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書籍詳細

わかりやすい水・電解質と輸液

わかりやすい水・電解質と輸液

奥田俊洋 著

B5判 144頁

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-02392-5

2001年06月発行

在庫なし

この本は生体の水・電解質に関する内部環境を一定に保とうとする生理的なメカニズムとその異常や病態はどのようなものであるかを分かり易く理解させ,そしてその知識が実地に応用できて初めて有用なものになるという考えから,それに立脚した輸液についてを総論・各論にわたり具体的に示したものである.
 本書の特徴は,水・電解質の調節機構を平易に解説しながら,その該当の個所に「プラクティカルノート」として臨床的事項を織り込んで「なぜ」と「実際」を結びつけて興味深く生きた知識が身につくよう解説したことである.随所に分かり易い図を示して簡明に述べた必要にして十分な知識が習得できる入門書である.

「わかりやすい水・電解質と輸液」出版に際して

 私が,主に腎臓を学び始めた人を念頭において,「わかりやすい腎臓の構造と機能」と題する入門書を中外医学社より出版したのは,2000年5月のことでした.その同じ中外医学社より,「わかりやすい腎臓の構造と機能」の続編をと依頼され,腎の生体内における大きな役割である水・電解質の調節ということをテーマにして書き始めたのがこの小著です.
 私としても,腎臓や水・電解質がわかりにくいという声は往々にして臨床や教育の現場で耳にする言葉であり,そのような声にむけて本を書いてみたいという気持ちは充分にありました.ですから,中外医学社からのお誘いは私にとって望むところでもあったのです.
 そこで早速に昨年の7月,「わかりやすい腎臓の構造と機能」の出版後直ちに筆を起こし,最初は勢いにのってすぐに書き上げられるつもりでいました.それが執筆にとりかかってから,もう1年近い時間が経過しました.本来ならすでに書き上げて,とっくにこの書が書店の店頭に並んでいるはずの時期です.
 言い訳をするのではありませんが,これだけこの書の上梓に手間取ったのには実は理由があるのです.
 昨年夏,この書の最初の数章を書き上げたとき,私は急激な視力の低下に見舞われました.最初は新聞の字が見えにくい程度でしたが,すぐに症状は進み,ワープロの字を画面上でかなり拡大しても読むのが困難なほどになりました.自分自身の不摂生が招いたことですが,糖尿病性網膜症が急速に悪化した結果でした.
 この書を書き上げることはもとより,私の職業的生命も危ぶまれる中,私は2000年の9月から10月にかけて駿河台日本大学病院,佐藤幸裕先生の執刀の下,左右併せて計三回の眼の手術を受け,そしてその後合併した眼圧の上昇に対しては,東京逓信病院眼科部長の松元俊先生にお世話になりました.その結果,私の視力は予想以上の回復をみせ,こうしてこの書を書き上げることが叶ったのです.私が,このお二人のドクター達と縁を結ぶことがなければ,あるいはこの書は完成することはなかったかもしれない,そういっても恐らく過言ではないでしょう.
 本来これらは私的なことではあるとは思いますが,この書を出版し,世に送りだすに当たって,このお二人のドクター達に心からなる謝辞を申し上げたく,ここに記した次第です.そしてもし,読者がこの書を読んで水・電解質や輸液に関する理解を深めていただけたとしたら,読者もまた,このお二人のドクター達と決して無縁なものではない,そんなこともまたいえるのではないかとも思われます.
 この小著の成り立ちにはそのような経緯があります.それだけに私としても,このような紆余曲折を経て完成したこの書物が,「わかりにくい」とされる水・電解質や輸液の理解に臨床の現場でいくらかでもお役に立つことがあればと,願わずにはいられません.
 この書の題名に恥じぬよう「わかりやすく」との意図から,本文は水・電解質に関する大きな流れを中心にダイナミックな記述を心掛けました.そしてテクニカルなことや細かい議論は,プラクティカルノートと題した囲み記事の中で独立して扱う体裁としたのは,前著「わかりやすい腎臓の構造と機能」の場合と同様の構成です.
 できるだけ現場で働く人々に「わかりやすく」と知恵を絞ったこの書物を,どうぞ心行くまで味わっていただければと思う次第です.

2001年6月
著 者

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目 次

はじめに

第1章 水・電解質に関する生体の内部環境

第2章 内部環境の恒常性を維持する器官としての腎

第3章 Na濃度の調節機構
 A.生体は何を調節しているのか?
 B.水代謝の調節
 C.Na代謝の調節

第4章 低Na血症
 A.それが真の意味での低Na血症か?
 B.次に体液量の状態を把握する
 C.体液量が減少している場合
 D.体液量がほぼ正常の場合
 E.体液量が増加している場合
 F.低Na血症治療の原則

第5章 高Na血症
 A.高Na血症・高浸透圧血症が存在したら
 B.高Na血症の治療

第6章 体内の水・Naの量の異常: 浮腫と脱水
(付)無尿・乏尿・多尿
 A.浮腫性疾患
  1.浮腫とは?
  2.体液量を調節する2つの機構
  3.浮腫が生じるとき
 B.脱 水
 (付)無尿・乏尿・多尿

第7章 K代謝
 A.細胞内外のKの分布の調節
 B.腎におけるK排泄の調節

第8章 K濃度の異常
 A.高K血症
 B.低K血症
 C.低K血症の鑑別診断
 D.低K血症の治療

第9章 酸塩基平衡の生理的調節
 A.体のpHの生理的な制御機構
  1.CO2・HCO3-系の重要性
  2.CO2・HCO3-系を用いた生体のpH調節機構
 B.腎の酸塩基平衡に関する調節能
 C.腎での酸の排泄を刺激する機構

第10章 酸塩基平衡の異常をきたす病態
 A.アシドーシス・アルカローシスとアシデミア・アルカレミアおよび代償機構
  1.呼吸性の異常
 B.代謝性の異常,代謝性アシドーシス
  1.腎による酸排泄の異常に基づく代謝性アシドーシス
 C.アニオンギャップ
 D.代謝性アルカローシス
 E.アシドーシス・アルカローシスの治療

第11章 カルシウム,リン,マグネシウム
 A.Ca代謝
 B.リン代謝
 C.Ca・リン濃度の異常
 D.Ca・リン濃度の異常に対する治療
 E.Mg代謝とその異常

第12章 輸液の組み立て方(総論)
 A.輸液は難しいか?
 B.輸液の安全域という考え方
 C.輸液の目的と方法

第13章 輸液の各論
 A.脱 水
 B.心疾患
 C.肝疾患
 D.糖尿病
 E.消化器疾患
 F.脳血管疾患
 G.救急疾患
 H.腎疾患

索 引

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奥田俊洋  著

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