
  A.超短時間作用型睡眠薬:マイスリー,アモバン
  B.短時間作用型睡眠薬:レンドルミン(R)
  C.中時間作用型睡眠薬:ロヒプノール
  D.デジレル
§12 せん妄の治療薬
   Overview
  A.セレネース
  B.セロクエル
  C.リスパダール
  D.コントミン?
  E.ジプレキサ,ルーラン(R),エビリファイ
  F.テトラミド
§13 鎮静の治療薬
   Overview
  A.ドルミカム
  B.フェノバール(R)
  C.坐薬で使用する鎮静薬:セニラン(R),ダイアップ,ワコビタール

資料
 A.聖隷三方原病院麻薬フォルダオーダーセット
 B.緩和ケア病棟入院時指示の一覧
 C.院内製剤と個人輸入薬

column
 NNTとNNH
 緩和ケアにおける有効率の定義
 テトラミド坐薬の調剤方法

索引

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執筆者一覧

森田達也 聖隷三方原病院緩和指示治療科部長・副院長 著
白土明美 聖隷三方原病院臨床検査科医長 編集協力

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